少し前のことですが、ワイン醸造時におけるSO₂の添加と醸造後のワインに含まれる生体アミンの含有量に関する話題がSNSのTLを賑わせました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この時の話題を簡単にまとめると、いわゆるワイン不耐症といわれる症状の原因が長らくワインに添加される二酸化硫黄 (SO₂) とされていたのに対して、実際には二酸化硫黄ではなくワインに含まれる生体アミンが原因であり、その生体アミンの生成はワイン醸造段階における適切な時点で適量の二酸化硫黄を添加することで極めて低く抑えることができる。翻って、二酸化硫黄の添加を否定する (一部の) 自然派ワインやナチュラルワインこそこうしたワイン不耐症に対しては有害となりかねない、というものでした。
話題の発端はニュージーランド在住のマスター・オブ・ワイン (以下、MW) 候補生 (当時)、Sophie Parker Thomson女史が提出した、MW試験向けペーパーです。
遅ればせながらこのレポートを読みましたので、ここではその内容にも簡単に触れつつ、ワイン醸造現場からの視点を書いていきたいと思います。
なお私自身はあくまでも原本のレポートを読んだだけで、別の方が行われているウェビナーには参加していません。このためウェビナーでフォローアップされた内容に関しては把握しておりませんのでご注意ください。
話を進める前に1つだけ注意事項です。
この話題をTLで見かけるようになってから私自身が気になっていたのですが、このレポートが扱っているのは「ワイン不耐症」であってアレルギー症状や飲みすぎなどからくる頭痛ではありません。「ワイン不耐症」というものを私自身が詳しく理解しているわけではありませんが、レポートには次のように書かれています。
「ワイン不耐症」がアレルギー様の症状を見せること、「ワイン不耐症」にも頭痛や嘔吐感といった馴染みがある症状が含まれることなどからついやってしまいがちですが、このレポートの内容を「ワイン不耐症」以外の事例としての頭痛などにも汎用的に適用することは誤った拡大解釈となります。
この点においてワインを飲んで感じる頭痛の原因は生体アミンであって亜硫酸ではない、とこのレポートの内容だけで完全に断じてしまうことはできません。
では本題に入りましょう。
ワインの醸造過程における生体アミンの生成およびその抑制を考えるうえで意識すべきポイントは次の2点です。これはこのレポートを理解していくうえでも重要です。