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甲子園のビールが美味しい理由

この街の象徴といえば甲子園球場でしょうか。もしかすると、日本一有名な球場かもしれません。野球に関心のない方でも名前くらいは聞いたことがありますよね?

その甲子園球場ですが、外野席(三塁側)で飲むビールがやたらと美味いのです。

甲子園球場には、キリンビールとアサヒビールの売り子さんがいるのですが、内野席には後者のみで選択の余地がありません。

どうせなら、贔屓のビールを飲みたいでしょう?


外野席では両社が揃えた精鋭たちが、連日凌ぎを削っています。

常連客ともなれば、贔屓にしている売り子さんをナンバーワンに育てようと躍起になる事も珍しくありません。平たく言えば、特定の売り子さんからしか購入しないのです。

中には「後はこっちでやるから、サーバーごと置いといてや」と樽買いしてしまう強者まで存在します。まさしくキャバクラのソレですね・・・。

ちなみに、樽買いした方が一人で飲み干すわけではありません。

驚くなかれ「兄ちゃん、一杯どうや?」と周囲の希望者に生ビールを振舞うのです。この街、甲子園外野席ならではの醍醐味でしょう。


さて、甲子園球場のビールが美味いと言っても、僕の独りよがり、気のせいだといけません。

そこで、当院にお越しくださっている方の9名に「ビールはどこで飲むのが1番だと考えます?僕は甲子園だと思うのです」と尋ねてみました。

その結果、なんと一人も否定しませんでした!文句なしの満場一致。いや、個々に尋ねたのであって、9名が集っていたわけではありませんけれども。

理由としては、こうです。まず屋外、目の前には緑鮮やかな天然芝がどこまでも広がるのです。これは大きいでしょう。

さらに外野席(三塁側)は良い具合に陽が当たり喉も渇きます。これも無関係ではありませんね。

そのうえ、浜風によって運ばれてくる磯の香りが何とも心地よいのです。この環境で飲むのですから、美味しいに決まっています。

とはいえ、これだけなら同じ条件の場所が他にもありそうですよね。となれば、他にも秘密があるのではなかろうか?

少なくとも、そう考えてしまうくらい美味いのですよ。


先に尋ねた方のお一人が興味深いことを仰りました。

「甲子園のビールが美味い?そらそうよ、産地直送やもん」

産地直送って・・・魚介類でもあるまいし。いや、一応は「生」ものでしたね。

思わず苦笑いしていると、今度はこう問われたのです。

「居酒屋で飲む生ビールと瓶ビールどっちが美味いと思うん?」

分からなくてどうする。生に決まっているではないか。日本人が合言葉のように唱える「とりあえず生」は伊達ではないぞ。


あれ、確かに序列が存在しますね。おかしいな?

あまり知られていませんが、サーバーに詰め込まれたビール、瓶ビール、缶ビール、実は内容物はどれも同じです。

違いは容器と鮮度を維持するために注入されたガスの量くらいでしょう。それなら、味の違いは・・・鮮度のような気がしてきました。

気になったので調べてみると、甲子園球場の売り子さんたちが背負っているビールサーバー、本当に産地直送だったのです。

神戸市北区にあるキリンビール神戸工場から甲子園球場まで、おおよそ30キロ。ひと樽につきビール15杯分ですから、大観衆を前にすれば大量の樽が空になるはずです。つまり、当日出荷された可能性が高く鮮度に疑問の余地はありません。


如何でしょう?甲子園で一杯やりたくなりました?そんな貴方だけに、とっておきの現地情報を提供しましょう。

同じ外野席でありながら、一塁側に寄るほどコアなタイガースファンが集います。

下手をすると、熱心なファンが掲げた旗によってグランドが観えなくなる事も珍しくありません。

この界隈では応援するのが当たり前、要するに、のんびり野球観戦したい人には不向きなのです。

その点、三塁側のバックスクリーン近辺になると、熱量は程よく下がり普通に応援できます。

一方で、三塁側ポール近くに陣取れば、ビジターチームのファンが増えますので、他球団を応援するならここですね。

さらに、両者の中間地点、つまり左中間になると、どちらかの球団を応援と言うよりも純粋に野球を観戦する人が増えます。


好みに合わせて選んだ座席で一杯やると、どういうわけだか、周囲の観客やスタジアムと一体感が生まれます。不思議ですよね。

そういうわけで、美味いビールで酔いたければ、甲子園球場、外野席(三塁側)でしょう。自信を持ってオススメします。来期は、気兼ねなく観戦できるシーズンになるよう願いを込めて。

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