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将来を過大評価するな; スタンフォードの自分を変える教室を読んで

6、7年前にベストセラーとなった題名の本を改めて読み返してみた。読み返して面白かった点を以下に記しておきたい。

何かをやろうと思っただけで、何かをした気になってしまう:有言実行より不言実行


一時期、本田圭佑やイチロー、石川遼が小学校の卒業アルバムに記載した将来の夢・目標が話題になった。こうした一部の超一流アスリートによる有言実行で夢や目標を実現させる事例は心理学的にはかなり例外らしく、実は不言実行の方が効果的らしい。人は「変わろう」「やろう」「がんばろう」と思っただけで心の中では「変わった」「やった」「がんばった」という満足感に満たされてしまう。これは、仕事中にTo Doリストを作ったり(それも綺麗なガントチャート付きで)、目標を宣言したり、皆で話してある程度の方針が定まった段階で「何かやったよね」という気になってその後手がなかなか動く気力がなくなる理由の一つであろう。
また、自己啓発本を読んで満足して何も行動しない理由の一つでもあろう。自己啓発本は大体同じこと(ポジティブ思考になれ、行動せよ、失敗を恐れるな)が書かれているのに、それを読むだけで何か成し遂げたような気分になってしまい、明日からがんばろう」と思って実は何もやっていない状況に陥りやすい。そしてまたモチベーションが下がってきたところで、同じ内容が書かれた違う著者の作品に手を取り、また読んで満足する(そう考えると、自己啓発本というカテゴリ自体は、リピート購入者が続出しリカーリング収益が向上的に発生する良いビジネスモデルだと思う)。
本田圭佑、イチロー、石川遼は有言実行でも目標を成し遂げた例外中の例外であることを念頭に置こう。また、スラムダンクのかの有名な桜木花道のセリフ「ヤマオーは俺が倒す!by天才・桜木」も、「これで勝つしかなくなった」と自分を追い込むかのように桜木は発言していたが、実際に起こる現象は「これで勝った」と思い込んでしまうことを肝に銘じて置こう。
凡人である自分が常に心に刻むべき言葉はかのチャゲ&飛鳥の名曲「Ya-Ya-Ya」の冒頭部分「必ず手に入れたいものは 誰にも知られたくない」だろう。

人は常に将来を過大評価している

人は常に、今日はできないことでも明日はできるだろうと感じる。今日は忙しいから明日の時間のあるときに何かしらやるべき仕事や勉強を先延ばしにしよう、と考える。しかし、明日も実際には忙しい。少し時間が余って、その余った時間を勉強にあてたりやるべき重要な業務に充てると言う未来はなかなかやってこない。
これは、小見出しの通り、人は常に将来(の自分)を過大評価しすぎてしまっているからなのだ。実際には現在何かしらのアクションを起こさない限り、自分の描いているより良い将来の自分は現実にはならない。
今日より明日は少し良くなるだろう、という期待はミクロ経済の観点からはよいのかも知れない。将来の見通し(賃金が増える、物価が上がる)が明るければ個人は現在における消費活動を増やそうとし、物を買い、ローンを組み、経済活動を活発させる。だが、こうした見通しを自己成長にも当てはめるのは危険だ。明日の自分は、YoutubeやSNSをダラダラみて無為に過ごした今日の自分なのだ。したがって井上靖が残した言葉「なろうなろう、明日なろう。明日はヒノキになろう」ではなく、林修氏の名言「明日やろうはばかやろう」「いつやるの?今でしょ」を胸に刻み、今日を生きていきたいと思わされた。

その他①:ストレスは一瞬でやる気を奪う

ストレスのかかる状態では、身に迫る危険からすぐに逃げ出したり、または闘ったりできるよう、エネルギーは全て身体に注がれる。一方で慎重な意思決定をするための脳の領域にはエネルギーが送られなくなる。逆にリラックスした状態では脳に(正確には、自制心の中枢機能である前頭前皮質に)エネルギーが送られるようになる。ストレス状態に陥ると、人は目先の短期的な目標と結果しか見ることができなくなるが、自制心が発揮されれば大局的に物事を考えることができるようになる。

その他②:死亡事故のニュースを見るとロレックスが欲しくなる

人は、自分の死を考え恐怖を感じると、恐怖を打ち消そうとする心理が働き、何でもいいから安らぎを与えてくれるようなもの、自分が強くなったように感じられるお守りのようなものを欲しがるようになり、更には宗教に傾倒しやすくなる傾向がある。そしてあらゆる誘惑に負けやすくなるのである。

その他③:面白かった章

・意志の強さは心拍変動でわかる
・食べ物で意志力の保有量が変わる
・呼吸を遅らせれば自制心を発揮できる
・運動すれば脳が大きくなる
・人は正しいことはしたくないと感じる
・割引率が10年後の成功を決める
・行ってはいけない、やってはいけないと心に思うほど、考えてはいけないと思うほどよけいに頭で考えてしまう。


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