組織を変える魔法の杖はない
組織を変える魔法の杖はない
■らしさとは何だろう
「○○さんらしい」と言われるときには、何かの行動や意思決定の分岐点で選択したものが、その人の今までの言動と一致している場合に使われるだろ。過去の実績の積み上げでその人の人格が作り上げられる。
組織でもそれは同じで、「それまで行なってきた言動」の積み上げで、「らしさ」が出てくる。
そうした「らしさ」を捨て去るのは容易ではなく、個人であれば大きな挫折や人生観を一変させる事件が無い限りむりであろう。
会社であっても、倒産の危機などが無い限り「らしさ」を変えるのは難しい。
■らしさの重要性
らしさは、組織で言えば「文化」あるいはカルチャーと呼ばれるだろうか。
組織文化は組織の行動規範を支配し、人々の行動を左右する。
それはとても重要なことだ。
相次ぐ企業不祥事の源流をそこに求めることは否定できない。
○有名企業で不祥事が続く「根本原因」は、ただ1つだ
「組織マネジメントの素人」が経営した結果…?
2022/07/2
重要なことは「組織はここまで腐る」という事実を戒めとして認識することだ。
「組織はつねに健全で、社員たちは真面目に働き、不正など絶対に起こさない」という大前提そのものが崩れ去ろうとしている。
不祥事にこそ至ってはいないものの、調査報告書で指摘されているような「上にものが言えない、風通しが悪い、当事者意識がない、内向き、やらされ感、事なかれ主義、言ったもん負け……」といった「症状」は、じつに多くの企業で発生している。
https://toyokeizai.net/articles/-/603319
組織風土の廃退は組織の行動を下品にして、結果としては不正の温床になり得る。これは個人でもそうだろう。
■らしさを支配するもの
組織の「らしさ」を決定づける要因の一つに、意思決定メカニズムがあるだろう。
第1の側面は、軍隊のように上意下達で統率するやり方と皆の合意の元で意思決定の上で組織統括するやり方になる、
前者は、「言われたとおりにやる」という伝統的な組織マネジメントであり、それがいいか悪いかを考えない組織を作り上げる。最短距離で結果を出す方法になる。
後者は、意思決定に時間がかかるかもしれないが組織全体での納得性が高くなり、柔軟な対応ができるようになる。結果として組織全体の成果達成能力が高くなると言われている。
第2の側面は、現状を重視するか将来を重視するかという視点になる。
前者は、現状の市場や顧客に対するアプローチであり、足下をしっかり固めるという側面がある。既存の枠組みを変える必要も無く、今あるやり方を是とする。今悔いっているときには良いが環境変化には弱い。
後者は、今ある市場だけでは先細りになるなどの視野があり、何らかのイノベーションを志向し、新規市場・新製品開発などを重視する。いわゆる「両利きの経営」が目指すことになる。
■組織風土はすぐには変えられない
上記について、いいか悪いかは一概に言えない。市場は硬直化しており、バリューションもk割らないのであれば、「軍隊型」+「既存市場追求型」でいいだろう。しかし、こうした組織に不祥事が続いているという指摘があると言うことは理解できる。なぜならば市場が成熟してくれば、価格競争に巻き込まれるリスクが高くなり、政策としてはコストダウンに向かう。これは現場に「やるべきことを削れ」と云っているようなものだ。
では、突然「総意型意思決定」+「未来視点」での統制がすぐにできるかと言えばそんなことはない。経験的には、3年から5年かかる。その長い期間、経営者は根気よく社員と話し合いを続けなければならない。その過程で去って行くものも多く出るかもしれない。それでも残った社員は「会社の新しいらしさを受け入れた」社員である。
組織風土は簡単には変わらない。しかし根気よく続ければ「変わる」
そういう例をいくつも見ている。
らしさが「今までの言動」の蓄積であれば、根気よく進めなければならない。
魔法の杖など無いのだから。
<閑話休題>