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2024.1.5 アイス屋で


 実家に行った帰りに、アウトレットに行って、娘がアイスクリームを食べたいと言い、こんな寒いのにアイス、などと言いながら連れていき、アイス屋の前に、わたしは中学の同級生がいるのを見た。
 その子は、わたしが中学のときに仲が良かった子が仲良くしていた子で、わたしはその子とはほとんど喋ったことがなかった。声をかけてもだから、喋ることもないし、声をかけようという考えも浮かばず、わたしはその子をじっと見た。
 わたしはマスクをしていて、その子はしていなく、向こうはまったくこちらに気づかない。肩ぐらいまで伸ばされた濃茶色の髪の毛の、先っぽだけが金色に染められている。夫とふたりの子どもとアイス屋に入っていく。見た目がほとんど変わっていない。中学のときのまま、その子は、家族とアイス屋のテーブルに座っている。
 その子がいたアウトレットのアイス屋の、そのときのことを洗濯物を干しながら夜思い出して、あれって、現実だったんだろうか、とふと頭をよぎった。髪の毛の先っぽが金色だったことも、日が落ちて辺りが薄暗くなり始めていたことも、現実味を薄くしていた。それに、顔が、そのままだった。あまりにそのまま、中学のときと変わらず、その子はアイス屋のテーブルにいた。
 アウトレットを出るころ、遠くの山は影になって、その奥に落ちた夕日のオレンジ色が山の端をくっきりと浮かび上がらせていた。あんなにもはっきりとするものだろうか。影絵のようだった。
 アイスを歩きながら食べている娘と夫が少し前を歩いていて、わたしは息子と手を繋いであとを歩いていたら、娘たちとすれ違った小学生ぐらいの女の子ふたりが、アイス食べてる、寒いのにね、と言っていた。

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