「スキー場は、お客さんのことを何もわかっていない」 日本最大数のスキー場運営会社マックアース:一ノ本CEOのお話
もう3ヶ月も前のことになってしまいましたが、5月25日に渋谷で開催されていたスキーフォーラムに行ってきました。(スキーフォーラムに伺うのは初めてだったのですが、会場に入るや否や、いきなり皆川賢太郎さんが出てきて、かなりミーハーにドキドキしてしまいました。)
『「SKI FORUM 2019」来シーズンのスキーウェアとギアが一堂に集結!』
とのことなのですが、自分のお目当ては、以下のスペシャルセミナー。
■「キャッシュレスがもたらす冬季産業への効果」:
一ノ本達己さん((株)マックアース代表取締役CEO)
松村太郎さん(ITジャーナリスト)
■「訪日外国人がもたらす冬季産業への効果」:
加藤史子さん(WAmazing(株)代表取締役社長CEO)
■「これからのスノーリゾート」:
星野佳路さん(星野リゾート代表)
スノー産業を考える上で、是非ともお話を聞いてみたい方々が大集結!じゃないですかっ、ということで興奮してノコノコ伺いました。
いいお話を沢山聞けたので、今更ながらセミナーごとにnoteで内容と感想などまとめてみたいと思います。
今回は、まずマックアース:一ノ本さんのお話をご紹介します。
「株式会社マックアース」って?
会社のHPをみてみましょう。
スキー場などのスノーリゾートやグリーンリゾート、キャンプ場やゴルフ場、ホテルなどを運営している会社で、これまでに全国30以上のスキー場を再生へと導いてきたリゾート施設運営会社です。
こちらのインタビュー記事に詳しいです。
「ゲレンデは地域を持続可能にさせる!全国30以上のスキー場再生を手掛けた企業とは」
関西方面を中心に、現在は26のスキー場の運営をされているとのことで、これは国内で最大数のスキー場運営会社になります。
スキー場は、お客さんのことを何もわかっていない
そんな会社のCEO一ノ本さんが仰っていたのが印象的なこの言葉:
「スキー場は、実はお客さんのことを何もわかっていない」
どういうことか?
言われてみると確かにそうだなと思ったのですが、今の日本のスキー場にはお客さんの情報を入手する手段・タイミングがほとんどない・・
リフト券を買ったり、レストランで食事をしたりしますが、個人情報を入力するようなことは基本ないですもんね(あ、レンタルする時は入力しますね)。
なので、スキー場にどういった年代の人が、どのくらい来ているのか、誰が何を買っているのか、誰がリピーターで誰が初めてなのか、そういった情報が全然ないそうなんです。
そのため、マーケティングや何らかの施策をやるにしても、イメージや悪くいうと当てずっぽうでやることを決めているのが実態だそう。
そうすると、施策の当たりハズレも運頼み。というかそもそも効果測定自体が難しそうで、戦略的・計画的な投資や施策はできないですよね。
日本初、リフト券と電子マネーが一体化したICカード
そこでマックアースが導入したのが以下のシステム。
これにより、
「スキー場内でのキャッシュレス化の実現」
「専用サイト上でのリフト券購入」
「リフト券をセルフ端末機で自動発券」
「購入回数によるリフト券無料特典」
「ポイント付与による特典」
などができるようになって、リフト券自販機によりリフト券の購入待ちがなくなったり、レストランでの支払いや、中国の方がレンタルするときの支払い(アリペイ等)などにも使われているそう。
ゆくゆくは地域とも連携させていきたい(電子マネーをかな?)、と展望を話されていました。
もとは海外の会社のシステムで、海外には日本のスキー場のリフト券のような様々な券種(コンビニで売っているようなランチ付きの割引リフト券パックなど、複数のリフト券種)があるわけじゃないため、開発に際してその対応が大変だったとのこと。
上記システムの導入で、ユーザーはリフト券購入やキャッシュレスなど便利になると同時に、スキー場にとっては待望のユーザー情報が把握できるようになるわけですね。どういった年代の、どういった家族構成の人が、いつ、何回くらいスキー場に来て、何を買い・食べているのか、等々・・・
「スキー場が、お客様のことをわかっている」状態にして、どんな取組や施策が喜ばれるのか、効果があるのか・ないのか、それらの積み重ねでお客様に満足してもらい、より多く来場してもらうことができるようになる、と。
ちなみに上記システム導入の成果かわかりませんが、スキーヤー・スノーボーダーの年間の来スキー場頻度は減ってきているそうです。年一来場の方が増えているそうで、年一となると、実は2月の3連休に集中するそう。なので、日程を調整できる方は、できれば2月の3連休のスキー場は避けたほうがいいそうです。ただ来年以降は天皇誕生日が2/23となるため、2月の3連休が2回に増えるのかな?そうすると多少の分散は見込めそう。。
日本のスキー場と、海外のスキー場の違い
日本のスキー場にはお客さんの情報を入手する手段・タイミングがほとんどないと前述しましたが、では海外のスキー場はどうなのでしょうか?
