中島知久平の「必勝戦策」。29ページまで
個人的事情の余談から入りますが、打ち込み作業はそれほど苦ではないです。「銀翼のアルチザン」で引用再構築を何度もしたので、今更ながら「引用打ち込みは得意作業になっているなー」と独り言ち。
とはいえ、読めない旧仮名遣いや、何度もググらないと出てこない旧仮名に出くわすたびに、気分が折れます(意味を知ると「こんな日本語があるのか」とテンションが上りますが)。
そして何度も読み返して区切りの良い箇所を探していますが、難しい。
「必勝戦策は98ページあるから、毎日1ページ更新のほうが効率がいいのでは?」
と考え中。今回も途中から始まり、途中で区切ます。
でありますが、ソ連に限り失地回復に従い、動員能力も生産能力も尚も漸増の可能性ありと見なさなければならない。
現在、ドイツの兵力量、生産力は、米、英、ソ、の兵力量、採算量に比し遥かに及ばない、然るに、今後ドイツは激減し、米、英、ソ、は更に増大する情勢である。
必然たるべきドイツの夏期攻勢が、今年は遂に防勢に転じ、惹いて伊太利の政変を惹起するに至る事象は、其の大勢を反影せるものであって、容易ならざる重大事態として考えなければならない。
故に、生産力に依って勝敗が決せられる現在の舊式戦法を踏襲するに限りに於ては、ドイツは将来全然勝ち目はない、それ所ではない、昭和20年米国の六発爆撃機が整備されるに至れば、亜米利加、又は英国を基地として、ドイツのあらゆる生産機関、ルーマニア、の精油工場等を徹底的に爆破せられ
意訳短縮しまーす。
「英ソは生産力がピークですが、ソ連に限り、失地回復のために生産力を上がる可能性があります。現在、ドイツの生産力は英米ソと比べると遥かに及ばない。今後ドイツの生産力は激減します。
今年の夏になれば、ドイツは守りに転じます。さらにイタリアの政変を事件とすれば、その影響は容易ならざる得ない重大なこととして考えなければならない。
故に生産力によって勝敗が決まる旧式戦法を踏襲する限り、ドイツに勝ち目はない。昭和20年にもなればアメリカの六発爆撃機がドイツのあらゆる工場やルーマニアの工場を徹底的に爆破」
あたりでしょう。
この論文が執筆完了日の日付は昭和18年8月8日です。同年7月、イタリアでは連合軍がシチリア島に上陸します。そしてムッソリーニが逮捕・幽閉されます。
知久平さんが述べたいのは、「パリ陥落後のヴィシー政権誕生」のように、イタリアに連合国寄りの政権が生まれることへの警告でしょう。
要は、「ドイツは欧州で孤立します。その上でソ連の反撃と、アメリカによる空からの攻撃のダブルパンチが起きます」と言いたいのでしょう。
はい。今日の旧仮名遣いの勉強です。
惹起←じゃっき
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