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オタクよいざ語ろう、2024夏アニメ!


はじめに


タイトル通り2024夏アニメを振り返ります!思いついた順に書いているので、タイトルの順番は適当。

まず大前提として本当に粒ぞろいのクールで、意欲的な映像を惜しげも無く見せてくれる楽しい3ヶ月だったなぁというのが率直な感想ですね!

ちなみに最後まで観ていてなお感想を書いていない作品もあるし、逆に途中でギブアップして雑感に留めているものもあります。お許しを。

ちなみに今期最高のアニメ『負けヒロイン』は別記事で振り返っているので、そっちも読んでくれ~~~








【推しの子】2期


1期よりも格段によかった!2期の「2.5次元舞台編」はこれまでよりも王道スポ根的な要素がマシマシで、素直に楽しめましたね。

これまでは芸能界の闇を描く物語の露悪性と、赤坂アカの言いたいことを代弁する便利な拡声器と化した一部のキャラクター達にゲッソリとさせられていたんですが……


芸能界の闇とかそういうやかましいテーマ性を全部抜いて、スポ根もあるラブコメとして楽しむ『【推しの子】』は最高です。

赤坂アカ先生、ラブコメをもっとくれ……!


特にこの2期で活躍が著しいなと感じたのは、猫富ちゃおさん!
1期から助監督・大半話数のカラースクリプト(色彩演出)として本作に携わっておられるのですが、2期でも獅子奮迅の働きを見せてくれました。

何よりも、本作の熱狂が最高潮に達した第17話『成長』の絵コンテを手がけられているのが非常に印象深い!


まさに名状しがたい迫力で視聴者を飲み込んでしまう
ような、今期でも有数の迫力をたたえるエピソードでしたからね。


まず開幕から素晴らしいんですよ。ド頭から作中作である2.5次元舞台『東京ブレイド』の実在感を高める、このスーパーロングショット


これ単に観客(あるいはカメラ)の視点というだけではなく、こうしたホールの楽屋には必ずある「舞台を一望できるモニター」の視点という要素も内包しているんですよね。

つまり観客だけではなく、演者側の主観とも解釈する事が出来る。

この引き画角は、舞台に関わるあらゆる人間の主観を内包する非常に優れた導入レイアウトとして機能しているんです。最高!!


「舞台演劇」というシチュエーションに引き込む為には最も効果的かつオーソドックスな演出だとは思うんですよ。ただ、キャラクターがこ~~んなに豆粒みたいなサイズにしか映りませんからね!

スクリーンで補助しているとはいえ、
ほとんどキャラ芝居は見えないサイズになっていますね


このロングを長めに採用するのは「キャラもの」「芝居もの」でもある本作において、選択するのに相応の勇気が必要だと思うんですが、流石にバシッと気合い入れて決めてきます。カッコよすぎですね。


そして言わずもがな本エピソードで最も特筆すべき見所は、やはりメルト君の奮起→覚醒の流れでしょう。

先ほどのロングショットで集中させてから、ワイヤーアクションを大胆に使った動的なアクション&カメラワークでグッと惹きつけた後、ついにこの圧倒的なパートがやってきます。

『ニューロマンサー』みたい?

明らかな才気を感じさせるビビッドでサイケデリックな世界の表現!
パートによっては湯浅政明や『哀しみのベラドンナ』からの影響も感じるほど、イマジネーションに満ちています。

そこから一転して挫折と無への回帰……その先に待ち受ける成長へと至る心情と人生の流れを、丁寧かつ鮮やかに描き出す圧巻のイメージアニメーション!


色使いの素晴らしさもさることながら、この息を飲まされる静かな魅力にあふれたメタモルフォーゼのアニメーションがカッコよすぎるぜー!!

なんなら『エヴァンゲリオン』感も?


『【推しの子】』において頻用されるこのゴワゴワとした不気味な質感を強調する手付きに加えて、ショートアニメーションの匠・猫富ちゃおが得意とするメタモルフォーゼや早いカット割りも炸裂!

元々とても好きな演出をされる方だな~と感じていたのですが、本作で完全にファンになりましたね。

演出家・猫富ちゃおの代表作となるであろう、アニメーションらしい快楽が洪水のように押し寄せる映像。未見の方はぜひ体感して欲しいですね、本当に凄いんだから!!




