高温環境下におけるブドウの挙動を知る
近年の気候変動に関連してよく言われているのが気温の上昇とそれに伴うブドウの熟成の促進です。この視点からはブドウ果汁中における糖の蓄積量の増加および早期化とあわせて酸量の減少が主な課題と捉えられています。
一方で1日の最高気温が40℃に迫るような極端な高温環境下においてはブドウの光合成は抑制されます。その結果、これまでよく言われてきたこととは反対にブドウの熟成が遅れる可能性が現実味を帯びつつあります。そのような環境下においても酸の分解は止まらず、むしろ加速するため果汁における糖と酸の構成バランスは今以上に悪くなることが考えられます。
極端なケースでは糖も酸も不足したブドウを収穫する未来さえ想定されます。そうした状況が状態化してしまえばワイン造りの現場は大きな混乱の渦中に投げ込まれます。そうした可能性を前に、造り手は何らかの対策をとる必要があります。
この記事ではそうした対策を考えるための出発点として、高温環境下におけるブドウの挙動をみていきます。
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