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ダーウィンの進化論と、VUCAの時代の総合商社の強さについて

ダーウィンの進化論によれば生き残る者とは「自ら環境に適用しようと努力し、変化できる者」ではなく、「たまたま持って生まれた形質が環境に合っていた者」であるという。

キリンが首が長いのは、高い場所にある食べ物をとろうと努力して伸びたわけではなく、たまたま首が長く生まれたとある個体が生き伸び、その個体の子孫が繁栄したためである。決してキリンが環境に適用しようとして自助努力で首を伸ばそうとしたわけではない。

もしキリンの中に首の長い個体が1匹もいなかったとしたら、キリンという種はそこで全て滅んでしまっていたかも知れないのだ。

とはいえ、外部環境の変化とはもともと予測できるものではない。したがって、首の長い個体、首が短い個体、そして首を地面に下ろしやすい個体、太った個体、痩せた個体、軽い個体等、種としてさまざまな多様性を持ったグループを形成させておけば、いざ何が大きな外部環境の変化が起きた場合であっても、少なくともいずれかの個体は生き延びることができ、種としては存続できる可能性は高くなる。

多様性は種の保存に必須なのである。

仮にこのダーウィンの進化論がもし企業に当てはめれば、生き残る企業とは自助努力で変わろうとした企業ではなく、たまたま時代に適合した企業 と言えよう。運良く時代に合致したサービスや製品を世に出した企業こそが生き残るでのある。

世の中に適合したサービスや製品を出すには、ある程度は企業の緻密な戦略立案やマーケティング等の自助努力もあるだろうが、その大半は「運」ということになる。

ではこの運を掴むにはどうすればよいのか。それはできる限り多様な製品やサービスを世に出す、という多様性を確保するための努力をするしかない。

VUCAの時代と言われているように、何が正解かもわからない不透明な現代においてはとにかく手数を増やし(当てずっぽうはだめだけど)、多様なサービスや製品を試して適合していくしかないのではないかと思う。

ところで、こんなVUCAの時代でも企業体として多様性を持ち続けている業界がある。それが総合商社である。

昔からラーメンからミサイルまでと言われるように様々な商材を扱っている総合商社だが、確かにここ数年を見ても、ロシアによるウクライナ侵攻以降の資源価格高騰の時代の変化にも適合した事業部門が存在しており、また中国と米国のサプライチェーン分断においても商社としての供給機能において存在価値を発揮する事業部門が存在している。

ここ数年間は総合商社の多様なポートフォリオの中でも稼ぎ頭は資源・エネルギー部門であっただろう。

もし今後、仮に食糧危機等が起きた場合には食品部門が、脱炭素が更に加速する場合には電力・化学部門等がその社会の変化に適合し、うまく収益を上げていくのであろう。

かつては「コングロマリットディスカウント」として多様な事業をその企業内にもつことを投資家から嫌気されていた総合商社であったが、VUCA時代においては逆にその事業の多様性こそが総合商社の強みとなっているようにも思える。

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