見出し画像

ガンバルナー日記★第一回「ダメな奴を解読せよ!」

ガンバルナー日記
「ダメな奴を解読せよ!」
2024年9月27日

世のなかダメなやつっているわけだよ。

かくも言うこのボクもまったくダメなやつなんだな。

そうそう、子供のころからダメな奴だった。

安岡章太郎の短編小説で『サアカスの馬』ってのがあったが、あの主人公も壮絶にダメな奴だった。

小学生のころ『サアカスの馬』を読んで、こりゃボクのことかい? って思うほど似てたので、いやあ、自分のダメな奴加減にイヤになったものさ。

まあ、『サアカスの馬』の主人公とボクが違いっているところがあるとしたら、ボクは絶えずなにかに熱中していたことだろうか。

じゃあ、ボクがどれだけダメな奴だったかというと、まあ、学校の勉強がぜんぜんできないわけだ。
勉強ができないって、勉強がイヤだからしかたないわけだ。

当然、成績はよくないよ。

通信簿も
図画工作と国語は5でも、算数や理科は1。

どうしようもないわけだ。

算数の時間になると国語の教科書だったり、好きな本を取り出して、やわら読み始める。

あはは、当然、先生がそれを見つけるわけだよね。

「ヨシツグくん、算数の時間ですよ、算数の教科書出して!」

言葉どおり算数の教科書を出すんだが、額面どおり机のうえに出すだけで、また、小説や歴史の本を読み始める。

とうとう、怒った先生(当たり前だよね)に、その本をしまいなさい! って言われて

どうしたかというと、ボクは黙って本を抱えて窓から出ていった。

こんなので、
どうにもこうにも成績はよくないのだね。

いつも、廊下に立たされていたものだよ。

習字の時間には墨で字を書くのが面白くないので、水墨画みたいな絵を描く。
また怒られる。
そして、廊下に立たされる。

あゝダメな奴だ。

でも、めっぽう映画には強くて、小学生のころから映画を観にいく、テレビで放映される映画は殆ど全部観るって生活。

映画については、観た映画のタイトルとか出演者もぜんぶ覚えていたり、セリフまで覚えていたりする。

嬉々として映画について話してると、親から
「そんなこと知っているより、勉強しなさい」
と言われる。

そう言われると、凹むわけだ。

あゝダメな奴だ。

学校に馴染めず3年生で、不登校になってからは、引きこもっていた。

なにをしていたかというと、
叔父が大学生時代に、うちに下宿していた。その叔父が就職して、出てゆくときに大量の映画雑誌を置いていった。
キネマ旬報、映画芸術、スクリーン、五百冊くらい軽くあっただろう。

ともかく、そのなかの映画評論が面白くて、来る日も来る日も読みたくて、読み漁る生活になる。

漢字がわからないわけだよ。

最初はわからない文字は飛ばしていたが、知りたいと思うとガマンならねえ。

だから、親に聞いたり調べたり。

わからないところはジャポニカで確かめるが、コレまた漢字が難しい。

ところが気がついたら辞書なしで、映画雑誌もジャポニカも読めるようになっちまった。

また学校に行くかと、4年生で学校へ戻ったが、もう余計に勉強ができなくなって、もう救いようもない。

あゝダメな奴だ。

中学にはみんな名門校へ行ったけどボクは行けるはずもない。

それすらなんとも思わない。

親は情けないやつだ、負けん気がないと
毎日、ため息なわけだよ。

負けん気なんてないわけだ。
競争する気はぜんぜんない。

ダメな奴、アホな奴と周囲から言われると負けん気なくても、やっぱり凹むわけだよ。

もう、
そこは諦めてるからすぐに立ち直るわけだ。

あゝダメな奴だ。

中学、高校もダメな奴だ。

高校では暇さえあれば学校を抜け出しては、場末の映画館の暗闇に隠れて、日雇い労働者のおじさんたちと3本立て400円で古い映画を観る生活。

「にいちゃん、また来とったんか、鶴田浩二は東宝のスターやったんや、知っとったか、覚えときやぁ」

映画館がまるで学校だった。
ダメな奴だが、この上なく楽しく感動的な、毎日だ。

大学行くのもたいへんだったけれど、芸大選んで、受験となると、ここで絵心や映画と演劇の知識がものすごく役に立った。
人間なにで助かるかわかっちゃもんじゃないよ。

大学は最高だったわ。
もう、好きな勉強だけできるわけだから、窓から逃げて出ることもないわけだ。

ダメな奴、ちょっと楽しい。

だけど、家庭の事情で大学を中退して、20歳から5年間、見も知らぬ街の夜の世界で、ナイトクラブのボーイになって、その後、バーテンダーになって働くことになった。

この辺の体験は後に小説『幽霊と自転車』に書いたが、まあ、絶望していたし、重い時代ではあったよね。

うーん、自分で考えても
ダメな奴度が増してくるなぁ……。

貧乏のどん底だったけれど、そこで、やっぱりなんかに熱中しないと生きちゃいけない。
貧乏だからお金使えないし
革命的アイデア!
大好きな映画は観られなくとも、ラジオを買って、NHKのテキストでラジオ講座でドイツ語の勉強を始めたわけだ。安い趣味だ。
革命的アイデア!
本は学生アルバイトのバーテンさん頼りに大学生に捨てられる本を集めてもらって読む!

