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中島知久平の「必勝戦策」。二、大型飛行機に因る國防の危機

 はい。知久平さんが説明する「三つの敗因」の2つ目は、歴史や戦史に興味がない人でも「知ってます」と言えるぐらい、空襲の脅威の説明です。では打ち込みます。



 古来戦策は兵器の進歩変遷に従って変革するものであることは、不変の鉄則であります、従って、兵器の進歩如何によっては、戦策は根本より変革を来たし、爲に現在絶対不敗の国防態勢と雖も根底から覆へり、危険の態勢となることがあります。

 近時、飛行機の進歩の趨勢と、大馬力、大型機に向かって急速なる進展をなしつありますが、特に米国に於て此傾向が甚だしいであります、従って、米国に於ける大型機の進歩の如何に依っては、直接日本本土爆撃が可能となり、日本の国防態勢の基底に動搖を来すの恐れがあるのであります。

 米国に於ける航空勢力は、ルーズベルト大統領が、本年は飛行機の年産額を十二萬五千台に引揚げると揚言して居りますから、大体其の輪郭を察知することが出来るのであります、其の内、直接日本本土を爆撃し得るものは、所謂空の要塞と、航空母艦用艦載機でありまして、現在及び将来の推移は大体第一表に示す如く推定されるのであります。

 ルーズベルトは昭和十六年に空の要塞の必要性を強調し、年産額五千台に引き揚げることを司令し、民間飛行機工場増設のために政府資金を放出したのであります。当時空の要塞はボーイングB十七型が標準型であって、割合に小型でありまして、三万人程度の単位工場を以てすれば、一年に一千台以上生産可能でありますから、此の年には五つの単位工場に相当する工場を建設したと思われます、其の後大東亜戦争が勃発するや、ルーズベルトは十七年一月に空の要塞を年産一万二千台に引き揚げることを司令致しまして、更に工場建設のために政府資金を放出したのであります。一万二千台と云へば十二の単位の工場を必要とする訳でありますから更に七つの単位工場に相当する工場建設に掛ってたものと推定せられます、

 はい。知久平さんは予想表を作って説明をしています。

 では、意訳します、

「古くから戦争対策は兵器の進歩にしたがって変化するのは不変の鉄則です。従って兵器の進歩によっては防衛対策を根本から変えてきました。そのために現在、強固な国防も根底から覆る危険があります。 

 近年、飛行機は急速な進化をしていて、特にアメリカはその傾向が強いです。従ってアメリカの大型機の進歩によっては、直接日本本土爆撃が可能となり、日本の国防の根底に動揺する恐れがあります。

 アメリカの航空勢力はルーズベルト大統領が飛行機の年産額を12万5000台に引き揚げると公然していますから、大体の規模を察知することが出来ます。いわゆる空の要塞と航空母艦の艦載機であり、現在及び、将来の推移は表一に推定されます。

 ルーズベルトは昭和16年に空の要塞の必要性を強調し、年産五千台に引き揚げることを司令し、民間飛行機工場増設のために政府資金を投下しました。

 当時、空の要塞はボーイングB-17型標準であって割に小型で三万人程度の工場であれば一年に一千台生産可能でありますから、この年は五つの工場に相当する工場建設したと思われます。その後、大東亜戦争が勃発するや、ルーズベルトは17年1月に空の要塞を年産1万2000台に引き揚げることを司令しまして、工場建設のために政府資金を投下しました。1万2000台といえば12の工場が必要とするわけでありますから、さらに7つの工場に相当する工場建設にかかったものと推定されます」

 意訳、終わり。表一の写真を見ると、昭和22年まで「予想表」を書いています。昭和20年をピークに生産数が下がっています。アメリカの政府予算と兵器の運用数から導き出した数字でしょう。

 とにかくまだ序盤ですが、知久平さんは「兵器の進歩で国防はガラリと変わる」と述べています。直近だったら第一次世界大戦ですかね? 勃発した当初の一般感覚では「クリスマスまでは終わるだろう」と楽観的で、思い出つくりで志願兵になった人もいたそうな。

 しかし有刺鉄線と機関銃の発明で長期の塹壕戦になりました。飛行機や戦車が活躍するのは戦争末期で、とにかく有刺鉄線と機関銃で膠着状態の長期戦になりました。そしてスペイン風邪の流行で世界中がボロボロになったという。

 日本史ならやっぱり鉄砲と黒船ですかね? 鉄砲が実戦配備された当初は「鳥脅し」と小馬鹿にされていたそうですが、性能が良くなり運用方法が分かってくると戦場の主流になりました。

 黒船来航は「移動できる要塞」なので、江戸湾近くにある江戸城は震え上がりました。しかも大砲の射程や威力はあちらの方が数倍上。やがてそれは明治維新に繋がるという。

 兵器の話をして世界史の話をするとすんげー長くなりそうなので、終わりにします。


 はい。今日の旧仮名遣いのお勉強です。

雖も←いえども
 

基底←根底、でいいでしょう。数学のベクトルじゃないよ(今じゃ「ベクトル」は日本語として使っているなー)

動搖←動揺

揚言←ようげん


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