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晴耕雨読:「学習する組織」(一は全、全は一:第12章 基盤)

■第Ⅳ部 実践からの振り返り

学習障害を起こす組織の時質、それ防ぐための構造の理解、構造を表現するための記法、そしてそれらを活用して組織を学習する組織へと変革してゆく要素としてのディシプリン(自己マスタリー、共有ビジョン、メンタルモデル。チーム学習)について、第1章から第11章まで示されている。

 続く第Ⅳ部では以下のように指摘する。
・学習する組織の作り方などはない
・7つのツールも3つのステップもない

なぜなら、組織が抱える課題は会社固有のものであり、構造が似ていたとしてもレバレッジ・ポイントは異なる。それを理解するためには、社員全体の努力しかない。従来の高圧的な組織運営を否定する。個を尊重した経営しか学習する組織にはならない。

極論を言えばベンチマークもベストプラクティスもない。しかし、参考となるプラクティス(実践)は存在する。このセクションは、以下の文言が示すように、プロトタイプになりそうな事例を紹介するセクションとなる。

「プロトタイプという本質的な比喩は、今なお私たちにぴったり当てはまるように思える。答えもなければ、魔法の薬もない。実践を通して学ぶこと以外に道はないのである。ベンチマークやベスト・プラクティスの研究では不十分であろう。なぜなら、プロトタイプを作るプロセスには、確立されたやり方に徐々に起こる変化だけではなく、根本的な新しい考え方や実践が伴い、これらの考え方と実践が相まって新たなマネジメントの方法を作り出すからである。」

第12章からは、体系的というよりはトピック的にいろいろな事を取り上げている。
システム思考を再度振り返るための物語である。

■第12章 基盤

本章では、彼のインタビューで得られた実例を元に、いくつかのディシプリンが有益であるのかを説く。その源流は、組織は個人の集りであり、個人が学習しなければ組織も学習しないという前章までのいくつかの箇所で語られたことの再確認の章である。

この流れは、最終のセクションで語られる、世界は細分化された個々により構築されており、それのいずれもシステムとして機能しているという「全は一、一は全」につならる。

(1)内省ととより深い会話の文化を形作る

「私たちは・・・最終的には、とにかく社員同士が話をするようにすることが一番良い方法だとい言う結論に達したのです。一人ひとりが他の人がやっていることをもっと良く理解することができれば可能性を感じ取れるようになり、そこからふさわしい構造や設計が生まれることになるでしょう」と“チーム学習”の必要性を再確認する。

そこに必要なのは「内省的な開放性」だという。
対比して語られるのは「参加的な開放性」である。これは、表面的、形式的な開放性であり、基本的に組織は高圧的であるという本質を引きずる。「これらの仕組みでは、社員は自らの仕事や行動を振り返ることはしない」という。
 「内省的な開放性の特徴は真に心をを開くことであり、これは人の話をより深く聞くことや真の会話に向けた第一歩である」ということは、ディスカッションではなくダイアログを求めた一節を思い出して欲しい。

そしてこうした活動は「学習する個人」により集積される。したがって「人が人間として真に成長できる組織環境を作り出す」ために「最も抜本的なのは“自己マスタリー”」という理念は揺るがないのだろう。

「様々な人生経験を通じて、彼らは、人間の精神の解法と調和に内在するする力について確固たる信念を形作ってきた」というインタビュー結果から「自己マスタリー」の有効性を確認する。

しかし、自己マスタリーで醸成される理念は“共有ビジョン”につながらなければならない。それは企業の経営者が押しつけるものであってはならない。

「企業経営者たちはたいてい、社員に対して「組織の目的に真剣に取り組むように」と言います。けれども、本当に取り組むべきは「組織が何に取り組むか」そして「それは時間をかける価値があることか」と言うことなのです。」「利益はすべての企業にとって業績の要件ではあるが、目的ではない。」と、利益だけを優先する企業を批判している。

「検診に値する目的を欠く企業は、献身を促すことはできない」のである。

こうした組織風土は自動的にでき上がるわけではない。(変化を促すちながり)では、コミュニティのプロトタイプが示されているので、一つの試みとして参考になるだろう。

そしてこれが“チーム学習”につながってゆく。

「すべては自己マスタリーからはじまる。」「周りにいる人たちにとっていやと言うほど明らかな私自身の欠点を、自ら進んで理解しようという気持ちからすべてがはじまるのです。」

(2)生きているシステムとしての組織

「学習する組織」で扱う対象は「組織を取り巻くシステム」の理解と「革新」である。
組織活動の構造を理解することでこれが実現できる。しかし、このシステムは「生きているシステム」であることを理解しなければならない。

「生きているシステム」はダイナミズムの中にあると同時に、個々の要素は一次元的に動くわけではない。人々は機械の部品ではない。「企業を人間のコミュニティとして考えること」を求めている。

比喩として「私たちはの多くは車を「運転する」。だが配偶者や10代の子供たちを動かそうとすれば、何が起きるかも知っている」と、機械である組織と生き物である組織への対応の違いを指摘する。

なぜ、人々は組織を機械の様に考えるのかは本文を読んでほしい。

■章の終わりに

この章では、この集団としてチームが機能するための要件に、自己マスタリー、共有ビジョン、チーム学習を中核に、その必要性について、いくつかのインタビュー記事を交えて記述されている。

一部、マネジメントや組織での学習を促す知識へのアプローチも説いている。
事例は都合の良いものを列記しているだけなので、蓋然性は低い。しかし、参考にはなるだろう。

<続く>

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