経営の難しさ(自分では舵取りはできない)
■経営者の思い出
私が最初に所属した企業は、300人程度であり、会社を大きくすることに熱意があり、会社の社長も、見据える未来を熱く語っていた気がする。その会社も、500人、1000人になる頃はビジネスモデルも変わり、私などがいていい会社ではなくなっており、去ることになった。それでも、当時の上司が理想をもち舵取りしていた場面に遭遇したことは良い経験だった。
現在、ISO9001の審査員をしており、小規模企業から中堅企業までを主な対象となることが多い。彼らは、売上が上がらなければ企業の存続が危うくなるので必死だ。したがって舵取りのミスは許されず、品質保証は当然のこととして、経営資源、特に人材の維持管理には気を配っている。
経験的に、事業再編という理由でリストラをした組織は、その後に伸び悩んでいる傾向があり、人的資本の劣化は企業業績に良い影響をもたらすことはない。
会社は、規模に応じたマネジメントが必要であり、経営のプロが手綱を握ることが求められるのだろう。しかし、それはどんなものなのだろう。
■どのように検証しているのだろう
様々な経営環境の変化の中で業績を上げ続けることは難しいだろうが、それに立ち向かうために何をしているのだろう。NECの赤字報道に考えてしまった。
●NEC、2022年度1Q決算は138億円の赤字 - 社会公共・ネットワークが業績悪化
2022/07/29
NECは7月28日、2022年度第1四半期(4~6月)の決算説明会をオンラインで開催した。同期の売上収益は前年度比1.2%増の6597億円となった。
営業利益および調整後営業利益は、「社会公共」と「ネットワーク」セグメントの業績悪化を受けて、減益となった。営業利益は153億円の赤字(前年度比165億円減)、調整後営業利益は70億円の赤字(同比174億円減)だ。最終損益(当期損益)は138億6200万円の赤字となった(前年同期は2億円の黒字)。
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220729-2411000/
業績は軒並み悪いわけではなく、ドメイン毎に濃淡があるようだ。
赤字は一時的なものであるにしても、下記の様に発言が記載されており、悲観的になることはないようだ。
「社会基盤、エンタープライズ、グローバルの3分野の受注が第2四半期以降で実現できれば、業績も上向いてくると考える。ITサービスについて、顧客のトップと会って話してみた感触としては、いまもDX(デジタルトランスフォーメーション)への関心と意欲が極めて強いと感じる。そのため、短期的な景気の動向で需要が左右されるとは思わない。中堅中小企業は2021年度はマイナスだったが、今期で回復した、ようやく底を打ちつつあり、足元の状況を注視する必要があると考える」
しかし、こうしたずれがあるにしても、気になっているのは2018年に前社長が行なったリストラだ。
●NECは「3000人リストラ」で生まれ変われるか
外部人材登用の一方、10月から希望退職実施
2018/07/12
「今回(のリストラ)は間接要員が中心となる。3000人をやりきるのは容易ではない。減ったあとの人員で回るようにプロセス変更も必要になる」。NECの新野隆社長は7月10日、東洋経済などの取材に応じ、6月末に正式発表した希望退職の募集についてそう言及した。
https://toyokeizai.net/articles/-/229194
「これまで経理・財務をやってきて、明日から営業をやりなさいといわれてもなかなかできない人がいる。いまのスキルを生かすことができるように、今回のような転進策を用意した」というが、これは、人材の硬直化を自ら認めているようなものだ。
めまぐるしく変わる経営環境に対応できるような戦略的な人材マネジメントができなければしなやかな組織作りはできるのだろうか。こうした中で、現社長にバトンタッチをしたときの発言を見るときにかかる。
●NECに22年ぶり文系出身社長誕生、異例と考えられる背景は?
2020年12月03日
森田次期社長は、「現在遂行している2020中期経営計画は、収益構造の改革を起点に大きく前進をした3年間であり、収益構造の改革、成長の実現、実行力の改革の3つのテーマで成果があがっている。新社長として期待されているのは、この流れを止めることなく、これまでの経験を活かし、さらなる高見を目指すために、NECをリードしていくことであると認識している」と発言。「次期中期経営計画では、NECが持つグローバルレベルのR&D、技術力を、事業収益につなげる事業開発力を強化することで重要であり、成長を起点にして収益構造のレベルアップを図りたい」と抱負を述べた。
https://ascii.jp/elem/000/004/036/4036143/
しかし、下記の記載を見る限り、戦略の視野には人材戦略が見えない。
森田次期社長は、「M&Aを通じて学んだのは、長期的視点での収益の最大化である。そうした視点で、物事を組み立てる訓練をしてきた。立場が違えば、物事が違って見えるということも理解した」と前置きし、「2019年度は過去最高の最終利益になっており、ネットキャッシュでもプラスに転じつつある。成長し、長期的な価値を高めるには、グローバルで勝ち抜くための投資余力を持ちながら戦う必要がある。単純な足し算としての売上高ではなく、フォーカスした領域における売上高、利益の最大化が最も重要である」とする。
2018年にリストラを行ない、2020年に財務視点での戦略を展開し、2022年に赤字になる。
こうして並べてみると、なんとなく違和感を持つ。
もっとも、私の器ではこんな大きな会社の舵取りなんて想像もつかない。
きっと何かあるのだろうな。
■経営者の仕事とはなんだろう
かつて経営者の回顧録のようなものをいくつか読んだ。
その時に、「結局、経営者の仕事は人捜しだよ」と言い切った経営者の話を思い出す。
自分一人で何もかもできるわけではない。誰かに「儲けてこい」と叱咤したからと言って売上が上がるわけではない。方向性を示し、何が必要なのかを考え、協力者のネットワークを構築するしか成功へは近づけない。
そんな話だったような気がする。
NECだけではない。
お金の話ばかりする経営者が多くないだろうか?
「さぁ、未来の話をしよう」ということがいかに魅力的に語れるのか。
「君の力を貸してくれ」と素直に言えるだろうか。
<閑話休題>
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