避難するかどうかで迷った土曜日。
大雨が降り続く。風も吹き荒れる。川が氾濫し、避難警報が発令される。
【避難準備】⇒【避難勧告】⇒【避難命令】と、携帯に届く緊急速報メールの緊迫度は増す。
正直、そこまで危険だという実感がない。足元まで水が迫っているわけじゃないし、近くの川の水位が何メートルを超えたと言われても、それがどれだけ危険なのか、素人には分からない。
避難場所に指定されている近くの学校の場所だけは確認した。だけど、本当にそこは浸水を防げるのだろうか。うちより、高いところにあるか?(学校の二階などを開放しているらしかったけど)
避難した方がいいのだろうか。でも、時刻は深夜。しかも雨。母には障害があって、早くは歩けない。頻繁にトイレにも行きたがるし、食事も要求する。避難所でも、きっと空気は読めない。迷惑もかける。そんな家族を連れて、今、家を出るべきなんだろうか。
幸い、彼氏が家にいてくれたので、車はある。一番安全な避難方法としては、水が来る前に、車に乗って、出来るだけ川から離れた、高い場所にある避難場所に一時身を寄せることなんだろう。
分かっている。本当に怖い災害は、警報を知っていながら、「そんな大げさな。まぁ、うちは大丈夫だろう」と思っている人のところへ、瞬時にやってくるものなんだろう、と。ちょうど、今の私のように。警報を受け取っていたにも関わらず、動かなかったんだから、自己責任だと言われるのだろう、と。
不安を抱えながら、その日は眠りに就いた。
結果的には、うちは大丈夫だった。ただ、決壊した川は、家の200メートル先を流れていたし、1㎞ほど先には水が迫っていた。今回の豪雨での死者や行方不明者は、それぞれ100人近いという。いつ家が浸水してもおかしくなかった。
よく通る見慣れた場所では、お店も家も浸水し、2日間道路は通行止め。バスも運行停止。電車も大幅に遅延。毎日、家具をすべて外に出し、掃除に明け暮れる様子が見て取れた。
母が寝ているのは1階。うちも、そんなに高所にあるわけではない。もし水が来ていたら…と考えると、恐ろしかった。とはいえ、足も悪い母を毎日トイレのない2階で眠らせるわけにもいかない。
また同じことが起きたら?予防のためにできることは何?
そう自問しても、大事なものをすぐ持ち出せるように小さなカバンに詰めたり、避難場所を確認したり、それくらいしか思いつかないのが実態。
バイト先の飲食店は、浸水を免れたため、お客さんは倍増。他の24時間営業の飲食店が浸水して異例の閉店中だったり、スーパーにも食材が届いていなかったりで、行く場所のない人も多かったのか、予想以上の来客数だった。
ありがたいとは言え、うちも人手が足りない。いつも以上に多いお昼のピークのお客さんの対応をスタッフ3人で何とか回した日もあった。(スタッフの家も浸水したり、道路状況のため来れなかったり)
そのうち、うちの店も食材が尽き、配送は来ず、出せるメニューがどんどん減っていき…。ひたすら説明に追われる。「申し訳ありません。大雨のため、食材が届いておりません。これとこれは出せません。今お出しいできるのは、これらのメニューだけです」そのうち、朝食メニューくらいしか出せなくなる。
さすがに、怒鳴られたりはしなかったが、ドライブスルーのお客さんを長く待たせてイライラされたり、優先すべき順番が分からなくなったり、スタッフの体調も悪かったりで、なかなか、笑顔も消えがちだった。
・お客さんからの呼び出しボタンが鳴り響く。
・ドライブスルー待ちの車が長蛇の列を作る。
・会計待ちの人と、店内に座れずに待っているお客さんが混ざる。
・厨房で料理を作ってどんどん出してくれても、どのお客さんが先か、瞬時には分からない。
・来店したお客さんの注文をどこまで取っていて、どのお客さんにはお水を出して、誰に出してないのか、どこの席の人は帰っていて空いていて、片付けに行かなきゃいけないのか、ゴチャゴチャ
・洗い物を置くスペースも、洗ってあるコップもない。足りない。
そんな中で、注文を取るハンディの調子が悪かったり、注文を間違えたり、レジでミスをしたり、洗い物が間に合わなかったり…
この数を、3人や4人でこなすのは、無茶だわ…
とは言え、狭い店内。スタッフがいればいるだけ効率よく回るかというと、そうでもない。
余裕なく、ただ動き回るしかない週末だった。いい経験にはなったし、お店の売り上げは、そりゃあいつもより良かったけど。^^;
私も風邪気味なんだよー。家の洗濯物は乾かないし。。