マイクロノベル集 269「誰が作ったの?」
No.1493
屋根からトンテンと雨音がするのに、空から雨が落ちてこない。「昔、屋根が壊れてますよ、って修理してくれた男がいたんだよ。お金も取らなくてね」それ以来、夜になると不思議な雨音がするようになったそうだ。まだ冷蔵庫が電気仕掛けじゃなかった頃の話。
No.1494
大きな樽を引っ張りながら蛙が川を遡る。なにを入れてるの? 「坊やたちさ」オタマジャクシかあ。「すぐ蛙になるよ。蛙の子だからね」蛙の子たちが舌を伸ばしてカカカと笑う。その年は嵐が多くて豊作になった。滝を登って龍になったものがたくさん出たのだ。
No.1495
ちょっとだけゲームをしようとしたら、お母さんが登場した。「私は異世界の女神。勇者よ、ゲーム世界で宿題をするのです」なにぃ!? そんな残酷な運命、ぼくが断ち切る! 「勇者よ、剣をよく見なさい」ああっ、なぜお母さんの名前が! 「著作権表記です」
No.1496
お兄ちゃんはとても綺麗な機械を作って、学校で賞をもらったんだ。ぼくが作った君は賞ももらえなかった。ごめんね。「私はまだ咲かない蕾なのです」そうかな。「綺麗ではなくても、言葉数の多さには自信があります」確かに、君はうるさい。「お互い様」