脳梗塞にならない為に,脳梗塞の発症予防
脳神経内科の入院病床の半数以上を占めるのが脳梗塞だ.
今回はこの脳梗塞について記載していく.
まず,脳梗塞は主に動脈硬化因子に起因したものと,心房細動などの不整脈に起因したものに分けられる.
正確にはTOAST分類では5つに分かれるとかそういう細かなことは今回は置いておこう.
まず,動脈硬化因子に起因した脳梗塞から.
管理しないといけないのは高血圧症,脂質異常症,糖尿病だ.
また,喫煙も可能であればやめた方が良い.
しかし,それは当たり前のこととして,日々できることを記載する.
まずは飲水.
人は加齢に従って,口渇中枢の働きが低下する.
それにより,身体が10の水分を必要としているとすると,加齢に従って,9, 8, 7と自分で満足する水分量が減ってくる.
要するに慢性的に脱水になりやすくなる.
高齢者に「満足いくだけ水分を飲むだけで良いですよ」と言わず,「1日1Lは飲むようにしましょう」と言うのはこの為だ.
特に人が脱水になりやすいのは睡眠中と入浴中だ.
また,42℃以上のお湯への入浴は血栓のリスクがある.
(群馬大学医学部附属病院草津分院 血液系・免疫系への効果ー安全入浴法の提唱ー: https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki1962/68/1/68_1_24/_pdf/-char/ja)
また,お酒(アルコール)やカフェイン(珈琲,紅茶,玉露等)も脱水になりやすい.
以前,私は温泉地に近い病院に勤めていたことがある.
また,その温泉は熱いことでも有名であった.
そのような病院に勤めていると,
熱い温泉に入ったのち,お酒を飲み,そのまま寝て,朝起きて脳梗塞になって運ばれてくる患者が少なからずいた.
その病院にいた時に経口補水液であるOS-1を製造元の大塚製薬に要請して,各部屋に一本ずつOnSen-1として置いて脳梗塞発症率がどれくらい減るか研究したら面白いんじゃないかと科内で話していた.
入浴については先程の文献にもあるが,脳梗塞の発症予防の観点から言うと特に入浴の前後,睡眠の前後での飲水が効果的だ.
最近の脳梗塞では死ぬことはほとんどなくなった.
麻痺なく治る人も増えている.
しかしながら,麻痺,言葉が喋れない,上手く認識できない,等の後遺症を残す人も依然として多い.
高齢になると夜トイレに近くなると言って,寝る前の飲水を控えるようになる人も多い.
しかしながら,先程のような後遺症を残す患者を多く見ているとトイレに近くなるくらいは許容して,飲水を心掛けたほうが良いだろうなと思うことも多い.
皆様は是非気を付けていただきたい.
もう一つの原因についても記載する.
一番多いのは心房細動だが,実際は心房細動の診断がついていない人もいる.
自覚症状として一番多いのは脈不整.
脈が一定のリズムで刻んでなければ一度循環器内科での精査をお奨めする.
最近はApple Watchの不整脈検出機能が優秀で,Apple Watchを用いて研究する大学も出てきた.
心房細動に対しては脳梗塞の発症予防として抗凝固薬やアブレーションという不整脈の発生経路を焼灼する手技を用いることが多い.
以前はほとんどワーファリン(ワルファリン)という薬が使われていて,定期的に血液検査を行って,PT-INRという検査項目を用いて投与量の微調整を行っていた.最近は抗凝固薬が進歩し,非弁膜症性心房細動というほとんどの心房細動はPT-INRのモニタリングが不要なNOACあるいはDOACと呼ばれる新しい抗凝固薬が使われるようになった.
以上,一般的な脳梗塞の発症予防について記載した.
参考になれば幸いである.