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中島知久平の「必勝戦策」。第一、日本の国防態勢

 まずは画像を上げときます。


 見直して気づいたのは、これは知久平さんの手書きということです。極秘文章なので活版印刷に頼むことは出来なかったのでしょう。「ガリ版刷り」というやつです。

 表紙の文字や赤い文字の「極秘」。そしてナンバリングはハンコを使ったのでしょう。

 とにかく内容を打ち込みます。

必勝戦策
第一、日本の国防態勢

 先づ順序として日本の国防態勢に就て申し上げます。

 今次の戦争に於いて、日本は北はアリューション、から、西はビルマ、南は蘭印諸島、ヒリッピン、ウエーク島に至る戦略要域を獲保し、今や日本は、絶対不敗の国防態勢が確立したと、政府は屡々聲明せられ、国民も亦然く確信して居るのであります。然し乍ら、世界情勢の推移より之を大観するに、現国防態勢を以てしては、決して楽観を許さざるばかりではなく、寧ろ、将来危険なる情勢さへも豫見せられるのであります。

 その危険なる理由は多々ありますが、重大なるものを挙ぐれば次の三つを数へることが出来るのであります。

 一、生産数に因る国防の危機
 二、大型飛行機に因る国防の危機
 三、欧州戦局より波及する国防の危機

 之の三つの理由に就き遂次具体的解説いたします。

まずは第一章の説明及び、解説です。恐れながら意訳するなら、


「日本の防衛線が強固になりました。政府の戦果の説明に、国民も納得しているでしょう。しかし世界情勢は目まぐるしく変わるので、このまま何もしないと危険です。その理由は多くありますが、大まかに3つあります。1つ目は国内の生産力。2つ目は大型飛行機で国防が変わる。3つ目はヨーローッパの事情によって、『返す刀で』が起きます」

 でしょうか。私、及び私たちは歴史の答えを知りながら読んでいますが、知久平さんは昭和18年に警鐘を鳴らしています。

 もっともそれ以前から、「架空戦記」で日米大戦が繰り広げられ、「アメリカの勝利で終わる」が多数でした。

 

大正期における日米未来戦記の系譜

 ベストセラーが起きたので「けしからん」というカウンターが起きます。「こうすれば日本は勝てる」という講演会やデパートのキャンペーンが多く起きました。

 上記はあくまでも小説ですが、日本政府はシュミレーションをしましたが。「最初は快進撃でいけるが、資源力やソ連の裏切りで負けます」な結論が出ました。

「じゃあ、なんで戦争に踏み切ったの?」となりますよね。そうです。「英霊の死を無駄にするな!」という世論に屈しました。21世紀の日本でも政府要人が暗殺される時代。

 敗戦前の日本は主要政治家が襲撃されるのはゴロゴロありました。中島知久平さんも暗殺されそうになりました。

 仮に正しい政治判断しても国民の怒りを買い、暗殺されるでしょう。それがなくても選挙で「戦争派」が議席を多く獲得し、遅かれ早かれ開戦したと思います。そう。「空気」によって。

 知久平さんは敗戦の空気を読み取り、「勝った、勝った」とお祭り騒ぎの中、真っ先に「空気を読まずに水を差す」をしたわけです。しかも具体的案を携えて。

 はい。それでは今日の旧仮名遣いの勉強です。


「屡々」←しばしば

「聲明」←せいめい

「亦然」←またしかり

「然し乍ら」←しかしながら

「豫見」←よけん・予見

 旧字や異体字は、当初は部首を手がかりに色々探りましたが、今は「画像でテキストを読み込んでググらせる」をしています。旧仮名遣いの書物を解読したい人にオススメな調べ方です。

 便利な時代になったな〜。

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