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某キャンセル界隈の住人

最近知ったのだが、巷では「風呂キャンセル界隈」という言葉があるらしい。意外にも若い世代の人に多いんだそうだ。文字通り、「お風呂が面倒くさくて何日も入らない状態の人達」を指すのだそうだけれど、単に忙しくて疲れて入るのが面倒になりキャンセルしてしまう場合もあれば、私のようにメンタル系の疾患からお風呂に入りたくても入る気力も体力も出なくてキャンセルする場合など様々だそう。

こと、うつ病患者さんにはこの「入浴ができなくなる」ケースはかなりあるあるらしいことを知った。

人によっては「歯磨きができない」「ドライヤーで髪を乾かせない」「トイレに行くことすらできない」場合もあるという。鬱の重症度にもよるが、司令塔の脳が働かないので体が鉛のように重く、一つ一つの行動が重労働に感じる。起き上がることも、腕を上げることも、トイレに這って行かなければ行けないほどの人もいるらしい。当然ながらここまでくると外出も辛くてできないだろう。

恥ずかしながら、私も現在進行系でこれらキャンセル界隈の住人である。健康な人からしてみれば「え…ヤバ。不潔、あり得ない」って思うだろうが、私だって元々は入浴も髪の毛のケアも好きなのだ。それがまだかろうじて仕事に行けていた頃から徐々にできないことが増えていった。

多忙を極め、休職する二年前くらいから毎晩残業続きで帰宅が遅く、疲れて頭は回らないし、頭痛はするし、誰か背中から全体重かけてぶら下がってます?って思うくらい体が重たくて、帰宅後1分1秒でも早く体を横たえたかった。その頃は歳のせいで疲れが抜けなくなってきたんだろうと思っていた。

そんな中まず最初にできなくなってきたのは「夕飯キャンセル」だ。時間も時間だし、お風呂はお湯をためている間に寝落ちてしまうからシャワーだけ浴びて歯磨きして髪の毛をなんとか乾かし寝ていた。

次にできなくなったのが「ドライヤーキャンセル」だ。腕を上げているだけでしんどいので髪の毛を極力タオルドライし、冬ならエアコンの真下、夏ならサーキュレーターの前でうつらうつらしながら乾かしていた。たまにドライヤーを持ったままの姿勢で髪の毛が半乾きのままベッドに項垂れて寝落ちしていたこともあった。

さらにひどくなると「シャンプーキャンセル」になった。一度お風呂場に入るとシャワー浴でも私の場合は30分かかる。特に髪の毛だけで15分。この時間さえしんどくて、シャワーは浴びるがシャンプーはせず、翌朝起きてから洗面所のシャワーでシャンプーし、流さないトリートメントでケア、あとは爆速で髪の毛を乾かして出勤していた。清潔感が大事な仕事なので体が動かせなくなってもギリギリそこは頑張っていた。

今になって思えば、この辺りから既に抑うつ症状がでていたのかも知れない。

休職する直近半年前くらいはとうとう「風呂キャンセル」に突入した。メイクだけはなんとかシートタイプのメイク落としで落とし、冬場は汗もかかないのでお湯で濡らしたタオルで体を拭いて就寝。髪の毛は翌朝シャンプーするスタイルに。季節的に暖かくなってきても基本的に同じだった。流石に毎日というわけにはいかないので2〜3日に1回はどうにか入浴していたが、仕事が休みの日はぐったりしていて起きられず完全にお風呂はキャンセルだった。

今もほとんど誰にも会わない生活なので毎日はお風呂に入れてはいないが、身体は拭いている。
何度もお湯でタオル濡らして拭く方がメンドくない?ならさっと風呂入った方が楽やん、て思うでしょう?分かります、それは。本人が一番分かっているんです。

でも、服を脱ぐ→メイクを落とす→洗顔する→体を洗う→シャンプー前に髪の毛をしっかりお湯で予洗いする→シャンプーして流す→トリートメントし放置し流す→体を拭く→顔と全身の保湿をする→服を着る→髪を乾かす、と文字にしたらこれだけの工程がある。当たり前のルーティンが鬱状態だととんでもなく労働。まさに仕事レベルで疲れてしまう。

最終的には「半顔メイクキャンセル」になった。半顔って、左右じゃなくて上下での半分。マスク必須な職場環境だったので、鼻から下は日焼け止めしか塗っていなかった。マスクから上は目の下のクマをコンシーラーで隠して日焼け止めと下地を塗った上からフェイスパウダーだけはたいて眉毛描いて終わり。時間があればアイメイクもするが、元々目のクマで適度に陰影がつくからそれもキャンセル。おかげでメイク用品がほぼ減らない。

若いうちは盛って足し算すれば映えるけど、歳を重ねてきたら保湿とかメイク前の肌状態の方が重要なんだ。引き算して自然に見えるようにしないと浮いちゃうからね。
だから若いお嬢様方、好きなメイクややってみたい髪型は今のうちに目一杯楽しんで下さい。

「キャンセル界隈」って最初に名付けた人センス抜群だな。個人的にはキャンセルしても他人に迷惑がかからないなら良いんじゃない?と思う。まあ、キャンセルしなくてもよいくらい健康状態が良いに越したことはないけど。

また色んなことが「自然ときちんと」できるようになりたいな。
そんなキャンセル界隈の住人の戯言でした。

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