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yasuyasue
憧れ
学生時代、私は土手に憧れていた。それも、物凄く。
私の生まれ育った場所には土手というものが存在しなかった。幼少期からドラマやアニメ・映画・漫画・小説…いろんなお話の中に登場する土手というものにとても興味があった。
いつか行ってみたい。そこで本を読みたい。ランニングなんかしちゃったりして。おにぎり食べるのもいいかも…なんて恋焦がれていた。土手に。
上京し、2回ほどの引っ越しを経てようやく東京に慣れてきたころ、なんとなく携帯でマップを見ていると家から徒歩20分ほどで土手に行けることが判明した。途端に、かつての土手への憧れを鮮明に思い出し居ても立ってもいられなくなった。今すぐ行くしかない!!!
その日は神様が味方をしてくれたのか、とてもランニング日和だった。爽やかな風が心地いい。軽く走るのには絶好の夕暮れ時である。
ジムウェアに着替えて1Lの水筒に水を入れいざ出発。こんなワクワクはいつ以来だろうか。
土手までは準備運動がてら、街の景色を見ながら歩いていくことにした。時々携帯アプリのマップを見ながら土手を目指して歩いた。
こんなところにお好み焼き屋が!たい焼き屋もあるではないか!なんてルンルンで歩いていた。30分ほど歩き、なんとなく次の角を曲がれば土手だ!!と思った。少し緊張しながら曲がった。
目の前に現れたのは夢にまで見た土手…ではなく、いつも買い物に行く家から徒歩3分の大型スーパーだった。なぜ?
マップで正確な案内をせずに勘で歩こうとしたのが仇となった。私は地図が読めないのだ。
結局、スーパーでお茶だけ買って家に戻った。やっぱり3分で家に着いた。
なんだか気が抜けた。私の土手デビューはまだまだ先のようだ。