中島知久平の「必勝戦策」。三、の終りまで
ではいつものように原本を上げて打ち込みます。
ドイツは全面的に戦力を喪失し、全線に亘って手を挙げざるに立ち至る危険が予見せらるのであります。
而して、ドイツの危機は即ち日本の危機である、茲に欧州戦局の危機が国防態勢の上に、避け難き重大なる危機を招来する原因をなすものであると思うのであります。
斯くの如く、以上の三つの中、どれ一つを以てしても日本の国防態勢に重大なる危険を予想せられるのであります。
而も此の三つは、同時に日本に覆い被さって来る現実の問題であって、避けることは出来ない。
故に現状の儘推移するに於ては、悠久二千六百年金甌無欠の皇国を、取り返しの付かぬ運命に導く恐れが多分にあるのであります。
若しも万一、その様なことがあったらならば、吾々現代人の罪は永遠に償うことは出来ない、吾々は何が何でも皇国保全の重責を果たさなければならない。
そこで色々の方策が各方面に私議せらるに至ってのであります。次に其の主なるものに就て論逑致します。
はい。第一の「日本ノ國防態勢」が終りました。知久平さんは3つの要素「国内の軍需生産力」「アメリカの六発爆撃機」「ドイツの危機」の3つが同時期に日本に覆い被さって、取り返しのつかないことになると述べています。
「負ける」「敗戦」という文字を使わないのは言霊思想でしょう。相手を怒らせないための配慮でしょう。
とにかく、ざっくりと意訳短縮すれば、
「以上のようにドイツは全面的に戦力を失います。ドイツの危機は日本の危機で、重大なる危機を招きます。以上の3つ、どれ一つもってしても日本の国防の危機で、この3つが同時に日本に来ます。
現状のままでは2600年、外国の侵略を受けていない我が国が取り返しの付かない状態になります。万が一そうなったら吾々現代人の罪は永遠に償うことは出来ない。何が何でも護らなければならない。
そこで色々と各方面で個人的見解がありますが、主なるもの論を集めて考えてみましょう」
あたりですかね。最後の行に「おっ」と思ったのですが、当たり前といえば当たり前ですが、知久平さん以外にも戦争の終わらせ方を考えていたようです。知久平さんはそれらをピックアップしています。
第二のタイトルは「皇國保全の方(妄)策」
と皮肉というか、「その考えは無理でっせ」ということを述べています。
それは次回!
はい。今日の旧仮名遣いの勉強です。
金甌無欠←きんおうむけつ。読める? てか知ってた? 使う? なんか開成高校の入試問題に出てきそうな四文字熟語だな。
私議←わたくしぎ。文章の流れからして「知久平さんの個人的見解」ではなく、他の政治家の個人的見解かと思うが、前者の部分も拭いきれない
論逑←ろんきゅう? ググっても出てこない。意味と流れからして「各議論を集める」というニュアンスか