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永槻 藍
2021年11月30日 19:57
鼻が詰まった。匂いがわからない。いつもの納豆が美味しくない。梅干し、酸っぱいだけ。ずらりと並んだ香水たちがゴミと化す。視覚聴覚味覚触覚、問題なし。嗅覚、行方不明。私たちがいかに「香り」でものを食べていたか、いかに「香り」が気分をコントロールしていたか。嗅覚が弱っただけで世界が灰色である。味も匂いもとくにないお粥だけが、その温かさをもって私に寄り添ってくれていた。