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235:父親をブロックした
・自分が思春期真っ盛りの14歳の時、父は不倫をしていた。
・それが発覚してすぐ母と兄と自分は夜逃げを果たし、諸々の手続きを経て離婚。晴れて母子家庭となった。
・そんな父は自分にだけずっと連絡を取ってくる。
・鬱陶しい。
***
・自分が14歳の誕生日を迎える1週間ほど前、父の離婚相手から家に手紙が届いた。
・内容は「『昔妻と次男を交通事故で亡くしており、長男と2人暮らしをしている』と聞いていたのに実際は違うらしいじゃないか。自分の気持ちをどうしてくれる」といった旨で、母に攻撃してくるようなもの。
・父はどうやら母と自分を殺したことにして、相手に嘘を着きながら不倫していたようだ。
・不倫相手も可哀想だ。父が全て悪い。
・また父は重度の鬱病を患っていたらしく、自分たちはそれに随分振り回されていた。
・特に母と兄の心労は計り知れない。自分が12歳だか13歳だかの時には、ほぼ毎日口論していた時期があったのを覚えている。
・彼らはそれぞれ、父の鬱病と連鎖するように母はメニエール病、兄は十二指腸潰瘍を患った。
・自分も自分で小学生の頃、父と2人でいる時急に大声で泣き出されて、マジでどうしたら良いんだよと思ったことがあった。
・鬱病だかなんだか知らないが、普通に小学生のガキんちょの前で大の大人にそんなことされたらトラウマになる。
・そんなこともあり、母は離婚すること・自分たち兄弟は母子家庭となることになんのためらいもなかった。
・不倫というきっかけがあって、むしろ良かったかもしれない。
・ちなみに当時の詳細とその前後の話はこちらの記事で。
***
・父がいなくなること自体は別に良かったのだが、それまで専業主婦をしていた母のもとで金銭の不安を抱えながら暮らしていくのは思春期真っ盛りの自分にとって辛いことも多かった。
・今となっては完全に折り合いが着いているが、その頃の自分はそんな境遇の母にすら反目してしまっていた。
・母に対しては、申し訳ない気持ちと感謝が溢れてやまない。
・とは言え自分は大学に行きたかった。
・子どもながらに、当時の家計では大学に行けないことはわかっていたので、金銭の工面をする必要があった。
・母と兄は父のことをもはや最初からいなかった者としての扱いをしていたので、彼らには内緒にしながら父に連絡を取り続けた。
・「友人と遊ぶ」と嘘をついて、父に会っていた。
・そうやって大学進学時、月に5万円だけ、家賃として仕送りを貰うこととなった。
・父からすれば、離婚の慰謝料が4年間延長され、振込先が母から自分に変わっただけだったので、生活に影響はないと踏んだのだろう。
・家族に内緒にしながら父に定期的に会い、品行方正な人間を演じながらありもしない夢を語り、平身低頭して懇願するのには少しストレスが多かったが、それでも学費分はぶんどれなかった。
・入学試験にかかる費用は叔父に出してもらった。学費はさまざまな奨学金でやりくりしたが、支払いタイミングによっては難しいこともあり、母が学生ローンを組んでくれてなんとか大学に通わせてもらった。
・母には本当に苦労をかけた。
・そんなことをしながら、なんとか大学に進学した。
***
・明確な時期は覚えていないが、自分が高校3年生か大学1年生の頃、父は再婚した。そして、再婚相手を紹介された。
・未亡人らしい。自分は、その再婚相手に可愛がってもらった。
・再婚相手は自分を甥っ子のように思っていたのか、いろいろなものを買い与えてくれた。例えば大学時代の服などはほぼ彼女からいただいたものであった。
・自分はやせぎすな体型をしていてある程度の服は似合うので、彼女の着せ替え人形となっていた。
・再婚相手は良い人で、なぜ父と結婚したのかわからなかった。
・そしてその人を紹介する父の意図も全く不明だった。自分がどれだけ複雑な気持ちになったのか、彼は想像できないのだろうか。
・また大学4年生の頃、父の父、父方の祖父が亡くなる時も急遽呼ばれて駆け付けた。京都から熊本まで。
・病室に入ってベッドで寝たきりになり声も出せない祖父に声をかけると、彼は涙を流した。そして翌日、天に召された。
・祖父は最期に離縁していたと思っていた孫の声が聞けて嬉しかったのだろう。
・ただ自分からしてみれば、特に今までなにか施してくれたわけでもない祖父に対してそこまで思い入れはなかったし、本当に「孫」という役割に対して涙を流したのだとしか思えなかった。
・急に人の死にざまを見せつけられて、虚しい気持ちになった。
・そして繰り返すが、父はそうなる自分の気持ちを想像できなかったのだろうか。
***
・数ヶ月前、父から明らかに自分宛ではないメッセージが送られてきた。
・誤爆メッセージだった。
・内容は、自分のLINEのプロフ画のスクリーンショットと「これが息子。似てるかな?(笑)」みたいな内容を含んだ長文。
・そして、それは明らかに女性に対して送っている文章だった。
・数時間たってそのメッセージの送信が取り消され、その後「送る相手を間違えた、申し訳ない」的なメッセージが送られてきた。
・こいつ再婚した癖にまた女遊びしてんのかよ、と思ったが、同時に気づいたことがあった。
・父は、自分のことを「息子」という道具としてフル活用していた。
・自分はガワだけみたら、福岡の片田舎から京都の名の知れた大学に進学し、東京で大手の会社に新卒入社しているので、自慢の息子足り得るのだ。
・母はよく職場の人に自分のことを自慢しているらしい。田舎とはそういうものだ。
・母に自慢されるのは嬉しいが、父に道具として使われるのは癪に障る。
・お前は自分に何を教育した。何を与えた。何を施した。
・離婚の慰謝料の延長料金を払ったら、次の女遊びの道具にして良いのか。
・父とは、もう分かり合えることはない。
***
・2024年末、父から連絡が来た。「今年は帰らないのか」「兄貴は何してるんだ」
・面倒になった。ブロックした。
・もう自分の人生において、お前を出演させることはない。
・2025年、自分は母の息子として、兄の弟として、生きる。