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朝のしあわせ

我が家の男性陣は、朝に弱い。

朝型の私は
5時半くらいに鳴るアラームで起きて
身支度と朝ごはんの準備をする。

季節ごとに
朝の色が変わるのが好き。

寒くなってきた今の時期は
朝のリビングは暗い。
でも、支度をしている途中に
差し込む朝日を見れたときは
ちょっと幸せな気分になる。

私が起きてから1時間ほど経つと
夫のアラームが大きな音を鳴らす。

1回止まって、
5分経ってもう1回鳴る。
ぱしっ、っと
素早くアラームを止める音も聞こえるけれど
起き上がってくる気配はない。

それを5回くらい繰り返したあと
やっと寝室のドアが開く音がする。

寝ぼけた夫は
7歳の長男を担いで起きてくる。

長男は半分眠っていて、
リビングのソファーに置かれると
また眠ってしまうことがほとんど。

そして、そのあと
寝室から「うーーん」と
動物の赤ちゃんの泣き声のような
小さな声が聞こえてくる。

3歳の次男の
“ぼくも起きているんですけど”
の合図。

小さな「うーーーん」の声を
聞こえないフリをしていると
「ママ、ママ、ママ!!!」
とお呼びがかかる。

おはよう。
と声をかけると
小さな「うーーん」の鳴き声と
小さな塊が太ももにしがみついてくる。

“ぼくおきているけど、まだねむいんです”
の合図。

おはよう。今日は君の好きなパンケーキだよ。
にーにが焼いてくれた、
大好きなレーズンの入ったパンケーキだよ。

「うーーーん」の鳴きながら起き上がって、
抱っこの合図。

最近は首に手を回すよりも
お腹に手を回して抱っこするほうが好きみたいで
短い腕を最大限伸ばして
ぎゅーっとしがみついてくる。

薄い髪の毛の間から、つむじがよく見える。
外側にはねた髪がよく見える。
寝起きでいつもよりもあったかい塊が心地いい。

あぁ、今日も会えたね。
と思った。

私は今日も生きているから
この小さな愛おしいからだを
ぎゅっと抱きしめることができたんだな、
と思った。

別に何かあったわけじゃないけれど
ふと、この目の前にある
あったかい空間に
「しあわせ」を感じた。

そんなことを思った自分に
ちょっと驚いた。

いつも、効率やルールを考えてしまい
子育ても“ノルマ”のように思っていた。

遅刻しないように7時には起きないといけない。
起きたらごはんを食べないといけない。
食べ終わったら、着替えて準備しないといけない。
食器はさっと洗っておかないといけない。
8時には家をでないといけない。
傘がいるか、天気を確認してから送り出さないといけない。

子育てをしていると
やらないといけないことが多いから

次々と「やるべきこと」が
ベルトコンベヤーに乗せられたように
順番に流れてくる。

遅れると、後ろに影響がある。
止めてしまうと、
ベルトコンベヤーの運転に支障がでる。

流れ作業をこなしているうちに
“現場監督”みたいになっていた私は

こんなあったかい「しあわせ」があることを
すっかり忘れていたんだと気づいた。

さぁ、起きる時間だよ。
早くごはん食べないと遅れちゃうよ。

出かけた言葉を飲み込んだ。

もう少しだけ、
あったかい小さな身体を
抱っこしていようかな。

今日も命があって、しあわせだなぁ。
目が覚めて、生きていて、
この子たちを抱きしめられて嬉しい。

外側にはねた髪の毛も、
うーんとうなる小動物のような鳴き声も
見て、聞いて、抱きしめられることすら
しあわせなんだなぁ。

しあわせに浸っていたら
お腹にしがみついていた次男が
顔を上げて「うん!!」と、言った。

右手をぴっと伸ばし
リビングを指さしている。

「もう行く」
「おなかすいた」

そうだね、朝ごはん食べようね。

ちょっとだけストップさせていた
ベルトコンベヤーが動き出した。

間に合うように
ごはんを食べて家をでようね。

リビングには
おひさまの光が線になって入っている。

今日はいい天気。
今日も1日をくれた神様に
ありがとう、と心で呟いてから
いただきます、と手を合わせた。



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