実は海外のスキー場は、宿泊・長期滞在が基本なので、ホテルやコンドミニアムにてお客様情報がしっかり取れるそうです。逆に日本は日帰りが多いそう。
両者のわかりやすい比較表現として、日本のスキー場のキャパは駐車場で決まり、海外はベッド数で決まるとのこと。
そもそもスキー場の作り方(開発方法)が日本と海外で全然違っていて、海外のスノーリゾートは、まずコンドミニアムを作りそれを売却する、でその売却益でスキー場を開発しているそう。スキー場とともにコンドミニアムの運営費(管理費)でも稼いでいて、スキー場とコンドミニアムの収益を一体として考えられるので、より幅広い施策が打てそうですし、何よりスキー場開発投資のマイナスからスタートしていないってすごい!!
また、ITジャーナリストの松村太郎さんが北米のスノーリゾート(スコーバレーだったかな??)のキャッシュレス事情やアプリ事例について紹介されていましたが、海外のスノーリゾートは技術ヘッドを置いていおり、キャッシュレス対応は当然だし、多機能なスマホアプリも用意されていて、スキー場の天気予報からコースの状況、その日滑ったルート情報や標高差が確認できたり、スノーリゾートでの滞在を楽しくする・楽しみにする情報や機能が充実しているみたい。
ユーザーが楽しみながら、スキー場運営側はユーザーの詳細な利用状況が把握でき、次回以降の満足度向上に繋げられるうまい流れができている。このあたり、滞在日数の違いもあり日本では難しい部分もあるかとは思いますが、日本のスキー場も見習いたいところかなと。
グリーンシーズンの取組や、その他平準化施策
最後に、スキー場運営において大きな課題であろうグリーンシーズンの取組について、質問させてもらいました。
色々やり、沢山失敗もしているとのことw(失礼、笑い事じゃない・・
投資して夏向けの観光施設を何か作ったとして、その年は売上があがったとしても、翌年は半減、翌々年は1/4に・・・となるのが本当によくあることだそう><
一ノ本さん曰く「スキーは常習性があり、(好きな人は)何度も来場してくれるが、夏の施設・観光地は一度行ったらそれで満足してあまりリピートしない」と。言われてみれば確かにそうかも・・・
やはりグリーンシーズンの収益を高めるのは並大抵のことじゃなさそう。
ですが、マックアースさんは、(夏も)かなり色々な取組をやられているので、それでも期待してしまいます。。
また、これはグリーンシーズンに限った話じゃないですが、スキー学校や各種体験などの学校の受け入れを、グループ全体でなんと1,000校行っているとのことでした。これだけの学校を受け入れているのは日本一だろうと話されてました。そりゃ日本一でしょうね。ほんとにすごっ!!!
土日に限定されず、規模も見込めるし、予め予定も立つので経営的にはうまい取組と思いました(すごい大変でしょうけど)。
まとめ
ということで、一ノ本さんのお話まとめると、キャッシュレスはスキー場にユーザー情報をもたらし、おまけにインバウンド効果ももたらし、それによりスキー場の向かうべき先(取組他)を教えてくれる、ということでしょうか。
一ノ本さん、貴重なお話ありがとうございました。
今度の冬は、マックアースが運営するスキー場に行ってみたいと思います!
※次は、WAmazing社長の加藤さんのお話「訪日外国人がもたらす冬季産業への効果」について書いてみます(その後、星野さん)。続く・・・