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誰かを犠牲にするビジネスモデルは成立するのか

【ウーバーにまつわる負の記事】

https://www.asahi.com/articles/ASQ1V6D8JQ1VUTIL03P.html

雨中のウーバー配達で死亡事故 「追加報酬のため」 禁錮2年を求刑
2022年1月26日
飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員が雨の中、自転車で歩行者をはねて死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた男(28)の初公判が26日、東京地裁であった。起訴内容を認めた被告に対し、検察側は追加報酬を得るため悪天候でも配達していたと指摘し、禁錮2年を求刑した。判決は2月18日。
 検察側の冒頭陳述によると、ウーバーには配達回数に応じた報酬のほか、悪天候時などに追加で支払われる「インセンティブ報酬」があった。被告は迅速な配達のために高性能のロードバイクを利用し、事故当時はブレーキパッドが大きくすり減り、ライトも壊れた状態だった。当日は雨も降り始めたが、追加報酬のために配達を続けたという。

https://mainichi.jp/articles/20220126/k00/00m/040/266000c

ウーバー配達員事故 雨なら報酬が…危険運転を生む「クエスト」
2022/1/26 20:30
ウーバーイーツの配達員には、特定条件の配達を達成すると成果報酬が支払われる特徴的な報酬体系「クエスト」が用意され、今回の事故はその条件下で起こった。検察側は「報酬が受け取れるきりのいいところまでやろうと思った」とする岩野純也被告の供述調書を法廷で読み上げ、クエストが危険な運転を生む背景にあるとにじませた。
 配達員の労働組合「ウーバーイーツユニオン」は2020年1~3月、事故に遭った配達員を対象にウェブアンケートを実施。クエストの有無について回答があった事故15件のうち、11件が「クエスト中」だった。調査報告書は「配達員にはとにかく急いで配達してクエストを達成しようという心理が働く」と分析する。

https://www.fnn.jp/articles/CX/310455

ウーバー配達員、自転車と接触 新宿通りで...事故直後の緊迫
2022年2月4日
午後1時すぎ、千代田区麹町の新宿通りで、料理の配送サービス中だったバイクが、右から横断してきた自転車と接触した。
バイクを運転していた30代の男性は、けがをしたものの、意識はあるという。
現場は、見通しのいい片側3車線の直線道路。
JR四ツ谷駅方面から直進してきたバイクが、横断してきた自転車とぶつかった。
警視庁は、バイクと自転車のどちらかが信号を無視した可能性があるとみている。

【ビジネスの欠陥】

ウーバーは繰り返し、配達員は個人事業主といい、アウトソースすらないというスタンスを取っている。彼らは、情報の仲介ビジネスで有り、料理に対しても、配達に対しても責任を負わないというビジネスモデルに徹している。

したがって、彼らのビジネスには飲食店も配達代行員もバリューチェーンには入っていない。と言うように理解できる。それは、第三者から見れば便利なサービスかもしれないが、顧客の求めている「おいしい料理を外出しなくても食べられる」という欲求の直接の提供者ではない。

そうした、本来顧客の求めているサービスを提供できるかは疑問だ。

【人々のダイナミズムと積極的な参画】

ISO9001では、マネジメントシステムの原則としていくつかのコンテキストが示されている。顧客価値の向上のための要素ともなりうる。そのうちの一つに「人々の積極的参加」がある。

たとえビジネスモデルに組み込まれていないとしても、配達代行員をないがしろにしても良いと云うことではないことを考えて欲しい。少し長いが引用する。

2.3.3 人々の積極的参加
2.3.3.1 説明
組織内の全ての階層にいる,力量があり,権限を与えられ,積極的に参加する人々が,価値を創造し提供する組織の実現能力を強化するために必須である。
2.3.3.2 根拠
組織を効果的かつ効率的にマネジメントするためには,組織の全ての階層の全ての人々を尊重し,それらの人々の参加を促すことが重要である。貢献を認め,権限を与え,力量を向上させることによって,組織の品質目標達成への人々の積極的な参加が促進される。
2.3.3.3 主な便益
あり得る主な便益を,次に示す。
-組織の品質目標に対する組織の人々の理解の向上,及びそれを達成するための意欲の向上
-改善活動における人々の参画の増大
-個人の成長,主導性及び創造性の強化
-人々の満足の増大
-組織全体における信頼及び協力の増大
-組織全体における共通の価値基準及び文化に対する注目の高まり
2.3.3.4 取り得る行動
取り得る行動を,次に示す。
-各人の貢献の重要性の理解を促進するために,人々とコミュニケーションを行う。
-組織全体で協力を促進する。
-オープンな議論,並びに知識及び経験の共有を促す。
-人々が,パフォーマンスに関わる制約条件を明確にし,恐れることなく率先して行動できるよう,権限を与える。
-人々の貢献,学習及び向上を認め,褒める。
-個人の目標に対するパフォーマンスの自己評価を可能にする。
-人々の満足を評価し,その結果を伝達し,適切な処置をとるための調査を行う。

【足下をすくわれるリスク】

自分たちのビジネスを支えているのは何かを疎かにすることは危険だ。

https://jp.reuters.com/article/usa-unions-strikes-idJPKBN2H90D2

2021年10月21日
アングル:全米に広がる労働者のスト、雇用ひっ迫でさらに強気化
米国全土では何千人もの労働者が賃上げや働く環境の改善を求めてストライキを続けている。ハリウッドのメークアップアーチストやカメラ技術者らは週末に交渉がまとまってストを回避したものの、ストを行っている労働者は雇用市場の需給ひっ迫などによって一段と意気軒昂の様子だ。
米国の労働運動は今年、アマゾン・ドット・コムのアラバマ州にある物流倉庫で労組結成の動きが阻まれるといった幾つかの挫折はあったものの、指導者たちは成果を上げるための条件が整ってきたとの感触を得ている。カリフォルニア大学バークレー校のハーリー・シャイケン名誉教授は「労使関係においてわれわれは新しい時代を迎えた。労働者は主導権を握る立場になった今、取り戻すべき多くの『失地』があると思っている。われわれが目にしているのは、少なくとも中間層にとどまるか、そこに復帰するための闘いだ」と指摘した。

上記の記事は、アメリカの話だが、対岸の火事のように見ているのは危険だ。すでにライバルは参入を狙っている。

https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220119-2251333/

foodpandaは撤退、再編進むフードデリバリーに挑むDoorDashの勝ち筋とは?
2022/01/19
DoorDashは参入当初、仙台駅を中心にサービスを展開。現在では宮城県内の塩竈市、石巻市など、相対的に人口の少ない都市にもサービスを拡大している。同様に、岡山県の倉敷エリアは「小さな都市ではないが、デリバリーという文化は浸透していない」という土地柄で「競合がいない」ということから進出。こうしたエリアでどのような取り組みが必要かを見極めるために展開したという。
日本オフィスとしては、従業員も増え、配達員の確保や配達時間を守るといった基礎的なオペレーションも確立されてきたという。

配送する代行者は無限にいるわけではない。働く場として他にないので不承不承そうしている人たちもるだろう。そうした人たちは、少しでも待遇が良いところに流れて行く。

目の前の賃金だけでは十分ではない。安定性も必要になる。いつまでも「個人事業主」という都合の良い扱いは危険だ。ウーバーイーツはどんな企業理念が有り、それに共感する人たちをどう集うかの方向性を示さなければ、単なる金儲けの会社だという評判を覆せなくなる。

お客さんがうれしいと云うからと云ってビジネスパートナーを搾取して良いわけはない。

<閑話休題>

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