『週刊読書人』(2024年2月9日号)で哲学者の岩内章太郎さんと対談しました。
岩内さんの新刊『〈私〉を取り戻す哲学』(講談社現代新書)を巡る内容です。この哲学書は信念と信念のぶつかる音が鳴り止まないSNSの空間で、〈私〉であり続けるためにはどうすれば良いかを哲学的に思弁した本。岩内さんはここで新デカルト主義に立ち返ることでその隘路を見出しています。
対談でも言いましたが、僕はずっと信念対立が極限まで行き着いた現代にあって、フッサールの現象学的な考えを捉え直すことが大事なんじゃないかと思っていました。なので、岩内さんのこの本はまさに渡りに船な一冊でした。
岩内さんのこの本の独創的なところは現象学の鍵概念である「エポケー」(判断保留)にひかりをあてたところです。高速で思考が流れるSNSの空間で判断を一度止めることの意味を十全に捉え、〈私〉が〈私〉であることの方途を導いてくれる、そんな本なのです。
対談で指摘しましたが、この本を読みながら岩内さんの師である竹田青嗣氏の『自分を知るための哲学入門』を思い出しました。岩内さんの『〈私〉を取り戻す哲学』がなぜ僕に90年に書かれたこの本を想起させたのかは対談を読めばわかると思います
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