消費者行動におけるコルクとスクリューキャップの価値|US市場での調査事例から
ワインボトルを何で密閉するべきか。
この問題は長らく造り手の頭を悩ませ続けていますし、おそらくこれからも悩ませ続けることと思います。ボトル用クロージャーの選択はそれくらい、今でも古くて新しい問題であり続けています。
私個人的の意見でいえば、答えは現時点ではほぼ決まっています。ワインの種類、グレードに関係なく全量をスクリューキャップで閉じてしまうのがベストではないもののベターであろうと考えています。
一方でスクリューキャップを採用することでワインの熟成が阻害されるといった意見は今でもそれなりに高い信憑性をもって言われています。また環境面からはボトルの首の部分に一部の金属部品が残るタイプのスクリューキャップを使用するとボトルのリサイクル時に問題があるとの指摘もなされています。さらには近年はクロージャー自体のもつ環境への影響なども言われるようになってきており、クロージャーの選択は必ずしもワインの品質のことだけを考えていればいいものではなくなってきています。
そうした品質とは少し違う面からみたクロージャー選びの視点の1つに購入者心理への影響があります。
以前から天然コルクとスクリューキャップの比較の中で、高価格帯のボトルに対しては天然コルクを使用することが重要との指摘がなされてきていました。1本のボトルにより多くのお金を支払う消費者はそのボトルが天然コルクで閉められていることを期待し、消費のシーンでソムリエールの方が自分たちのためにコルクを抜く姿、さらには抜いた瞬間の音にも価値を見出していると言われています。そして実際にそうした期待を感じさせる要望がワイナリーに寄せられたりもしています。
こうした心理はさらに発展しています。天然コルクで密閉されていることがそのボトルの中のワインの品質の高さを証明するものであるという暗黙の了解が形成されるところまできている、そう報告しているレポートを見つけることもそう難しいことではありません。
この記事では消費者心理におけるクロージャーの意味を踏まえつつ、そこからさらに少し先に踏み込んで思考を広げていってみたいと思います。
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