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ぼく、保育園行かないからね。─午前10時のチャーハン

今日も、昨日と同じ朝だった。

登園しぶりがひどい3歳の次男を
9:00まで頑張って説得してみたけれど
「ぼく、保育園行かないからね」と言いながら
ベッドルームに隠れてしまった。

9:00になり、
私はパソコンを開いて仕事を始める。
今日も大好きなレゴで乗り物を作り
「ママ、見て!これは、水族館の車だよ」と
楽しそうに遊んでいる。

でも、だんだん口数が少なくなり
遊んでいる手が止まった。

そおっと私の側に近づいてきたり、
背中に乗ってみたり。

何か言いたい事があるんだろうな、
と、感じた。

公園に行こう、かな。
一緒に遊ぼう、かな。
様子をうかがっていると
やっと次男が口を開いた。

ママ、お腹空いた。

時計を見ると、まだ10時。
昼ごはんには、まだ早い。

今朝は、
拳くらいあるおにぎりを
ぜんぶ食べたんじゃなかったっけ?

まだ早いからなぁ、と渋っていると
ママお腹すいたの!
何か食べさせてよ!と
だんだん機嫌が悪くなってきた。

このままにすると
私の仕事にも支障がでそうなので
「一緒にチャーハン作る?」と聞いてみた。

うーん、チャーハンでもいいよ。
ぼくも作ってあげるよ。

あれ?想像と違う反応。
あまり気分じゃなかったのかな?

上から目線な態度が気になるけれど
手を繋いで一緒にキッチンへ向かう。

踏み台!踏み台!といいながら
嬉しそうに重たい踏み台を抱える。
今日は力が出ないのか
なかなか進まないので一緒に運ぶと
少し嬉しそうな顔でこちらを見た。

さあ、チャーハンを作ろうか。

冷凍ごはんを温めて、
卵を割って、

野菜室にネギとキノコがあったので
ささやかな抵抗。
小さく小さく刻んでいく。

ネギの緑色を見た途端、
「ぼくは、これ、いらないよ」と言われたけれど
フライパンへ滑らせる。

コンロの火をつけると
踏み台をずるずる引きずりながら
「ぼくがジュージューやりたい!」と
コンロの側にやってきた。

この黒いところを持ってね。
こっちは熱いからね。

フライパンの持ち方を教えて
右手に耐熱のゴムベラを渡すと
食べたくないと言っていたネギやキノコを
コロコロ転がしながら炒めてくれた。

ごはんと卵も入れて、
優しく優しく混ぜるんだよ。

フライパンから飛び出さないように。
ごはんさんをパラパラにしようね。

そういえば、
パパが作ってくれたチャーシューがあるね!
これも入れちゃおうか。

白いごはんが茶色く色づき
少し香ばしい香りが漂ってくる。

炒めることが楽しくて
手が止まらないので
気づかれないようにそっとコンロの火を消した。

それから数分経ってやっと
「ママ!できたよ!」の声が聞こえたので
2つのお皿に分けていく。

「ぼく、大盛りのほう、たべるからね!」
と言いながら
両手でそっとお皿を持ち
ダイニングテーブルまで運んでいく。

お皿が傾くとチャーハンがこぼれるから
手がまっすぐになるように
そうっと、そうっと歩いているのが
後ろ姿からもわかる。

きっと今、唇はすこしとんがって
集中しているときの顔に
なっているんだろうな。

「ママ!おてふきもいるよ!」
「ママのスプーンも、こっちにあるからね!」

腹ペコのシェフは
率先して準備をしてくれる。

保育園に行けなくたって
自分の食事の準備ができるようになれば
ちゃんと生きていける。

チャーハンを炒めることができたんだから
だいじょうぶ、だいじょうぶ。

ぼくは食べない!と言っていた緑色のネギも
自分で炒めたら美味しく変わる。
残すことなく、ごちそうさまができた。

保育園に行きたくない、と思った時も
お腹いっぱい食べられたら
だいじょうぶ、だいじょうぶ。

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