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B2Bビジネスは財布の紐がゆるくなりやすい。自分自身の金ではないから。(金儲けのレシピより)

 題名の通り、金儲けためのテクニック(心構えではない)が列挙されている。章の構成と大まかな概要は以下の通り。

●レシピ0 商売の原理原則:LTV>CACを常に意識せよ
●レシピ1 消費者から買う:バイク王、ガリバー等
●レシピ2 客に作業させる:IKEAは顧客の家具を組み立てない。一番コストがかかる部分を切り分けている
●レシピ3 まとめると高くなる、切り分けると高くなる:まとめると高くなるのは不動産、切り分けると高くなるのは寿司
●レシピ4 1: n構造を作る:Saasビジネスが良い事例
●レシピ5 両方から金をもらう:ビズリーチが良い事例
●レシピ6 合法的に麻薬を売る:「白い粉(砂糖)」を食べさせろ、といこと
●レシピ7 確率をいじる:射倖心を刺激(ギャンブル)し、損失回避の心理を狙え(生命保険が最たる例)
●レシピ8 水を売り、空気を売る:キャバクラや高級バーでは水を高く売っている
●レシピ9 意思決定に介入する:生命保険が良い事例
●レシピ10 仕入れで儲ける:高く売るより安く仕入れる
●レシピ11 他人の財布を狙う:会社のカネも他人のカネだ
●レシピ12 高いものはいいものだ:ワイン、葬儀、結婚式場など
●レシピ13 勝手に「権威」になる:勝手に「野菜ソムリエ」「漢字検定」のマスターを自称せよ
●レシピ14 信者ビジネス:儲けるとは、「信者」と書く。キリスト教から現代の宗教、そしてアップル信者まで、信者ビジネスは儲かる。
●レシピ15 究極のレシピ:儲かるビジネスモデルを売る。セブンイレブンのフランチャイズビジネスと情報商材は「これをやれば儲かりますよ」と進めている点で似ている。

このうち、レシピ11「他人の財布を狙う」、特に「会社のカネも他人のカネだ」については会社従業員として大いに共感してしまった。

人は自分の財布の紐は固いが、会社の財布の紐は驚くほど緩い。

わかりやすいのが出張や接待だろう。出張の際、節約するためにわざわざ安いホテルやフライトを予約する人を見たことがない。基本的には会社予算上限ギリギリでビジネスクラスのフライトを予約し、高級ホテルを予約する。接待用の会場や贈答品、ゴルフコースも予算上限ギリギリで確保する。会社としてもフライト代やホテル代をケチるくらいなら社員に気持ちよく仕事してもらうためにも多めに見て予算を確保するだろうし、接待会場や贈答品等で高級な内容を用意することは相手に対するおもてなしにも通じるため、予算は確保しておきたいというインセティブが存在する。

海外駐在費用も良い事例だろう。特に新興国では現地での高級レジデンスアパートメントの全額費用負担だけでなく、自動車およびドライバー、さらにはメイドまで会社で補助される場合もある。もしビジネスオーナーや個人での費用拠出であればここまで贅沢な暮らしはできない。

会社で予算を管理する部門の従業員とて、会社の金は究極的には自分の金ではなく、会社という法人で決定された予算拠出ルールに従い、支払われた金であれば、「なぜこの資金を拠出したか」という点についてロジカルに説明が可能であり、それ以上会社の財布の紐をキツく締めるインセンティブは存在しない。

いくら会社の業績が苦しかったとしても、その状況を鑑みて自ら予算枠より安いフライトやホテルの手配を申し出るし殊勝な従業員はこれまで見たことがない(会社経営者やビジネスオーナーであれば見たことがあるが)。

振り返ってみれば、一見B to Cビジネスに見えて実はB to Bビジネスで稼いでいる商品は多くあるのではないか。わかりやすいのが雑誌だろう。週刊新潮から週刊ポスト、週刊ダイヤモンド等は一見個人が購入することで成り立つビジネスモデルにも見えるが、その実は広告料(広告を出稿する企業からの広告料)と法人向け販売(歯科医や薬局、美容室等による定期購入)で成り立っているのではないか、と推測する。

儲けるビジネスを作りたいのであれば、財布の紐が固い消費者向けビジネス(B to C)をいきなり狙うのではなく、財布の紐が比較的ゆるめの法人向けビジネス(B to B)のほうがハードルは低い。

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