ここで、また、ドイツ語にどハマりで、バーテンさんしながら一年くらいでドイツ語ができるようになって、小学生のころからこだわってきた戦争のことをその関連で、いろいろやるようになったんだね。

そんなこんなで、国立大学の独文科に潜り込んだのが20代後半だった。

なんかこう書くと、一生懸命努力してそうだが、ただ好きなことやってただけで、必死になって努力してってことじゃなかったし。

やっぱりダメな奴だったと思う。

同じ同級生は就職して、パリッとやってるだろうし、ありゃありゃ、ボクは遅れてるよなあーってことだ。
ぼろぼろにあかん。

あゝダメな奴だ。

あとは本とか、講演会の講師紹介とかに書いてあるプロフィール通りだよ。

ああやって、書いてありゃ、なにやらたいそう立派そうに見えちゃうのが文字の不思議さだ。ボクはいまも自分がダメな奴だと思うし、世間から見てもそうだろうと思うよ。

うんうん

さて、長々とボクのダメな奴ぶりを書いてきたけれど、ここから本題だ。

ダメな奴ってなんだろう。

チャットルームを長年運営しているんだがね。なぜか中高校生さんがよく来てくれて、チャットルームに住みついてくれている。

そんな、みんなと話していると、まあ、いろいろいるもんだ。

学校で勉強が出来てパリッとしてる子もいれば、ボクと同じような感じで、ダメなんだよって言う子もいる。

まあ、そういう子たちと話していると、結論から言うとダメな奴って、実はいないもんだなぁと思うんだな。

だいたい、ダメって境界線はどこにあるのかというと、それもよくわからない。

誰が決めてるのかもよくわからないものだよ。

「オレ、勉強嫌いなんだよ、したくないんだ!」って子がいれば、「わかる、わかる」「じゃあ、なにが好きなんだい?」って聞けば「ほほう、それって、いいじゃない、それ、とこととん、極めてみようぜ!」なんて語ることもある。

「学校行けないんだよ! でも親は毎日行けっと言うんだよぉー!」って子がいれば、「なあに、学校行けなくてダメな奴って自分で、いちばんわかってるんだよねー、じゃあ、あらためて言われたくないよなぁー」「休んで、好きなことやってみたら?」「好きなことってある?」「ほほう、そりゃいいじゃないか! それ、とことん、極めてみようぜ!」って声をかける。
それでもって、個人的に手紙書いて送ったり、興味ありそうな本をみつくろって送ってあげたりするわけだ。

こういうことって……

親御さんは怒るわけだよ。
無責任なこと言うなってね。

でも、そのなかから好きなことで、モーレツに大学へ行きたくなって、その子が学校に戻ったりして、逆に「涙、涙」で「ありがとう」って親御さんから電話もらったりとかね。

ボクはダメな奴だから、ボクと同じことを勧めるしかない。
学校へ行けたのは、その子の力でボクはダメな奴をとことん実践しようと言っただけだよ。

だからさ、
ダメな奴なんていないとボクは思うんだな。
ただ、みんなが普通にやってる生き方が、こりゃ、向いてないわって子もいるわけだよ。

それがダメな奴だって言われちゃうと、自分の心もダメな奴ってことになっちゃう。

サラブレッドの生き方があってさ、野生馬の生き方ももある。

そのどちらが優秀だ、ダメだって決めていることなんざ、本当はさ、あまり意味がないんだよな。

サラブレッドも、野生馬も、どちらも魅力的だし、いちばんいいのは、その馬が「オレはこういう馬だからいいんだよ、ほっといてくれよ、これで、気持ちいいんだからさ」って思うようになることなんだと思うんだな。
例え周囲から「おマエはダメな奴だ」って言われてもさ。

だからさ、ダメな奴ってこの世の中に一人だっていやしない。

チャットルームの中高校生たち、サラブレッドも野生馬も、ひとり残らずキラキラしているもんだ。

みんなさ、競馬の競走馬じゃないからね、自分が自分だって、思いながら、自由に走っていればなんとかなるもんさ。

とことん、ダメな奴の僕が言うんだから間違いないさ!

安岡章太郎の『サアカスの馬』の主人公だって、自分がダメな奴なんかじゃなかったと、最後の最後で気がつくわけだからさ。

あー、
ボクはダメな奴だって自分で言ってるよね。

じゃあ、ダメな奴がいないなんて矛盾してるじゃない?

まあ、そういうことだ。

ボクはさ、自分がダメな奴だってことに誇りを持っているからさ、ダメな奴で生きてゆきたいからさ、

そういう意味で、

ダメな奴なんだよ。

子どもの頃とちっとも変わらない。

ダメな奴の楽しさ知っちゃったってわけだ。

ダメな奴、バンザイ‼️

みんな、ガンバルナーでダメな奴になろうぜ。

じゃあ、

また、何か書くよー。



いいなと思ったら応援しよう!