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考えるひと・つくるひとになれなかったわたしの生きる道

わたしはふだん、おおきな毛糸のふわふわの玉を解きほぐして、きれいな束にしていくような仕事をしている。

「コンサルタント」と呼ばれるような仕事。

「コンサルタント」にもいろいろな仕事内容がある。
英語の "consult"は『相談する』というような意味だから、クライアントが自力で解決しづらい課題があるところどこにでも、「コンサルタント」の仕事は成立する。

例えば昨日は、打ち合わせが3つあった。

商業ビルのなかにコミュニティスペースをつくりたいというクライアントさんのためのコンセプト設計。
既存の事業を地方に展開したいクライアントさんとの作戦会議。
既存の事業を拡大させるために管理システムをつくりたいというクライアントさんとの作戦会議。

わたしは、相手の話を聞いて、調べたことや知っていることや客観的に感じたことを話して、良い影響を与え合うことができそうな仕事仲間や知人がいたら紹介して、相手の話をさらに引き出して、論点を見つけて、対話のような議論のようなことをして、相手が納得できる方向性を見つけて、具体的な行動を示唆するようなことをしている。

たまにリサーチもする。レポートも書く。提案資料も書くしスライドもつくる。抽象的なイメージ図をつくったり体系的に図示することも多い。

そうやって生まれたプロジェクトの実行期間、進捗や目標の達成状況を管理するような仕事をすることもある。そこでもまた、話をしながら論点を見つけて、具体的な行動の計画を立てている。

こういう仕事が得意かはわからないけれど、苦手でもない。もう10年やっているから、結構自然にできることではある。
感謝してもらえたら嬉しい。誰かの役に立てたら嬉しい。

でも、ひとことで「わたしの仕事はこれだ!」と言うことは、ずっととても難しかった。

会社に所属して「コンサルタントの仕事をしています」と名乗っていたときはある。10年間だから、割と長かった。
フリーランスになって、今の仕事もまだその延長線上にある。でも延長線上にいてはだめだと、ずっと思っている。

***

昨日打ち合わせに一緒にでていた元エンジニアの仕事仲間が、「ぼくたちがやっている仕事には、考えるフェーズと、つくりだすフェーズがある」と言っていた。

それを聞いてはっとした。
わたしは、自分を「考えるひと」でも「つくりだすひと」でもないと思っていて、そのことがずっと残念だったのだ。ずっと「考えるひと」か「つくりだすひと」になりたかったから。

おおきな毛糸のふわふわの玉は、わたしではない誰かのアイデア、誰かの熱意、誰かの内発的動機でできている。
わたしはそれをただを解きほぐして、きれいに束にしている。
そのきれいな束から毛糸をひきだしてうつくしく編んでいくのは、わたしではない誰かだ。

わたしもなにかを生み出したい。
生み出すためのアイデアや熱意が、噴火みたいにマグマみたいに湧き上がってきたらいいのに。

憧れのような気持ちで、そう願ってきた。

***

今年の6月にフリーランスになってから、ずっと考えていた。
どうしても、わたしのなかに「考えるひと」や「つくりだすひと」になるためのマグマを見つけ出すことができないのだ。小器用にやってみようとすることはできる。でも、どこかですこし無理をしている。純粋にたのしむことができない。

どの会社に所属しているとか、どんな仕事をしているとか、そういう社会的肩書や役割は関係なしにわたしがしていること、わたしらしいことってなんだろう。純粋にたのしいこと、気づいたらしてしまうこと。

そんな苦悩について、たくさんのひとが話を聞いてくれて、理解しようとしてくれて、感じたことや思ったことを、ちゃんと話してくれた。

それでやっとわかったのだけれど、わたしはたぶん、「つなげるひと」だ。

相手が話すことばのなかに、仕草に、まなざしに、非言語的ににじみだしているよろこびやかなしみや熱をみつけて、自分のなかの類似したなにかとつなぎあわせて、「共感」すること。

相手がみせてくれるアイデア、熱意、内発的動機を頭のなかでまとめあげながら、調べたことや知っていることや客観的に感じたこと、良い影響を与え合うことができそうな仕事仲間や知人を、「紹介」すること。

そういうふうに、点と点をつなぐこと。つなげて、素敵ななにかが浮かび上がってきたなら、とてもうれしい。

だからたぶん、わたしにはマルチワークがあっているのだと思う。
たくさんの情報に触れて、たくさんのひとと出会って、そうやって精神の海にちらばる要素をふやしていくことで、自分らしさを発露させることができるのだろう。

ところで、実はいま、週に何度かちいさな本屋のようなお店をひらきたいと思っている。わたしの仕事場にも、ちいさな本屋にもできるような物件を探している(のだけれど、難航中)。

わたしは本を読むことがとてもすきで、ずっとそのことに救われてきた。
だから、本を媒介にして、来てくれるひとたちに、癒しと、自分が自分であることを楽しむことができる空間をひらくことができたらいいなと夢見ている。ひとりでいても、社会と世界とつながっていると実感できる場所。

わたしは、「つなげるひと」に、ちゃんとなりたいのだ。

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