ISO9001と経営:願望やお祈りは目標ではない(札幌ドームと大阪万博)
ISO9001と経営:願望やお祈りは目標ではない(札幌ドームと大阪万博)
■6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
ISO9001:2015での審査をしていると、どうしても避けて通れないのが「品質目標」である。
記載されている内容は難しくはなく、ごく当たり前のことが書いてある。
6.2.1
組織は,品質マネジメントシステムに必要な,関連する機能,階層及びプロセスにおいて,品質目標を確立しなければならない。
品質目標は,次の事項を満たさなければならない。
a) 品質方針と整合している。
b) 測定可能である。
c) 適用される要求事項を考慮に入れる。
d) 製品及びサービスの適合,並びに顧客満足の向上に関連している。
e) 監視する。
f) 伝達する。
g) 必要に応じて,更新する。
組織は,品質目標に関する文書化した情報を維持しなければならない。
(ここまで)
どのような内容を品質目標に含めなければならないかは記載されていない。せいぜい「品質方針」「要求事項」「顧客満足」ぐらいだろうか。
しかし、規格の構成や文脈を見ると前提は「6.1 リスク及び機会への取組み」となる。
したがって、一定のリスクはあるものの組織課題を解決する為の枠組みが品質目標に含まれなければならない。
単に「売上」や「納期」、「業務内容」を記載したところで、目標にはなり得ない。
「売上」「納期」は目標ではなく企業が存続するための制約条件であることを勘違いしている経営者が多い。
■お祈りのような目標とプランBのない計画
こうした、「売上」や「納期」、「業務内容」を中心とした発想になると、「達成されない」ことを前提として発想がなく、旨く行かなくなっても修正が利かない。プランBなどないので、最初から規格で求めている「g) 必要に応じて,更新する。」が考慮されない。
これが一企業であるなら良いのだが、行政が足を踏み込むと悲惨なことになる。
○撤退する国も? 2年切った大阪万博 “万博の華”海外パビリオン 許可申請は0件「建設の遅れ」懸念
07月19日
【関西経済連合会の松本正義会長】
「いまだに何の返答もない国もあるらしい。設計もない、日本に対して何のレスポンスもない。私はビジネスマンやからそれはおかしいやないですか」
その上で、個人的な意見としながらも…
【関西経済連合会・松本正義会長】
(Q.撤退する国は出る?)
「あるでしょうね。外交上問題だと思うけど、向こうが嫌だと思ったらしょうがないわな」
徐々に明らかになってきた準備の遅れ。はたして各国の独自のパビリオンが立ち並ぶ万博は実現するのでしょうか。
https://www.ktv.jp/news/articles/?id=07366
○大阪・関西万博「日本館」の建設工事 予定より9億円高く、約76億円で契約 再来年2月に完成予定
2023.07.21
入札を再び行えば、開幕に間に合わないとして、業者を入札せずに選ぶ随意契約に切り替えていましたが、国土交通省によりますと、20日にゼネコン大手の清水建設と76億7800万円で契約が成立したということです。当初に比べ、9億円余り高くなりました。
https://www.ytv.co.jp/press/kansai/detail.html?id=7b3f768ddf0a48c19838311089815f71
○「何を根拠に」 万博協会事務総長の「間に合う」発言に日建連会長
2023年7月21日
万博を準備する日本国際博覧会協会(万博協会)の石毛博行事務総長が「年末までに着工すれば間に合う」との認識を示したことに、宮本氏は「何を根拠にしているのか、私どもにはわからない」と突き放した。
https://www.asahi.com/articles/ASR7P5ST8R7PULFA028.html?ref=smartnews
■対岸の火事とも行っていられない
大阪万博がどうなるかは分からないが、無理に進めれば費用が膨らみ、税金が投入されるだろう。
こうした問題を、一事例だけで見ることは避けた方が良い。
下記の様な例はまだあるかもしれない。
○札幌ドームやはり“甘かった試算” 日本ハムなき船出に早くも暗雲、市民の懸念が現実味
2023/07/14
ドームを支えてきた日本ハムが今季から北広島市のエスコンフィールド北海道(以下エスコン)へ移転した。“日本ハムなき”今後の収益の柱として期待されていたのが「新モード」でのコンサート開催だった。しかし、蓋を開けてみると今年の利用が1件も決まっていないことが明らかになった。
https://dot.asahi.com/dot/2023071300016.html?page=1
札幌オリンピックの誘致が立ち消えになったことは僥倖か。もっとも誘致にかかった費用は戻らない。
<閑話休題>