増える新卒の離職率。学校で「働く力」は養成できるのか
今日は気になる3つの数字をつなげて考えたいと思います。
1)大卒の就職
文部科学省の2021年度「学校基本調査」によると、大学卒業者のうち、就職した人は74.2%。また就職した人中で、非正規が4.8%なので、大卒のうち30%は正規雇用で働いていないということになります。
2)新卒の離職
リクルートワークス研究所が2020年に発表したデータによると、入社3ヶ月~6ヶ月未満の新卒の離職が10.8%もわかりました。
厚生労働省の「新規学卒就職者離職状況」調査(H29)でも、大学新卒の3年以内の離職率はが32.8%となっています。
3)メンタルヘルス
厚生労働省の2020年の労働安全衛生調査によると過去1年でメンタルヘルス不調を理由に連続1ヵ月以上休業または退職した人がいる会社は9.2%とのことです。リモートが増えた今年度はもっと厳しい数字になると思われます。
この3つのデータの相関関係は分かりせんし、1つ1つ別の社会現象と捉えられますが、非常に雑に俯瞰すると
・学校に行き大学に進学しても、安定していない人が相当いることと、就職活動がうまくいきやっと入社しても、すぐに参ってしまう人が相当数いる。
という事実が見えてきます。
ちなみに、私も30年前ですが、25歳で転職していますし、すべての第二新卒の再就職がすべてネガティブだとは思っていません。ただ昔に比べて社会に出て苦労している人が多いのは事実かと思います。
ただ、ここで考えたいのは、中・高校が「働くための準備の場」になっているだろうか、というテーマです。たとえ大学に進学するとしても、多感な中・高生のときに身につけた力は働く基礎になっているからです。
新渡戸稲造は随筆で「教育の目的」の第一は
「技能を身に付け、職業人として立っていくため」
と言っています。
ちなみに、
・第二の目的:趣味。芸術。教養
・第三の目的:装飾。人生を楽しく幅をもたせる
・第四の目的:真理の探究
・第五の目的:人格を高尚にする」
ですが、この順番が大事ですよね。第一の目的を抜きに、第四、第五はないですので。
私も学校に行く一番の目的は、
・近い将来イキイキと働くことができるようになるため
と思っています。
今、学校は大きく変わってきています。なにより、GIGAスクール構想で、この2021年度3月までに全国の小中学校の97%に1人1台の配備が完了する見通しとのことです。
先日もこのブログに書きましたが、先端の公立中学校では、パソコン、タブレットを普段使いをしていて、中学生はまるでビジネスパーソンのようでした。(引用:学年が「日本の教育制度の一番の問題」と思っていた私の考えが打ち砕かれた)
そして高校では「探究」の授業が始まっています。「正解のない問題」にどう取り組んでいくかということが問われています。まさに、先端校では、働くことに直結した学びの場に学校がなっていると言えます。
学校が
・正解主義、前例主義に陥っていないか
・一人一人の個性が生かされる場になっているか
・自分の意見と違う意見を「健全に」ぶつけ合って、新たな知恵を生む場になっているか
すなわち
「仕事で活躍できる力を養成する場に学校はなっているか」
という点で、校務のデザイン、授業のデザイン、また教職員の働き方のデザインなどを点検するときに来ているかと思います。
イキイキ働く人をどう育てるかという視点が、中学校、高校には必要ですし、今、実際それができる環境になっています。
私たちも微力ながらこの大きなパラダイム転換を支えられるように学校を支援できたらと思います。