「稼いでこい」と云って稼いでこれるなら経営者はいらない(不正がなくならない理由)
■繰り返される不正
大手企業の不正が俎上に上がることが多い。
特に製造業に関しては頻発していて、目を覆いたくなる。
○三菱電機不正拡大 製造業、相次ぐ品質面の不祥事
2022年05月26
「別の試験で性能や安全性については担保されていると正当化も行いつつ、不正を行っていた」。三菱電機の一連の検査不正について、外部の有識者でつくる調査委員会の委員長である木目田裕弁護士は25日の記者会見でこう指摘した。
品質を巡る不祥事は同社にとどまらない。日本製鋼所では、北海道の子会社が製造した発電所など向け部材の一部で検査の不正が判明。データの書き換えなどを通じ、顧客と合意した品質基準を満たしているかのように装っていた。遅くとも1998年から継続的に実施されていたという。
日野自動車では、エンジンの排出ガス性能や燃費性能に関する試験データで不正が発覚した。3月下旬に国土交通省から行政処分を科され、同社の国内販売台数の3割超のトラックなどの出荷と販売が止まっており、2023年3月期の業績予想の開示を見送った。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/26/news080.html
製造業だけにとどまらない。
○ホンダ販売店でも1187台の不正車検発覚---整備指定取り消し
2022年6月1日
国土交通省関東運輸局が、必要な検査をせずに車検を通していたとして、ホンダの自動車ディーラー「ホンダカーズ東京中央」が運営する東京・北区にある王子店について、道路運送車両法に基づく指定自動車整備事業の指定を取り消したと発表。きょうの朝日と日経が「ホンダ販売店不正車検」などと取り上げている。
不正車検をめぐっては、昨年、トヨタ自動車系列の15社16店舗でも発覚。民間車検の指定取り消しや、車検業務の停止などの行政処分が下ったばかり。朝日によると「車検は全体の8割近くを国が指定する民間整備工場が担い、手抜きは制度の根幹を揺るがす」と指摘しつつも「不正の背景には自動車整備士の不足があり、解決は簡単ではない」とも伝えている。
https://response.jp/article/2022/06/01/358210.html
○ホンダ販売店、不正車検で指定取り消し 相次ぐ問題、人手不足が影
2022年5月31日
国土交通省関東運輸局は31日、必要な検査をせずに車検を通していたとして、自動車ディーラー「ホンダカーズ東京中央」の王子店(東京都北区)について、道路運送車両法に基づき民間車検の指定を取り消した。整備士2人の車検の検査員資格も実質的に取り消した。違反台数は計1187台に上るという。
https://www.asahi.com/articles/ASQ5055S3Q50ULFA003.html
■うっかりの事故ではない
こうした記事を俯瞰していると、現場での勘違いや無知で起こっているわけではなく、組織的に「分かってやっている」節があることだ。
これは、プロセスの問題ではなく企業風土を含めたガバナンスの欠損があると思われる。
かつて、東芝が問題を引き起こしたときに、経営者の「チャレンジ」がやり玉に挙がったことがある。
経営者は、常に株主などから売上についてのプレッシャーがあることは理解できる。しかし、経営者は「売上」を社員に言ってはならない。売上の責任は社員にはない。経営に携わるものだけの責任だ。
「儲けてこいと言って儲けてこれるなら、あいつ(上司)は要らないよ」
かつて、企業インタビューをしていたときに現場の人が言い放った声だ。
経営者は経営ビジョンを社員に伝え、ふさわしい「環境」を整備することが仕事だ。これが「売上」「お金」の話が先行していないかに気を配る必要がある。
優れた会社でも苦労している。かつてお話を聞いた経営者は「社員を大切にする」ことを標榜しているのだが、社員に「社長の話で記憶に残っていることは」と聞くと「売上が落ちている」という話だった。社長はえらく落胆して、一層話し方に気をつけると言うことだった。
経営資源が「ヒト・モノ・カネ」の順番で大切なら、その順番で話をしなければならない。
「儲けてこい」が優先されるなら、企業の社会的責任はないがしろにされかねない。
<閑話休題>
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