地政学的リスクを考える(スリランカの破産の問題)
■活躍の場が広がると言うことはリスクである
新型コロナの影響が、良い方向に出ている企業は少ないだろう。いわゆるサプライチェーンの混乱や、生産拠点の一極化のリスク、突然の市場からの撤退など不確定要素が多い、その中で、いろいろな視点にアンテナを張っておくことは必要だろう。
以前インタビューをした企業で、海外に進出する際のリスクはどう考えるのかを確認したところ、「取引している商社が考えてくれる」と人ごとのように言っていた。
しかし、新型コロナは世界で蔓延しており、上海が封鎖状態になったことで、中国以外の拠点の検討が必要になったことや、ロシアのウクライナへの侵攻はロシアビジネスの危うさを浮き彫りにした。
ビジネスモデルのいくつかのプロセスを海外拠点に置くことはリスクを伴う。特に「独裁国家」は突然、ゲームルールを勝手に変えるので安穏とした展開は棄権である。
■今が良くても将来は分からない
現在スリランカの情勢は不安定である。
○“破産”スリランカ 数千人規模のデモ隊が大統領公邸占拠
2022/07/09
深刻な経済危機に陥り、先日、首相が国家の破産を宣言したスリランカで政府に抗議するデモ隊が大統領公邸を占拠しました。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000260881.html
○スリランカ大統領辞任へ 経済危機、抗議デモ激化で
2022/7/10
【ニューデリー共同】経済危機に陥っているスリランカのラジャパクサ大統領が9日、辞任する意向を固めた。地元メディアが報じた。退陣を求める大規模な抗議デモが起き、大統領公邸を群衆が占拠するなど収拾がつかなくなっていた。13日に辞任する見通し。ウィクラマシンハ首相も9日に辞意を表明した。
ラジャパクサ氏は中国寄りの外交政策を推し進め、インフラ整備を理由に多額の資金を借りたことで財政難を招いた。新型コロナウイルス感染拡大で観光業が打撃を受けたことも響き、外貨が不足。今年4月、1948年の独立以来初となる対外債務のデフォルト(債務不履行)になった。
https://nordot.app/918594740973862912
経済が破綻したことが直接の現象ではあるが突然こうなったわけではない。
「平成29年度 質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業
スリランカ:スリランカにおける日本工業団地の開発可能性調査」
(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000031.pdf)
によれば下記の様に、課題はあるものの有望視していることがわかる。
「我が国経済の成長を持続的なものとするには、成長する海外市場の需要を取り込んでいくことが不可欠であり、特に、目覚ましい成長を続けるアジア市場における成否は、世界市場における成功の鍵を握るといっても過言ではないことが「『日本再興戦略』改訂 2015」(平成 27 年 6 月 30 日)で指摘されている。」
「スリランカは、内戦終結後、順調に経済成長しており、中小企業を含む日本企業の進出も進みつつある一方で、税制の急な変更といったスリランカ政府の不透明な政策運営、人件費の高騰、インフラ(電力・物流・通信など)の未整備など、解決すべき課題が多くある。」
2017年の話だ。これが2022年には経済の混迷が指摘されている。
○スリランカ経済、混迷の度合い増す(スリランカ)
2022年06月29日
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/7618eebc6e499f54.html
ジェトロのレポートでは、
経済危機下にあるスリランカでは、通貨ルピー安が加速してきた。
外貨準備の減少によって、政府は国民生活に不可欠な食料や燃料、医薬品の輸入代金の支払いが難しくなっている。
供給量の低下や世界的な資源価格の高騰に加えて、為替の大幅安は輸入物価の上昇を通じて、インフレを深刻化させている。5月のインフレ率は45.3%となり、アルコールを除く食料品の価格は、2020年1月比では、1.7倍に上昇している。
とあり、経済が立ち行かないところにあることを示している。
■ノーリスク・ハイリターンはない
中国の債務の罠にはまり、国自体が立ちゆかなくなればいずれ中国の支配下に置かれるかもしれない。混迷のスリランカは彼らにとっては都合が良い状況であり、武力ではなくお金の力で支配をすることができる。
善意の国はない。何かしらの地政学的なリスクを皆抱えている。
海外に展開する企業は、今起きていることを知り、リスクとリターンを天秤にかけるべきである。
特に、何かしら我々が考える民主主義ではない国はあらかじめ石橋をたたいても渡るときには注意が必要である。
<閑話休題>
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