時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん


1話こそ順調にお気軽(えっち)ラブコメとして仕上がっていたものの、本筋の選挙編に入っていくほどに退屈さが高まっていったアニメ。

ヒロインのアーリャさん、いじらしくて萌えなのは分かるんですケド。
案の定すけべ描写からメタギャグ、シリアスまでこなす妹枠・周防有希ちゃんにガッツリ人気を取られてましたね。

数多のライバルと主人公がバチバチ謀略を巡らせる中で、ロシア語でデレる以外何もしていないも同然なのが本当にヤバいと思う。物語的に。

晴れやかな顔してますけれど


主人公くんの有能っぷりを(周りの生徒を筋金入りのバカにするという野蛮な荒技によって)強調したいのは分かるんですよ。

でも肝心のメインヒロインが魅力ゼロな虚飾の権力者となっていくのは本作の致命的なウィークポイントでしょう。


こんくらい粗雑なシリアスなら、もっとラブコメ挟まないと保ちませんよ!1話のエロコメ感をもっと強めに押し出して欲しかった。その片鱗があった「Wヒロイン催眠回」こと第9話は最高だったんだからさぁ!!


なんて言いつつ、OP映像は素晴らしかったですね。先ほど『【推しの子】』2期の感想でも触れた猫富ちゃおさんの美技が炸裂!

圧倒されるカットスピードの早さで必殺級の萌えカットを乱れ打つイントロから、まず素晴らしすぎる。

そこから生徒会室絡みのダレ場で調子を整え、そこから紅茶へとダイブする形で圧巻のイメージアニメーションパートへと入っていく構成の巧みさには唸りました。


イメージアニメーションを最大の武器にしている短尺の映像……という点では過去の猫富さん仕事とジャンルとして被るところも多い。

ですが、”既視感”みたいなものを全く感じさせないのが素晴らしいです。

似た手法を用いつつも見せ方を都度変えてクオリティを上げていく……こんなことされちゃうと脱帽です。猫富さんは紛れもない「作家」!

『式守さん』OPとかも、ポップかつ気迫も携えた素晴らしい映像でしたからね。猫富ちゃおさんに最大限のリスペクトを!!


リサイクルショップに100円で投げ売りされている「バチアツJ-POP MIX!!!」的な謎CDを想起させるセンス皆無な選曲基準で常に視聴者を惑わせてくれたEDの酷さとは好対照で、素敵なOPでした……。

こんなのさ、誰かが止めなきゃダメだよ




物語シリーズ オフ&モンスターシーズン


シャフトが誇る言わずと知れた傑作シリーズの最新作!本当に最高のアニメーション!!ただ周りに最強のシャフトオタクが多すぎるので、言及は控えめにします。僕が特別に語るべきことはないんで…


本作から監督が吉澤翠さん(シャフト初の女性監督!)となり、個人的には過去最高クラスに視聴前のハードルが上がっていました。

何しろ吉澤さんは『3月のライオン』28話、『続・終物語』1話、『幻日のヨハネ』7話、『五等分の花嫁』2話などなど……


シャフト内外で大傑作を数多く手がけていますから。ハードルも上がろうというものです。ただそんな高いハードル、もう楽々と越えていきましたね。『化物語』『傷物語』を除けばシリーズで一番好きかも!


1話からして圧倒的に多彩でポップな演出の数々!尾石ライクな実写演出に目が行きがちですが、色彩やチャプターカードからは『憑物語』の板村さんっぽさも感じました。

綿密に計算されながらも、そんなところに思いを至らせないほど純粋に「楽しい」演出の雨あられ!!もう夢中になってしまいます。

「単なる画面分割で満足するわけないだろ……私はここまでいくぜ!!」と言わんばかりに漫画原稿風の分割があったりと、もう大変ですよ。余りにも完成度が高すぎる!


他にも新房昭之監督が『ひだまり×SP』以来(要検証?)となる絵コンテを手がけたりと、嬉しい話題には事欠きませんでしたね。間違いなく今年ベスト級のアニメーションでした。

素直に『なでこドロー』編で親共々泣いちゃいましたし。今更言う人も少ないかもですけど、やっぱりシナリオも抜群に面白いですよね…
今期ぶっちぎりで画面の見所&素直な面白さを両取りしていた傑作!


まぁ僕レベルのファンからはこんな感じでしょうか……煮詰まったシャフトファン達による魂の感想記事が待たれる所です。




逃げ上手の若君


Cloverworksにて素晴らしい作品を世に送り出し続けてきたプロデューサー・梅原翔太氏のラインが制作した注目作!なんなら今期の作品の中では、最も注目を集めたと言っても過言ではなかったタイトルですね。

始まってみれば原作漫画に滲む露悪性を優れたアニメーションが必死に飾り立てる、なんとも物哀しい作品に仕上がっていたと思います。


全体的にコテコテなノリの少年漫画ライクなギャグは総じてツンツルテンにスベっていました。シリアスさ滲む戦乱の世を描く本筋に対して、余りにもクソしょーもないコメディパートだけ浮きすぎです。

王道ジャンプ漫画のギャグって1種類しかない?


