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中島知久平の「必勝戦策」。三、歐州戦局ヨリ波及スル國防の危機

 続いて、知久平さんが説明する「三大敗戦要因(※私の造語です)」の3つ目である、「歐州戦局ヨリ波及スル國防の危機」を打ち込みます。

三、歐州戦局ヨリ波及スル國防の危機

 日本の戦争は大東亜戦争である、大東亜戦争こそ勝ち抜かなければならないと、皆張り切って居りますが、欧州戦局に対しては多少他處事の様な感じを持っているものがないでもない様に思われるのであります。大観すれば、大東亜戦争と云うものが単独に存在すると云うことは有り得ない、要するに、大東亜戦争は世界戦争の一環に過ぎないのであります、而して、世界戦争の勝敗の鍵は実に独ソ戦線に懸って居るのであります。

 今や独ソ両国は、所謂東部戦線に総力を傾倒し、死闘を続けて居りますが、ソ連が敗れれば反枢軸側の全敗となり、世界は枢軸側のものとなることは明らかである、若しも反対に独逸が敗ける場合には、日本が如何に頑張っても、結局枢軸側の惨敗になることは避けられない。

 その結果どうなるかと云うと、米、英は、ソ連の欧州併合、共産主義の全欧化を防止する盾として、独逸を存続せしむることは想像に難くはない、故に独逸は惨敗しても国が滅びることはない、一時苦難には陥るが又復興する機会を持ち得るのである。

 然し日本はどうなるかと云へば、日本に対しては、ルーズベルト、もチャーチル、も常に抹殺を叫んで居り、米、英の国民も抹殺を唱えて居るのであります。

 日本の興隆は、真に十億亜細亜民族を興起せしむる因をなすものである、亜細亜民族の興起は、米、英、にとりては、現在並に将来、其の存在に大なる脅威をなすものである。

 故に日本を抹殺することが、彼等の脅威を除去し、彼等の繁栄を護る所因であると、米、英は堅く盲信して居るのであって、先きのワシントン、軍縮会議以来、表面化せる、彼等の一貫せる国是である。

 斯く、独ソ戦線こそ、日本の運命の分れる死線であると申さざる得ないであります。


 では、意訳短縮をしてみたいと思います。

三、欧州戦局より波及する国防の危機
「日本の戦争は大東亜戦争であり、大東亜戦争こそ勝ち抜かなければならないと皆張り切っていますが、欧州戦局は多少他人事のように感じているようです。大局的に見れば大東亜戦争は単独ではなく、世界戦争の一環です。その世界戦争の鍵は独ソ戦です。

 今、独ソ両国は東部戦線で死闘を続けており、ソ連が敗れれば世界は枢軸側になるのは明らかです。もしも反対にドイツが負ければ日本が如何に頑張っても枢軸側の惨敗になります。

 その結果は、アメリカとイギリスは、ソ連の欧州併合、欧州全土の共産主義の防止の盾としてドイツを存続させるでしょう、ドイツは惨敗しても国は滅びない。一時、苦難に陥るがまた復興する機会があるでしょう。

 しかし日本がどうなるかといえば、ルーズベルトもチャーチルも常に抹殺も叫んでおり、国民も唱えています。

 日本の興隆は10億人のアジア民族の勢いであり、アジア民族が盛り上がると、アメリカとイギリスの脅威になります。

 だから日本を抹殺することが、アメリカとイギリスの繁栄を護ると盲信しています。先のワシントン軍縮会議以来、国是となっています。

 だから独ソ戦こそ、日本の命運の分ける死線です」

 あたりでしょう。もっとくだけた表現をすると、

「大東亜戦争は世界レベルで考えてください。その勝敗の鍵は独ソ戦です。ドイツが勝利したら、我々の勝利です。もしもドイツが負けたら我々の負けが確定です。

 でも、ドイツは滅びません。アメリカとイギリスは共産主義の防波堤としてドイツを残します。しかし日本に対してはそんな事をしません。アジア民族は10億人いて、そのお陰で日本は勢いがあります。アメリカとイギリスは脅威に思っていて、日本を滅ぼすことが国防になると盲信しています。

 だから独ソ戦が鍵です」

 ですかね?

 知久平さんの「ドイツは負けても国は残る。共産主義の盾として」は、実際にそうなりましたね。アメリカとイギリスが日本を敵視しているのは黄禍論が根っこでしょう。

 日露戦争で同盟国である大英帝国は日本の初戦の「黄海海戦」の勝利の知らせに、ロンドンはお通夜のような雰囲気だったという(※孫文の体験談)。

 後に日本が「アジアの共産主義の盾」になるのも、歴史の皮肉です。まだ、27ページまでしか分析してないので、総論は避けます。

 まー、趣味の話をしますが「アメリカ人のアジア人差別」から、「The Linda Lindas」が世界に広がったという。ブルーハーツに熱狂していた私は彼女たちのライブを三回見ました!


 はい。今日の旧仮名遣いの勉強です。

他處←他所 今なら「他人事」あたりでしょう

因を←いんを。読み方が一緒でした。意味は字面から判断したとおりです。

所因←しょいん。上記同様、「原因」に近い意味

而←しこうして。 この読み方は一回で憶えられなかった。作家のエッセイでたびたび目にしていたが、意味を調べず読み飛ばしをしていたなー。


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