学修成果の見える化は生徒のためになるのか。真のキャリアパスポートを目指して。
学習指導要領の改訂に伴い、中学校、高校では「総合的な学習(探究)の時間」が取り組まれています。
探究学習の中で、生徒自身が主体的に課題を見つけ出し、学んだり考えたりしながら、自分軸であり方や生き方を考え、課題解決のために行動していく能力を育むことを目的としています。
まさに「自分らしく力強く生きる力」を養成していると言えるでしょう。
PBLや地域課題と絡めたり他の授業と連携したりと学校によって取り組みは様々ですが、生徒の育成機関として学校も大きな転換期を迎えていることは間違いなさそうです。
一方で、大学では教学マネジメントが推進されて、学修成果の可視化が進んでいます。学生にどんな力ついているのか、学生自らがエビデンスを示すことができる画期的な仕組みです。また大学全体においても、評価の標準化や授業改善が進みFD「ファカルティ・ディベロップメント」が組織的に進められているところです。
大学受験も一般選抜(テスト試験)よりも総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦が増えてきており、よりその生徒個人の特徴を押さえておく必要が出てきている時代です。
その生徒は、「大学が求める人材として合っているのか?」
その大学の『AP(アドミッション・ポリシー)』を吟味してマッチングをする必要性があります。
子供の個性を活かせるいい時代になりました。まさに個別最適化が進んだ結果だと思います。生徒たちは、中・高で学んだことから得られた「自分の強みやありたい姿」の実現のために大学を選択すれば良くなりました。有名校や偏差値で上から順にという時代もいずれ終焉することでしょう。
ここで、1つ疑問が湧いてきます。
果たして中学校・高校での「学修成果」とは何なのか?ということです。
総合型選抜は、一発勝負の試験でないので、大学の入試課のような選抜する業務をする職員としても、その生徒の人物像を正確に把握する必要があります。
今までの志望理由書や調査書は「成績はこうだった」「部活ではこうだった」「課外活動はこうだった」など実績に応じてある程度、作文すればよかったのですが、本当にそれでいいでしょうか?
また、面接や小論文によっても選抜されますが、面接の練習、小論文の書き方の練習をして対策して挑んだ場合、その生徒の力や人物像を正確に把握できるのでしょうか?
そもそもそれらは生徒の「学修成果」を正確に表しているのでしょうか?
この疑問に答えなくして「高大接続」は成り立ちません。
生徒は日々成長しています。普段の授業の中で大きく気づき成長していることもあります。またある1つの体験によって大きく見方や価値観が成長することだってあり得ます。
その成長の証である学修成果をエビデンスとして見える化することができたら、AP(アドミッション・ポリシー)にマッチした進学を実現することが可能となります。
そこで日々の成長をどう捉えていくかが課題となります。しかしどう捉えたらいいのか、大変難しい面があるのも事実です。
1つ手がかりがあるとしたら、
・自分の経験を客観的に省察した振り返り文(内省文)
があります。
内省文には、「自分を正確に把握し、その経験を俯瞰して考える思考の成長が現れるからです。事実をどう把握して深い問いからどう考え、どう感情を動かし、どんな次の行動に移っていったか」が記述されます。
この「思考と行動」の履歴はまさにその生徒の成長の軌跡であり学修成果と言えるでしょう。
まさに私の人材育成のメソッド開発の挑戦は「振り返りと行動変容」との戦いの日々だったといっても過言ではありません。
中・高向けに開発された「できたことノート for School」は、毎日できたことを記述していき、週1回内省文を書くことで次なる行動を見出していくなかで自分軸を育てていく習慣化メソッドです。
自己肯定感 × 内省 = 行動変容 × 自分軸
といった公式で表されます。
その知見が、中学校・高校での「学修成果」のツールとして活用される日が来るとは。人生何があるかわかりせんね。
子供達が先が見えないVUCAの時代を生き抜き、自分らしくイキイキとした人生を歩んでほしいと心から願っています。
そしてその姿を応援できている幸せを感じて毎日の仕事を楽しもうと思います。
以上