キャラ描写や展開の節々にも悪趣味が過ぎて驚いてしまう要素がちょくちょくあり、終始引き気味で観ていた。


OP・ED曲も考えられる限り最悪のセンスをしててゾッとしました。
歌詞からメロディまで全てがお手本のようにダサすぎる。俺が小2だったら好きになってたかも。ちなみに映像は割とアリです。

「一所懸命/地元レペゼン」のように最早怒りすら感じるほど軽薄な歌詞もありましたけど、こんな曲に鎌倉(神奈川)レペゼンされたら流石にHIPHOPヘッズが泣くって。

神奈川と言えば日本における「レペゼン」思想を定義付けたと言っても良い『area area』をリリースしたOZROSAURUSの地元ですよ。
伝統ある045スタイル息づく神奈川を下地に、よくもまぁこんな軽薄なリリックが書けたもんだなぁ!!ぼっちぼろまる!!!!帰れ!!!!!


K DUB SHINEじゃないけど「もう一度ジェームズ・ブラウンから聴け」という気持ちにならざるを得ない最悪のタイアップでした。


閑話休題。

さて肝心の画面についてなんですが、言うまでもなく絶対的にクオリティは高いです。作画も素晴らしすぎるくらいですし、中島和子さんによるパキッとした色合いが光る色彩設計は本当にカッコいい!

中島さんは傑作『ワンエグ』も担当しています!


『ぼざろ』で鳴らした演出レパートリーの多彩さが今回も炸裂していましたからね、演出面も悪くない……と思うはずだったんですが。

物語面の合わなさ(&震え上がる程つまらないギャグ)に引っ張られてしまったのか、この手数の多さも何だか器用貧乏に見えてしまったんですよねぇ……

「突飛な演出でもしなきゃあ、この駄作の間(ま)は持たせられない!」とでも言わんばかりに歪な形で情報量が多くなる画面には、なんとも言えない痛々しさがありました。


ポップ寄りな作品ならば、手数の多さに比例して映像は面白くなるものだと思っていましたが、むしろそれが空回りしてしまうなんて。

しかもそれを、大好きな梅原P班のアニメで観ることになるとは!
演出によって如何様にも物語をフォロー出来るのが映像作品の面白みだと思っていたが、ここまで物語が好みじゃないと厳しかった。




2.5次元の誘惑


主人公から読み取る事が出来るオタクのイメージが余りにも古くさく、形骸化したパターンを引きずっていてガッカリ。

主人公が1話で「美少女エロが女に分かるかよ!」的なモロにやばい発言をするんですよ。まぁ陰気クンがそう思っちゃうのも無理はないけれども。

ただそれを聞いて、僕ぁもうブチギレちゃいましたね。この小童が!!!!!!!!!!!!!!!!

そしてあっさりコスプレに懐柔される弱さよ…


安易な旧来の異性愛/性愛を前提にしたテメーの価値観を容易に越えていくのが、二次元の美少女/イケメンキャラクター達だろうがと。

それだけ美少女を愛しているのに、なんで自ら美少女の価値を貶めるような価値付けをしてしまうのか理解に苦しむ。キミ、修行が足らんよ。




義妹生活


失礼さをはらんだ発言かもしれませんが、今期のアニメの中で最も「ダークホース」と呼ぶにふさわしい作品でしょう!

賛否もありましたが、演出大好きオタクとしては本当に激推ししたいタイトルです。とにかく演出が、凄い!!!


言葉を選ばずに評すると、正気じゃないです。ストーリーをさらに高みへ羽ばたかせる為に、やりすぎなくらいに「演出」している。

FIX(固定画角)長回しを基調に、緻密に構成されたライティングで構成された会話シーンはまさに「異様な完成度」の一語に尽きます。

こちらは3話。
こちらは12話。似た構図をリフレインしつつ、
感情に合わせてライティングを変えるなど精緻な演出。


手足のちょっとした1動作、明らかに偏った光源の配置、モチーフにやり過ぎ一歩手前レベルまで比喩を詰め込む手付き、全てが最高!!


しかしこうしたシーンの印象ばかりを頼りに「静謐なアニメ」という論旨で語ろうとすると、目を引くフィルム調の演出・ビビッドなチャプターカードがこれを阻むんですよね。

フィルムで撮影された映画に見られる特徴である「パンチマーク」を本来のフィルムでは有り得ない位置にあしらいまくる大胆不敵な手付きなんか、凄すぎる!


