読書感想文~今村夏子「白いセーター」~
開いてくださってありがとうございます。初めまして、かしやぐらうゆみです。
めちゃくちゃ久しぶりの投稿になってしまった。本当は書きたいことがたくさんあるし、下書きもめちゃくちゃ溜まっているのだけど、なかなか進まない。
これ以上文章を書くことのハードルが上がってしまうと、二度と書けなくなってしまうと思ったので、溜まった下書きをすべて無視して、今さっき読んだ本の感想を書いてみることにしました。
今村夏子 「白いセーター」(父と私の桜尾通り商店街 より)感想 ※内容のネタバレを含んでいます。
※このお話を最後まで読んだ方が読む前提で書いています。
何度読んでも傑作。本当に大好きなお話です。
今村夏子さん特有の、完全なる主人公目線のみで構成。それ故に主人公がであるゆみ子が知らない情報は我々も知ることができないし、他の登場人物がどんな人間なのかは、ゆみ子の見えているようにしか見えない。そんなところが、主人公の回想を覗き見しているような体験が出来ていいなと思っています。
物語の冒頭の白いセーターをお好み焼き屋に着ていこうとするゆみ子を、少ない言葉で色んな理由をつけて阻止しようとする伸樹とのやりとり、その後の、大好きな伸樹さんと、「大好きなお好み焼きを食べに行く。」という文章がとても好きです。ほかの人からみたら冷たいような、ゆみ子と伸樹とのやりとりが、ゆみ子にとってはいつも通りのもので、由美子がこの生活や伸樹のことをいかに愛おしいものだと思っているかということがこの文章から感じられる気がします。
私は小説や物語を読んでいて、登場人物たちの世界の常識が感じられる場面が好きです。今村夏子さんは、そういう他の人から見ると引っかかるけれど、この話の中では日常で、スルーされているものというのをよく作品の中に取り入れていると思います。
お好み焼き屋からの帰り道に、ホームレスの男性について噓をつくゆみ子、それを噓とわかっているのかいないのか、噓で返してくる伸樹(もしかしたらゆみ子が言っていたようなホームレスが本当にいたのかもしれないけど)。私は、伸樹はゆみ子が普段からよく噓をつく人だと思っていて、実家からもそのことを度々咎められていて、ホームレスのことも噓を付いているとわかっていると思っています。でもそんなゆみ子をとても大切に思っていて、そこもひっくるめて、伸樹もゆみ子やゆみ子との生活を愛おしいと思っているのではないかと思っています。
自分のコートでゆみ子のセーターを包んであげる描写が二人の関係性をよく表していると思っています。
ゆみ子のセーター→ゆみ子をよく見せるためのもの≒ゆみ子のつく噓を、伸樹のコートで覆う→伸樹のコートが汚れることで守る≒ゆみ子の噓を分かっていながら庇う。という関係性に読み取れて、二人はこれまでもずっとこんな感じでやってきたのかなと思いました。
そして最後までに読んだ後に冒頭に戻ると、もう何年も前の十二月のこと。と始まるところから、ゆみ子がセーターが入っている袋を開けてこの日のことを思い出しているんだな、と思い何だか切ない気持ちで読み返すことが出来て、何度も読みたくなるお話だと思います。
ここまで読んでくださってありがとうございます。久々にぶっ通しで文章を書けて良かった。お話を読むのも文章を書くのもやっぱり楽しいですね。今村夏子さんの作品は大好きでたくさん手元にあるので、また感想を書こうかなと思いました。
これからもマイペースに頑張るので、もしよかったらフォローお願いします!