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それが私の処世術

会社のホワイトボードに貼ってあった社員の携帯番号一覧から
社長の番号を見つけて自分の携帯に登録した。
そして会議室に誰もいないことを確認して社長に電話をかけた。

「もしもし?」

社長は知らない番号でも出てくれた。

「お疲れ様です、酒井です。あの、突然電話してすみません」

「おう、お疲れ、どうした?急に」

「お願いがあるんです、私と会社の外で会ってくれませんか?」

一瞬変な間があった。

「…なんだ、会社辞めるのかと思った。いいよ」

そんな訳ないですよ、と笑った。
そして、社長は携帯のメールアドレスを教えてくれた。
そこで待ち合わせ場所を決めるやり取りをした。

翌日、会社から少し離れた市にある喫茶店で社長と会った。

付き合うかをまだ迷っている社長に奥さんと別れて欲しいとは言わない。
たまに会って抱いて欲しいと懇願した。

喫茶店を出た後、ホテルへ行き関係を持った。

年上の男性とのセックスは思い切り甘えられて
同年代には無い安心感がある。
社長の腕の中で男は単純だと思った。
最初は戸惑っていても、身体を匂わせれば簡単に堕ちる。

社長は誰の目から見ても判るくらいに、私を特別扱いするようになった。

仕事でミスをしても「まあまあ、誰にだってあるから」と庇ってくれる。

私が仕事で褒められていると、自分のことのように喜んでくれる。
周囲は私たちの関係に気づいているが相手が社長だけに誰も何も言えない。

みんなは私に気を使って優しく接してくれる。
社長と付き合うことは、まるで自分が会社というコミュニティの
一番上にいる様な気分にさせてくれる。

私が子どもだったときはお父さん、結婚してからは夫
会社では社長が、、というように私を守ってくれる存在が必要。

自分が居心地よく過ごすためには
属するコミュニティのトップを摑まえる。

それを私の処世術と言って何が悪いのだろう。


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