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中島知久平の「必勝戦策」。三、生産増強敢闘策

 ではいつものように書影をアップしまーす。

打ち込みまーす。

 次は此の危急に際し、迂遠なる外交施策に漫然国運を委するが如きは、最も危険なる緩策にして、皇国保全の道ではない、事茲に至っては、最後の総力を発揮し、生産増強をなし、飽く迄敢闘あるのみ、とする勇往策であります。

 本方策は、外交救国策に比し、より常識的である、然し、深く考えなければならないことは、如何に生産増強を狂奔しても、彼我生産力に非常なる懸隔があり、その懸隔は益々拡大せられんとする現情勢下に於ては、ただ漫然たる生産増強を以てしては、勝敗の帰結は既に明瞭であることは前述する通りであります。

 そこで、戦闘機を始め、現用飛行機の生産を重点的に増強し、ソロモン、ニューギニア、及び、ビルマ、の猛反攻を喰い止めると供に、外郭防衛戦を堅守するこそ、目前の急務であり、最善の戦策であると云う構想水準に一応到達することは、必然の勢であろうと思われます。

 然し、此の種の構想は、何人も必ず着想し得る極めて尋常平凡なる水準に属するものであって、現下の重大な局面を打開し、必勝を期する上に寸毫の効果も期待し得ざるものであると信ずるのであります。

 では、意訳短縮、砕けた表現をしまーす。

「この緊急状態に、遠回しな外交でありのままに国運を委ねるのは危険で、最後の総力を使って生産増強して勇敢に戦う策であります。

 この方策は外交よりも常識的です。しかし深く考えるといかに生産増強しても、敵との生産力に開きがあり、月を追うごとに拡大してきます。それを漫然と続けば勝敗は明らかです。前述のとおりです。

 そこで戦闘機など、飛行機を重点的に増強し、南洋諸島及びビルマの反攻を食い止め、防衛戦を守るのは目前の急務であり、最善の戦策であるという構想に到達するのは必然です。

 しかしこの手の構想は誰もが思いつくもので、現在の重大な局面を打破する期待が少しもありません」

 あたりでしょうか。

 不利な側が「講和条約しませんか?」と提案したら、不利な条件を飲まされる。だから戦い抜く姿勢を見せなければならない(「簡単には折れねえぞ!」)。しかし生産増強して防衛戦を守っても、敵側のほうが生産力が上で現状打破できない。

 あたりでしょうか。知久平さんの前置きはまだまだ続きます。
「しかし」「でも」の案を一つ一つ潰して、Z機に気持ちを集中させるのでしょう。意見を真っ先に言いたいのが人ですか、そこはぐっと堪えて根回しのような記述は続きます。

 はい。今日の旧仮名遣いのお勉強です。

 事茲←ことここ 「慈」の心がない文字。今じゃ地名ぐらいしか見かけないのでは? 知らんけど。

勇往策←ゆうじゅうさく? 

ググっても出てきませんでしたが、字面からして「勇ましく往く策」でしょう。

懸隔←けんかく

寸毫←すんごう 


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