新聞屋さんと文通はじめてみました
毎朝4時半に来ていた新聞配達の人。
ある日、文通をはじめてみた。
文通と言っても手紙ではなく
メモ用紙に一言二言書いて郵便受けに貼り付けておくだけのもの。
きっかけは単純。
新聞配達の人は毎朝新聞を届けてくれるけれど、その人の毎朝には一体なにが届くのだろう?
何か届けばいつもより少し楽しい朝になるかもしれないと思ったし、その頃私は普通に寂しかったのと、夏休みの自由研究に最適だと踏んだのと、、、
まぁ諸々が重なって、私は文通を始めることにした。
さすがに驚かれるだろうかと迷いはしたけれど、気づかれなかったり、返信が来なければ止めれば良いだけだと思い、さっそく1枚貼り付けた。
「毎朝、ありがとうございます。
いつも何時に起きるのですか?」
これが最初だった。
翌朝。
郵便受けを見ると新聞しかない。
あ、驚かれたんだ、やめとこう。
けれども次の日の朝、新聞とメモ。
「朝は、1時に起きてますよ」
と一言。
すごく普通。普通の返事。
もっと驚いてくれるのかと思ったのに。
一先ず、返事がきたのでしめしめ、継続。
2日目。
「いつから家に配達に来てくれてるんですか?」
「もうすぐ1年になります」
1行。
3日目。
「配達って、郵便とか牛乳とか種類あると思うんですけど、どうして新聞配達しようと思ったんですか?」
長めに。
「牛乳飲めないのと、後は時間帯で新聞にしました」
少し会話が増えた。
4日目。
「配達中、日の出を見てぼーっとすることありますか?」
「ありますよ。夏場は配達終わる頃には太陽も出ててゆっくり見てます」
よし2行!
5日目。
「家の郵便受けって新聞入れやすいですか?」
「引っかからないので入れやすいですよ」
真面目。
6日目。
「雨の日は嫌になりませんか?」
「慣れるまでは嫌だったけど、慣れると大丈夫です」
7日目。
「朝ご飯はいつ食べてるんですか?」
「帰って寝てそれから食べますね」
・・・
それから暫く、文通の日々は続いた。
おかげで夏休みの自由研究も捗った。
「ある日、新聞配達人と文通したら」と題したドキュメンタリー風の小説に、金賞ハナマルをもらった。大満足。
結果的に、文通は4ヶ月続いた。
文通などせずに、話せば早いのだけど、私はどこかサンタ感覚だった。
正体不明がルールみたいな。
プレゼントを届ける様な。
そんな夢の様な現実の終わりは突然やってきた。
私の引っ越し。
私たちの関係も自然消滅。
けれどもこの文通のおかげで、私は毎朝早起きになった。
私は毎朝がとても楽しみになった。
返事がない時もあったし、私も書かない日があったから毎日言葉を交わした訳じゃない。
それでも、小学生の些細ないたずらに、4ヶ月も付き合ってくれたあの人は、
どんな人かなー?
もちろん顔も知らない。
名前も歳すらも聞いてない。
文字が丸いから柔らかい人なんだろう。
「よ」と「4」に癖があるなぁ。笑
それ以来、私は人の字すごく見るようになった。
もしまたどこかで出会ったら(確率うっすいうっすい)ありがとうございました。と伝えたい。
それともう一つ。
密かに牛乳渡そうと目論んでいます。笑
これが、私と新聞配達人のちいさなお話。