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vison HIROSHIMA(仮)をつくる.1

1 「d design travel誌をつくるように、商業施設を作って欲しい」

三重県多気町という町に「VISON」という大きな商業施設があります。
この連載は、そんな超大型商業施設を考えることになったら、何からどう考えるのか。おそらくそんな仕事において、いつもやられているやり方があり、それによって実績を積んだ会社が次々にその成功事例をもとに似たような施設を作ってしまうことがある中で、そんな施設ではつまらない!!として作ったのが「VISON」だと僕は思っていて、その広島版が進行していく中で、またしても同じような施設になってしまいそうな時に、なんと、僕もそのチームの一員となった。その模様をできる限り書いて見ようというものです。

話が大きすぎて、細かいことは書けませんが、僕が発行している「d design travel」を作りながら、商業施設を考えてほしい」という依頼でした。それはトラベル誌を考えた時から「いつかやってみたい」ことでした。なぜなら、約二ヶ月間の「その土地らしい場所」を見つけるリサーチの日々の中で、この土地の「らしさ」はこうなのに「どうして、こういう施設が、カフェが、宿泊がないのだろう」という視点が現れるのです。毎回、毎回、どんな土地に行っても。

その土地らしいカフェを探しまくるうちに、編集部の中に「それって、こういうカフェなんだけどなぁ」と、かなり明確に浮かんできてしまうようになります。
壁の色、店内音楽の種類、接客のトーン、置いてある商品の様子・・・・。

VISONを経営するアクアイグニスの社長のそうした感覚の鋭さには、本当に感服するのですが、そこを見抜いての依頼なので、引き受けるしかないわけで、ということで、僕の短い、とはいえ3ヶ月の広島旅は始まったのでした。

広島のお好み屋さん。まだ、名前は言えませんが、地元の人は当然知っている有名店。


僕は自分でもD&DEPARTMENTというコンセプトを持ったショップを経営しているので、「コンセプト」だけでも「商品」だけでも「商売」だけでも続かないことはわかっていて、これから考えていく「VISON HIROSHIMA(仮)」も、コンセプトだけでは続かない。続くためのことも考えなくてはなりません。

ちなみに、施設の名前はまだ決まっておらず、少なくとも「VISON」は名乗りたくないと、社長がすでに公言していて、多くのブランディング好きなデザイン系にとっては「どうしてVISONで展開していかないのか」と、思われるだろうけれど、そこもまた面白いのである。社長が。

そして、「コンセプト」とプラスアルファで作られたリーシングパンフレットが、僕に来た仕事ではありますが、要するに、「施設の魅力を伝え、そこに出店したいと思わせるパンフレット」を作って欲しい、とは、つまりは、施設全体を考え抜く必要があり、「総合ディレクターをお願いします」と言われたわけじゃないところも、社長らしいオーダーの仕方で笑えるのでした。

復興のシンボルである市民球団カープが経営的な窮地に立った時も、地元酒蔵が樽を持ち込み行ったのが広島県内外に伝説として残る「たる募金」。


スケジュールとしては5年後の2029年開業。それには今年の秋くらいにはコンセプトはもちろん、そのパンフレットは出来上がり、それをもとに「施設に入って欲しい広島のメーカー」の目処も立てていかなくてはなりません。

名前もきっと僕が考えるんだろうなぁと思いながら、毎週、定期的なzoom会議をやっていくこととなり、明日、それがあるのです。

約4日間のリサーチを終え、毎週、広島じゅうを旅するわけですが、一番気になっているのが「原爆」です。

ありきたりな商業施設は作りたくない。そこから「d design travelのやり方で広島らしい施設を作って欲しい」と依頼される。「広島らしい」というのを書き出すと、まず最初に「原爆」が来たのです。戦時中は、落とされた広島の他にも「空襲」を受けた東の広島もあり、それぞれの復興のシンボルが「カープ」球団であり、「バラ」なのでした。

商業施設に悲しい物語を取り込む必要はないのですが、「広島らしい」となると、そこは無視はできません。
もちろん、「原爆資料館」のような強いメッセージの展示はできません。でも、それを思ってもらう必要を感じ、そこで考えたのが「平和」という一つのキーワードです。「平和」は、工夫次第では、とてもそれを思える施設として作り込める。悲して過去を具体的に展示するのではなく、それを含めて「平和」を感じてもらう。そんな施設ができたら、広島らしい場所として県民に愛され、支持され続けるでしょう」それってなんなんでしょうね。

つづく

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