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今日のジャズ: 夏の暑い日に

異様な暑さですね。暑い時には、風鈴か打ち水などで気を紛らわすのも良いですが、涼しげな、寒い、冷たい雰囲気を纏った音楽で気晴らしでも如何でしょうか。

今日は、純氷でキンキンに冷たくしたサイダー、頭がツーンと痛くなる程に冷えたかき氷か、シャリシャリになりそうな氷点下間近のビールといった、即効清涼剤のような、主に冬から春にかけて収録されたジャズアルバムを、これまで取り上げた曲を交えて紹介していきます。

真っ先に思い付くのは、現在のジャズギターを代表するパットメセニーのリーダーデビューアルバム、”Bright Size Life”。今から約五十年前の1975年12月、冬のドイツ、ルートヴィヒスブルクで録音されたトリオ作品です。ECMレーベルの作品は解像度と透明度が高い冷たさを想像させる演奏が多数ありますが、この作品は特に、メセニーの独特の美的世界観、エレキベースの革新者ジャコパストリアスの華麗なベースライン、ボブモーゼスの変幻自在なドラムが冬の欧州の冷たい空気感と共に、寒さを通り越して氷穴にいるような冷たさと静寂感をもたらしてくれるのが魅力です。冬に聴いたら、むしろ凍えてしまいそうな程で、夏の暑い時期に取り出す一枚です。そのアルバム名となっている冒頭曲をどうぞ。

この曲名は、メセニー本人曰く、どこからの発想か名付けた理由すら思い出せないものの、振り返ると、ふと頭をよぎったもので、パストリアスが良いタイトルだということから採用に至ったそうです。響きの良いタイトルで奥深い意味がありそうですが、特段の意味は無いとのこと。元々”Exercise Number 2”という名前が付いていたそうで、今でも課題曲的にステージで取り上げる、メセニーにとってはギターを極める上での修練度の一つの指標になっているようです。そのライブ演奏はこちらをどうぞ。熱気のあるライブ音源によるものか、別メンバーによるトリオ演奏だからか、別レーベルだからなのか、オリジナルのスタジオ作品程の清涼感はありませんが、気になった方は是非。

先のアルバムの二曲目”Sirabhorn”が、しっとりと冷え込む冬の深夜の静けさの中でとめどもなく降りしきる大粒の牡丹雪を想像させるので、暑い夏には特におすすめです。曲名は、メセニーが講師を務めていたバークリー音楽大学のタイ人女生徒の名前に由来しているようです。メセニーは曲名を付けるのが、あまり得意では無いらしく、家族ぐるみで懇意にしていた女生徒の名前を採用するに至ったとのこと(当時女生徒の本人談)。

続いて、ECMを代表するチックコリアによるフュージョンの怪作、寒さの厳しい2月初旬のニューヨーク収録アルバムも、印象的なジャケットと共に夏に聴くと爽快な気分が味わえます。

そのコリアと共演歴があり、メセニーの師匠でもある鉄琴を極めたゲイリーバートンとコリアが紡ぎ出した北欧の秋録音の名作をどうぞ。こちらもECM作品です。冷たい空気感の中で、鉄琴とピアノのシャープな音が、氷柱がまるで突き刺さる程に耳に迫る響きは、アイスを食べて頭がキーンとするような冷涼感をもたらしてくれます。

鉄琴は、夏の風物詩の風鈴のように夏の暑さを鎮めるには相性が良いかもしれません。濃くて蒸し暑いイメージのあるブルーノート作品でも鉄琴は涼しく響きます。こちらは前々曲と同じ二月の米国東海岸録音作品です。

鉄琴をアクセントとすると、蒸し暑い日の多い夏のニューヨーク録音作品ですら、大御所ベニーグッドマンの手に掛かれば風鈴のような趣を感じます。夏の昼下がりにピッタリの心地良い演奏はこちら。

二曲前のオスロ録音作品もそうですが、涼しげに乾いた北欧の空気感と共に録音された音源も夏の暑さにはしっくり来ます。普段は汗が滲み出るように粘るエルビンジョーンズの力強いドラムも、この作品では夏録音にも関わらずキリッとした清々しさがあります。

エルビン同様にシンバルから冷たい湧水の水飛沫が立つかのように透き通った北欧録音のピアノトリオ作品もどうぞ。こちらもやはり、ECMレーベルによるものです。

少しは暑気払いになりましたでしょうか。

最後に、先日8月9日に大阪府枚方市のくずはモールで演奏された、大好きな青森県黒石市のゆるキャラでドラムの達人「にゃんごすたー」によるキャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」をお楽しみください。以下動画の四分過ぎからの演奏です。

演奏と選曲のセンスが素晴らしい、にゃんごすたーもハンディファンで暑さ対策をしているように、猛暑が続きますので、くれぐれもご自愛くださいませ。

にゃんごすたーが気になった方は、こちらをどうぞ。

笑顔溢れる素敵な一日になりますように。

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