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独裁の病理(安定性を欠くガバナンス)

■世間に転がる意味不明ーコインの裏表ー

独裁が続き企業に敵を作り出せばスムーズな事業展開を損なうかもしれない。
別にGAFAが独裁的な悪の帝国だとは言わない。

しかし、意思決定が独裁的におこなわれ、周りにイエスマンしかいなくなれば歴史が示すように良い結果は生まれない。他者を踏みにじることに無頓着になってはいないか。

■イエスマンだけを周りに置いてはいけない理由

社長 「A事業部は縮小し、新規にX事業を始める。どうかな?」
取り巻きA 「それはいいですね。賛成です。」
取り巻きB 「賛成です。」

どこでもある風景かもしれない。しかし、ふと社長は気がつく。
「こいつらは、いつも賛成する。」
「何か見落としているのではないか」
・・・
「おい、いつも俺に逆らっている○○を呼べ」
・・・

かなり脚色しているが、ある小説の一場面だ。
結果として、どういう政策を選択するかは置いておいて、代替案の有無を無視し、それぞれのリスクを客観的に見ることができず、価値観は多様であることを尊重しない企業が、危なげなく成長できるとは思えない。

自分とは異なる意見を言える人を身近に置いておかなければ、軌道修正などできない。あっと気がついたときにはもう遅い。

自分のみの周りにイエスマンを配置してはならない理由だ。

■独裁の誘惑

一般的には、経営者は最高権力者であるので、独裁的になりやすい。
独裁の問題点は、反対意見を抑圧し、限られた情報で、自己都合の意思決定を行なう傾向があり、不正と破滅を呼び寄せやすいということがある。

どうしても、権力を握った人間は、その権力にしがみつく傾向があり、そのため独裁に走りやすい。そのため、外部取締役などの第三者の目を入れ、「民主主義」的な意思決定の余地を残している。最もこれが機能しない会社も多いのだが。

■イーロンマスクの不安

イーロンマスク氏は、「会社に出てこないやつはクビだ」的な発言をしてびくりさせられた人物だが、下記を見ると、問題を起こしそうで怖い。

○SpaceX、マスクCEOを公に批判した従業員らを解雇
2022年06月20日

SpaceXの従業員らが最高経営責任者(CEO)Elon Musk氏の行動に懸念を表明し、職場文化の改善を求める書簡を幹部らに送った件で、同社がこの従業員らを解雇したという

https://japan.cnet.com/article/35189159/?utm_source=pushtracker&utm_medium=browser_push&utm_campaign=editorial-push

アメリカの労働法がどのようなものかは承知していない。しかし、日本では、こうした行為は、おそらくは違法になるだろう。

いわゆるGAFAが従業員に対してどう向き合うのかは企業によって温度差があり、アップルなどは積極的に労働組合を容認して対話を重視し、紆余曲折はあるもののAmazonもGoogleも労働組合の結成されれば対話を余儀なくさせられる。

そこの根本には「会社は誰のものか」と言うことに対するスタンスの違いがあるのだろう。

■帝国は崩壊するのか

企業業績が良いうちは内外の関係者を黙らせることはできるだろうが、それはガバナンスが適正であることとは関係ない。経営者が、倫理観のない行動を会社のリソースを使って行なうのであれば、それは独裁と変わらない。

○独裁企業「フェイスブック」、ナンバー2退任の岐路
「フェイスブックの失墜」書いたNYT記者が語る
2022/06/21

「ひとつの時代の終わりだ」。6月1日、アメリカのSNS大手メタ(旧フェイスブック)は、シェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)が2022年秋に退任すると発表した。マーク・ザッカーバーグCEOはこの発表に合わせ、冒頭のようにコメントした。

https://toyokeizai.net/articles/-/598180

独裁と言われるのは本意では無いのかもしれないが、それほど個人の嗜好で活動が進められるのであれば、それが正しいかどうかは関係なく、「彼が決めたのだから」と言うことがまかり通る。

ある日突然、傾くかもしれない。

■GAFAの未来は分からない

アップルはスティーブジョブズ亡き後、革新的な製品は出ていないものの、当たり前の会社としては維持できていると評価できる。しかし、常に変化はいろいろなところで出ている。

○アマゾンが7年ぶりの赤字に転落…なぜIT大手で「想定外の業績悪化」が次々と起きているのか
既存のビジネスモデルは、「web3」という大変化に耐えられるか
2022/06/13

GAFAなどが運営する、いわゆる“サブスクリプション型”と呼ばれるビジネスモデルが限界を迎えつつある。主にITなどのチャネルを通じて、特定のサービスを提供することに対して課金するサブスク型ビジネスに関しては、とりあえず需要が一巡したことに加えて、類似のサービスを提供する企業が増えて競争が激化している。ここへきて、従来のペースで収益を獲得することは難しくなっている。

https://president.jp/articles/-/58502

こうした記事は驚くことではない。FaceBookもメタと会社の名称を変えざるを得ないのは従来のドメインではやっていかないからだろう。一時的な赤字であっても、そう問題視することでもない。これが製造業であれば、簡単に回復できないリスクもあるがIT企業では、それほど神経質にならないで良いかもしれない。

これは、コスト削減への圧力になる。しかし、一夫的な宣言は軋轢を生み出しかねない。

○マスク氏、今後3カ月で固定給従業員10%減-全体で3.5%を削減へ
2022年6月21日

マスク氏はカタール経済フォーラムで、ブルームバーグ・ニュースのジョン・ミクルスウェイト編集主幹とのインタビューに応じ、固定給従業員と時間給従業員の両方で「1年後には増えていると思う」としながら、現時点では3%ー3.5%の人員削減が必要との認識を示した。同氏は、「われわれの固定給従業員は非常に速いペースで増加した」と述べた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-21/RDTIPQT1UM1M01

都合の良いときだけ、従業員を持ち上げ、要らなくなったら捨てるのかという気持ちにさせられる。これは」良い影響を与えない。

○テスラ、ドイツのギガファクトリーでは低賃金が理由で採用が思うように進まず… 労働組合が指摘
Jun. 23, 2022

・ドイツにあるテスラの工場では低賃金のせいで労働者が集まりづらくなっていると、ドイツ最大の労働組合IGメタル(IG Metall)がブルームバーグに語った。
・テスラの工場で働いている熟練工の収入は、競合他社よりも20%少ないとIGメタルは話している。
・テスラの採用は「計画したスピードでは進んでいない」とIGメタルの責任者はコメントしている。

https://www.businessinsider.jp/post-255675

また、労働組合問題も企業を取り巻く環境に影響を与えそうだ。
以下の記事は、特に目をひいた。

○アマゾンの個人事業主配達員らが労組結成 業務委託は「偽装」と主張
2022年6月13日

アマゾンの荷物を宅配している個人配達員10人が労働組合を結成し、日本法人のアマゾンジャパンに対して、労働条件改善に向け交渉に応じるよう要求書を13日提出した。配達員らは個人事業主(フリーランス)の立場で働くが、実態は雇用された労働者と同じで、業務委託は「偽装」と主張する。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/183198

<閑話休題>

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