第11回 遺産分割協議で苦労するパターン(未成年・後見・海外在住)| 学校では教えてくれない相続の話
行政書士の長岡です。相続の話、11回目となる今回は、遺産分割協議で苦労する場面について解説してみます。
遺産分割協議に苦労する場面(その1)
相続人のみなさんが特に苦労することになるパターンがいくつかありますので、まずは「相続人の中にこういう人がいると大変ですよ」というものから紹介してみます。
未成年者
未成年者がローンを組むときなどに、親が代理人になることがあります。遺産分割協議を行うときも、やはり未成年者は単独で参加することができないので代理人が必要になると。ただ、この場合はローンを組むときと違って、ちょっと厄介な部分があるのですね。
例えば父親が亡くなった場合は、母親と子で遺産分割協議を行います。言い換えると、親子で遺産を分け合うことになるわけです。
この場合、母親の取り分が多くなれば子の分が少なくなる「利益相反」の関係になりますので、親が代理人になることはできません。そのため、子を代理する「特別代理人」が必要になります。そして、この特別代理人は誰でも簡単になれるわけではなく、家庭裁判所に申し立てて選任してもらわなければならないのですね。
ちなみに、未成年の子が二人以上いる場合はそれぞれの特別代理人が必要になりますので、さらに手間が増えるでしょう。
判断能力が衰えている人
認知症などによって判断能力が衰え、自力で財産管理等を行うことが難しくなった人のために、成年後見という制度があります。そして、成年後見人のサポートが必要な「被後見人」は、未成年者と同じく単独で遺産分割協議に参加することができません。
被後見人の場合はあらためて代理人を選任するのではなく、成年後見人が代理人として遺産分割協議に参加することになります。
ですから、判断能力が衰えているけれど成年後見制度を利用していない人の場合は、協議の前に家庭裁判所へ申し立てて、成年後見人を選任する必要があるのですね。
成年後見人が選任されると、原則的にはそのままずっと関係が続きます。つまり、「遺産分割協議のときだけ成年後見の制度を利用」というわけにはいかないのです。ここが判断の難しいところなのではないでしょうか。
海外在住者
今の時代、協議自体はインターネットでできるかもしれませんが、まだハンコの問題が残っています。海外在住者は印鑑登録ができないので、遺産分割協議書に実印を押すことができないのですね。
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