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中島知久平の「必勝戦策」。一、防衛戦策

 はい。写真をアップしまーす。ヘッダー画像は「隼」です。



一、防衛戦策

 我が本土及び領域の防衛を直接脅威するものは、敵の大型空の要塞であることは前に申述べた通りであります。此の空の要塞は大集団を以てする空襲に対し、完全防衛の道は現在に於ては絶対にありません。

 独逸のゲーリング元帥は、先に独逸の戦闘機は其の質に於て、量に於て、遥かに敵を凌駕して居り、又、高射砲等を以てする防空陣は周到に完璧であるから、米、英機は一機たりとも、ベルリン、の上空に寄せ付けないと聲明したのであります。

 然るに、遂に、ベルリン市民に対し、退去疎散命令を発し、之を強制せざる得ざるに立ち至ったと云うことは、此の事実を有力に実證するものであります。

 故に、現在の型式の飛行機を如何に生産増強しても大型空の要塞の大空襲を防衛することは絶対に出来ない、況や、陸上勢力、海上勢力に至っては尚更である。

 即ち現在の軍備、現在の戦策を以てしては、国土防衛は絶対不可能に属するのであります。

 然らば方法は全然無いかと云えば、無いことはない、有るのであります。

 飛行機は、それ自体に重大なる欠陥を包蔵して居る、即ち、一つの致命的急所がある、その急所を突けば、飛行機は全然その機能を失し、行動不能となるのであります。

 その急所と云うのは飛行場であります、飛行場がなければ、飛行機は飛ぶことは出来ない、又、飛んで居る飛行機でも、飛行場を失へばそれ迄である。

 故に日本空襲可能の敵の飛行場を、完全に爆破して仕舞へば、敵の空襲は不可能となり、空襲に依る危機は完全に除去し得るのであります。

 まずはここまで。

 意訳短縮しまーす。


「一、防衛戦策

 我が本土及び領域の防衛を直接脅威するものは、敵の大型空の要塞であることは前に申しました。この空の要塞は大集団で来襲するので、完全防衛の道は現在において絶対にありません。

 ドイツのゲーリング元帥は、

 ドイツの戦闘機はその質、量において、遥かに敵を凌駕しており、また高射砲等をもってする防空陣は周到に完璧であるから、米、英機は一機たりとも、ベルリンの上空に寄せ付けないと声明したのであります。

 しかしながら遂に、ベルリン市民に対し、疎開命令を発し、これを強制させたということは、この事実を有力に実証するものであります(つまり防衛できない)。

 故に、現在の型式の飛行機をいかに生産増強しても大型空の要塞の大空襲を防衛することは絶対に出来ない。いわんや、陸上勢力、海上勢力にいたっては尚更である。

 すなわち現在の軍備、現在の戦策を以てしては、国土防衛は絶対不可能であります。

 対策方法が全然無いかといえば、あるのであります。

 飛行機は、それ自体に重大なる欠陥があり、すなわち一つの致命的急所がある。その急所を突けば、飛行機は全然その機能を消失し、行動不能とななります。

 その急所というのは飛行場であります、飛行場がなければ、飛行機は飛ぶことは出来ない。また飛んでいる飛行機でも、飛行場を失へばそれまでである。

 故に日本空襲可能の敵の飛行場を、完全に爆破してしまへば、敵の空襲は不可能となり、空襲による危機は完全に除去できます」


 あたりでしょう。今回は意訳短縮が難しかったです。で、内容に踏み込むと、

「大型飛行機による爆撃が始まります。ドイツは『我が防衛は安全である』と豪語しましたが、強制疎開を始めました。つまり現在の飛行機では防衛できないことを証左しています。

 大型飛行機の空襲の対策はあります。

 飛行機には重大な弱点があります。それは飛行場がないと何もできないということです。大型爆撃機が離着陸できる飛行場を破壊すれば、本土空襲の危機が避けられます」

 と今となっては「敵基地を攻撃する」という当たり前の戦略を提言します。

 天才とは、「現在の常識を発見すること」「誰もが当たり前だと思っていることの重要性に気づく」とつくづく感じます。飛行機王ならではの、飛行機の常識を述べます。

 知久平さんがこれを書いたということは、軍の上層部でも「最前線で一大開戦をして勝敗を決める」という考えが強く残っていたのでしょう。おそらく日露戦争の成功体験が……。

 とにかく知久平さんは今行われている戦争は、「空襲で本土を攻撃されたら、最前線でいくら頑張っても終わりです」と危機感を述べます。

 続きます。

 はい。今日の旧仮名遣いのお勉強です。

 疎散←そさん

實證←実証 (ずいぶんと変化したな)

包蔵←ほうぞう


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