米国の連邦準備銀行(FED)はシリコンバレーバンクに問題があったことを知っていた
2023年3月に突如破綻したシリコンバレーバンク(SVB)。はたから見れば優良地銀が何の前兆もなく破綻したようにしか見えなかったが、実はそのリスク管理体制および経営体制に問題があったことを米国連邦準備銀行(FED)は事前に察知していた。にも関わらず、その後起きた破綻を止めることはできなかった。そんな記事がフィナンシャルタイムズに掲載されていた。
FEDが具体的に何を把握していのか。まず一つ目が、SVBの金利リスク管理が杜撰であるという点だ。金利リスクとは、金利の変動により保有する債券価格が変動するリスクのことで、金融機関では金利変動によって将来的にどの程度保有する債券の価格が下落/上昇し、それがどの程度銀行の収益にインパクを与えるか、を適切にシミュレーションしモニタリングすることがも求められる。FEDは2022年11月にSVBに立ち入り検査をした際、検査官がこのリスクに気づき、SVBの金利リスク管理体制の格付を下げようとしていた。しかしながら、実際には格付が下げられることはなかった。
SVBの元CEOであり、サンフランシスコ連邦準備銀行の取締役会メンバーでもあったグレッグ・ベッカーを取締役からはずそうという声も2022年夏に出ていた。しかしながら、ここで彼を追い出してしまうとそれは市場に対する信用不安等のネガティブな印象を植え付けかねない、との懸念から追い出すことは見送られた。
こうした一連の対応が後手に回った結果、2023年3月にSVBが破綻し、その後の米国地銀2行が破綻した。そして米国政府は連鎖破綻の危機を防ぐため、数十億ドルの緊急措置をとらざるを得ない状況に追い込まれのは皆の知るところである。
リスクや違和感を察知し、不安の火種を小さな段階で見つけたとしても、対処に移さなければ後々大惨事になる。言ってしまえば当たり前だがそんな当たり前の教訓が学べた記事だった。。。。とは言うものの、これは過去を振り返っている今だからこそ言える結果論ということは理解している。2022年夏の時点ではまさかこんな大惨事が起こるとはFEDも夢にも思わなかっただろう。もしかしたら、SVBのCEO(当時)をサンフランシスコ連邦準備銀行の取締役から外した途端、一気にSVBの信用力が悪化しその時点で取り付け騒ぎが起き、破綻していたかも知れないので、もしかしたら取締役留任は当時としては正しい判断だったのかも知れない。その意味では何も行動しないということも、立派な意思決定の一つである。
将来は予測不可能であることは理解しつつ、その時々の限られた判断材料の中で、適切でなくとも(そもそも適切かどうかは将来から過去を遡ったときに判断されるものである)自分にとってこれがベストだった・後悔はしていない、という選択肢を取り続けられるようにはなりたいと思う。SVBの話から少し脱線したが。