キャリア・パスポートに感じる漠然とした不安
全国の小中高で始まった「キャリア・パスポート」という施策。
生きる力を育むために国をあげての施策となります。
目的を文部科学省の資料から引用します。
----(引用開始)-----
新学習指導要領の特別活動において「学校、家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て、学んだことを振り返りながら、新たな学習や生活への意欲につなげたり、将来の生き方を考えたりする活動を行う」際に、児童生徒が「活動を記録し蓄積する教材等を活用すること」
----(引用終了)----
文部科学省のこちらのホームページには「キャリア・パスポート」の例示資料が教員の指導用とともに上がっています。詳しくはこちらのURLをご覧ください。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1419917.htm
小学校からの中学校、高校までワークシート等に活動記録や自己評価を記述して蓄積していくというのです。
私はこの資料を見ていくつかの疑問や不安が湧きました。
・「がんばること」が多いな。優等生でない子はキツいだろう。
おうちでがんばったこと(おてつだい、ならいごと)とタイトルに書かれると、「2時間もゲームができた」とか「クリアするためyoutubeでゲーム実況みまくった」とは書けなそう。。。汗
・そもそも「よくきた、できた、 もう少し」というチェック表を書かせることに意味あるのだろうか。
・「③わからないことは、しつもん できましたか」って、わからないことがわからないから質問できないのに。。。汗。
・「しょうらいのゆめや目ひょうに向かってがんばったり、べんきょうのやり方をくふうしたりできましたか」
とあるが、小学生に「夢や目標」を書かせるのは実際は難しいだろうな。さらに、「できなかった」なんてチェック項目があると、「夢や目標がないことがマズいこと」と勘違いしてしまい、無理に(他人軸で)夢や目標を取り繕う癖がつくだろうな。(悪評高い「二分の一成人式」のように)
・「なりたい自分に近づけたか、ふりかえりましょう」の設問が、大人から見てなって欲しい「いい子とはこんな子」って説明になっている。
褒められるために一生懸命やる子と、自分の「ダメなところ」を見せつけられる子、双方とも自己肯定感は下がるだろう。相対比較して「あの子はいい子」「この子は悪い子」ってラベリングしてしまうリスクもある。そもそも、ここに「よくできた」ってチェックする子と「あまりできなかった」とチェックする子で、実際の行動は同じ可能性もあり(自分の価値観によってチェックする場所はブレるので)、基準値が定まる具体的な行動の事例を示していない限り、効果測定や自己成長のセルフチェック表としても適切ではない。
教育現場では、実際どのように実践されているのか不安になります。
以下のURLの文部科学省のホームページに先月2月にQ&Aの資料が追加されているのをみると、教育現場での運用が混乱しているのではと予想されます。
「キャリア・パスポート」に関するQ&Aについて(令和3年2月改訂) 令和3年2月初等中等教育局児童生徒課
この資料の中では「実施しない」という選択肢はなく、取り組まない場合は、教育委員会が指導するとなっています。また、すでに行われいる「振り返りなど」の取組があったらそれを活かしつつ、文部科学省から示された例示資料を参考にカスタマイズして活用するように指示されており、だいぶ強く浸透させようとする国の意思が伝わってきます。
子供達の生きる力を育むために、また、多様な能力を評価するために、がんばってきた軌跡を記録してポートフォリオに活かそうとする試みは、素晴らしいことだと思います。なのでキャリアパスポートの理念は大賛成です。
ただ、この理念がしっかり伝わっていないと、このワークシートの運用によって間違った(子供たちのためにならない)運用が行われる懸念があるかと思います。
子供たち一人一人の違いをしっかり受け止めて、自己肯定感を育みながら、それぞれのありたい姿に向かって主体性を発揮できるようにするためは、大人が正しい思っていることを押し付けて優等生に向かわせるよりも、もう少しゆったりと個性に寄り添う形のキャリア育成のあり方が検討されるべきかと感じます。
繰り返しですが、子供達の未来のために、今のキャリア教育を一歩前に進めようとされている文部科学省の方々の本気度に共感しています。
このブログは、「日本の子供たちの自己肯定感を世界一にする」と、とてつもない大きな目標を宣言してしまい、子供たちの自己肯定感を高めるための社会活動を5年続けている私の素朴な意見です。
ちなみに、このQ&Aの資料には「引き継ぎのこと」「入試・就職での活用は不適切なこと」「JAPAN e-Portfolioの許可取り消し」のことも書いてあります。
「学年間の引き継ぎは,原則,教師間で行い、校種間の引き継ぎは,原則,児童生徒を通じて行う」としています。
ということは、紙とデジタルを融合させた運用のイノベーションが必要と思われます。
また、「入試や就職試験等での活用は適切ではない。自己申告書に記入したりする際の情報の一つとしてキャリア・パスポートを参考とするのはよし」としています。
ここは、だいぶ解せないですね。ポートフォリオこそ履歴書ですから。ただ正確で客観的なデータの保証が難しいことが理由でしょうから、記録から入試・就職までの仕組みのイノベーションが必要と思われます。
また「※「JAPAN e-Portfolio」が令和2年8月7日付で許可取り消しとなったことを受け、関連の項目を削除している」としています。
これは当然かと思います。ここでは多くは語りませんが、1社に運用を独占させ公平性が著しく欠けた誤った施策をいったんゼロクリアさせた文部科学省の英断は素晴らしいと思います。
以上、「キャリア・パスポート」についての漠然とした不安を、4人の子育て中の1人の父親として素直な気持ちとして書いてみました。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。