オクトーバーフェストにまつわる覚書
両足を交互にあげて道化のように跳ね回る、白髭の、黒縁眼鏡をかけたドイツ人の男性と、ぺらぺらした民族衣装を着て、銀に髪を染めた女性、そうして恰幅のいい、腹の突き出たもうひとりのドイツ人が、一リットルジョッキを掲げて、なにやらドイツ語で叫ぶ。ステージの周辺に集まった常連客はすっかりそれを覚え込んでいて、そっくりそのまま復唱する。底抜けに明るい音楽が始まると、酔いも回った客たちはテーブルの間をぬって踊り出す。ひとつむこうのテーブルにはドイツの民族衣装を着た四、五十代の集団があって、