中島知久平の「必勝戦策」。大幅に変更されたページ編
しばらくぶりの更新です。風邪を引いていました。咳や鼻水が止まらないので、保管先に迷惑をかけられないので休んでいました。
で、咳が収まったので、いつものように資料をお借りし、いつものように画像を上げます(「まとめて写真を撮ればいいじゃん」と思うのはごもっともなんですが、ピンボケや読めない旧字を調べるため、こまめに通うのがベストなんです。ご理解を)。
そして必勝戦策の四六ページの冒頭三行は大幅に修正されています。知久平さんは序盤はですます口調で書き、次第に気持ちが高ぶって「である」、と断言する書き方になっています。
冒頭に「である」と書かれていたら、「です」と修正されています。他、「陸軍勢力」を「陸上勢力」。「海軍勢力」を「海上勢力」と一文字変える修正をしていますが、このページだけは三行も変えています。
修正前の文章が気になりますね。ペリっと剥がせばいいかもしれませんが、さすがに気が引けます。まあ、ライトを照射して透かして読めるかもしれません。
想像の翼を広げれば、極秘の50部なので、説得相手に向けて修正箇所が違う可能性もあります。情報漏れを防ぐために、知久平さんは相手を見ながら説得したのではないでしょうか。無論、言葉を変えて。
冊子をそのまま渡した人もいれば、冊子片手に説明した人もいるでしょう。高松宮殿下に説明した記録があり、高松宮殿下が深い理解をしたので上機嫌だった話があります。
「必勝戦策が10部ぐらいあれば、修正箇所を剥がしてみようかな……」
と思っている、危険思想な長島くんです。
では、太字で打ち込みます。
一部の爆破では、直ちに修理せられて仕舞うから殆ど効果はない。飛行場完全爆破は出来ないという論據は茲から出て来るのであって、小型爆撃機を以てとしては出来ないのがあたりまえである。
それなら飛行場完全爆破は出来ないものであるかと云うと、決してそんなことはない。多数爆弾を積載し得る大型爆撃機を以てすれば、容易に出来るのであります。
1トン爆弾20個を積載し、50メートル間隔に機械的に投弾し得る装置を持つ大型爆撃機ならば、一機を以て、巾50メートル、長さ1000メートルの面積を、15メートルの深度にて吹き飛ばすことが出来るのであります。
従って、50メートル間隔の20機横隊を以てすれば、1000平米方、即ち25万坪を、深度15メートルにて吹き飛ばして仕舞う、40機ならば、50万坪、80機ならば100万坪を、15メートル深度にて吹き飛ばして仕舞うことが出来るのであります。80機位の編隊ならば、常にやって居る手頃のものであって、決して難事ではありません。
故に、大型爆撃機は小数編隊を以てすれば、飛行場は確実に完全爆破を得るのであります。
近頃は飛行場の修理の技術が進んで居りますから、一端爆破しても、間もなく修復する、故に2,3週間置きに、逐次繰り返し再爆破すれば、永久完全爆破の実を挙げ得られるのであります。
要するに、敵の空の要塞よりも遥かに大なる攻撃半径を持ち、而も多数爆弾を積載し得る、大型爆撃機を急速に整備し、敵の日本空襲可能の飛行場を完全爆破すれば、敵の空の要塞の日本攻撃は、之を完封することが出来るのであります。
尚ほ、此の大型爆撃機を有すれば限り、敵の航空母艦、艦隊、輸送船団等は、日本領域に近接することが全然不可能となりますから、外角防衛陣、即ち、ソロモン、ビルマ等の戦闘も我が方の一方的戦争となり、極めて安固となり、茲に再び不敗の新国防態勢が擁立せらるのに至ると思うのであります。
之が防衛戦策の大網であります。
では、意訳短縮をしてみます。
「小型爆撃機で空港を爆破しても、すぐに修復されます。しかし大型爆撃機で大量の爆弾を投下すれば容易です。
1トン爆弾を20個用意し、50メートル間隔で20機編隊で爆撃すれば25万坪を破壊。40機ならその倍。80機なら100万坪。けして難しいことではなりません。
大型爆撃機で編隊すれば敵の飛行場を完全爆破できます。
近頃は修復技術のスピードが早いですが、2,3週間おきに爆撃すれば飛行場は使えなくなります。
要するに、敵の大型爆撃機よりも遥かに攻撃半径が大きい大型爆撃機を開発すれば、本土空襲が防げます。
なお、大型爆撃機を有する限り、敵の海上勢力も日本の領域に近づくことができなくなるので、ソロモン、ビルマ等の最前線も日本が有利になります。再び、新しく国防態勢が擁立できます。
これが防衛戦策の大まかな要点です」
あたりでしょう。
日本の当初の戦術は、「航空母艦で近づいて、魚雷や爆弾を積んだ飛行機で攻撃する」でした。しかし飛行機は急激に進化し、アメリカは、
「巨大爆撃機で日本を攻撃する」
に変わりました。知久平さんは先手を打つべく、巨大爆撃機がいかに脅威であるか、そしてその対処法。そして日本が巨大爆撃機を開発・運用する場合の重要さを説いています。
はい。それでは今回の旧仮名遣いのお勉強です。
巾←はば
大網←だいもう 現在と意味が違う。おそらく、「綱領」に「大」を
つけた意味だと思います。