正直、自分程度の人間では本作の演出をガッツリ語ることは不可能です。
映像への心得が足りなすぎるし、本気で語るためには原作者の三河先生が毎週してたツイートくらいヤバめの長文になるだろうから。


でも、良いんです。「意味」が汲み取れなくても良いんですよ。

何故ならシンプルな話、その手法から生み出される根源的なルックそのものに得がたい美しさがあるから!

そして、たとえ自分の未熟さ故に優れた演出の連鎖から意味を見いだせなくても、確かな感動がそこにあるから良いんです。


「意味を理解しないと良さが分からない」みたいな意見は決して正しくないですからね。これも創作物の”意味”なんて不確かなものが存在すると仮定した上での話ですけど!

深く映像を理解することで演出に込められた意味なり、技術的な巧みさを観た時、より感動できる……というのは事実でしょう。僕自身、アニメの秘密がもっと知りたいと思って日々アニメーションと向き合っています。


しかし同時に、何もかも分からないながらに遭遇した強固な演出にぼーん!と喰らうこともあるはずです。

『義妹生活』にはその衝撃がある。

それだけ伝えられれば、もう僕が語ることは無いかもしれない。


ちなみに言わずもがな、ストーリー面も凄く良かった!

人間と人間の真摯な距離感の摺り合わせを、何気ないながらに切実な感情の探り合いが生む様々な綻びを、余すことなく捉えたい……そんな思いが伝わってくるような台詞のやり取りには痺れます。


正直言って1話を見た段階だと「ちょっと掛け合いが理屈っぽすぎるんじゃないの?」と思わされたりもしたんだけど、それもエピソードを重ねる毎に馴染んでいきました。


今になって考えると、こういう時期は自分にもあったよなぁ……と。

自分に関するあらゆる事柄を理屈っぽく言葉にしないと、何かに縛られて動けないような感覚ですよ。今もその延長にあるようなものですけど。

語り出すと意外にも止まらないな~と自分でも驚いていますが、ともかく良いアニメだった。こういうアニメと不意に出会える幸いがあるから、リアタイ視聴からは足洗えないんだよなぁ……と思います。




真夜中ぱんチ・菜なれ花なれ・天穂のサクナヒメ


僕はPA works作品の大半が苦手という業を背負っているんですよ。画作りやセリフ回しなどが結構苦手でして。なので正直この3本ともまぁ普通……という感じでした。ファンの方にゃ申し訳ない。

けど某アニメ評論家と違って「気に入らない作品のファン全体を誹謗中傷」とかはしないので許してくださいね。あの人は僕もブロックしてます。


この中で一番観ていたのは…まぁ『真夜中ぱんチ』ですね。

まず長谷川育美さんの低音が利いた演技が素晴らしかった!まさに掛け合いの面白さが光っていた「会話アニメ」作品だと思います。

あと映像面で言うと、キャラに緑っぽい影色を入れる手法が流行っていることを改めて意識させられる作品でもありました!

さらに言うなら4話の出合さん絵コンテ回とか、流石にキレキレで良かったですね……




小市民シリーズ


今期のスーパー演出アニメ(&梅田修一朗さん大活躍アニメ)の一角!!

神戸守監督による、シネスコのレイアウトと「偏執」とまで評すことが出来るであろう抑制的な画面作りの方針が素晴らしかった。


しかし率直な感想として、まず「楽しめなかった」とだけ。

原作ファンの方が楽しんでいる一方で、アニメだけ観ている勢の自分は終始ずーーっと置いてかれてしまっていました。


確かに小山内さんと小鳩くんがケーキを巡って大げさに頭脳戦を繰り広げる第6話「シャルロットだけはぼくのもの」は素晴らしかったです。


大仰に推理を繰り広げるんだけども、実際にその頭脳戦が奪い合っているモノは美味しいケーキ……というギャップが素晴らしい。

この抜け感にはやはり『氷菓』に通ずる絶妙な雰囲気があって、かなり痺れました!

しかし全体を通してみると、余りにも推進力に欠けていました。演出も、本作に合っていたのか?という点に疑問符が残ります。


まず、全ての中心である事件や推理が大雑把すぎる。
ストーリーを引っ張る事件はスケールだけデカいんですけど、そこに至る推理の納得感がゼロと言って良いかもしれません。

曖昧な確率論を持ち出して「こっちの方が可能性高いから犯人っぽくない?」と推理されたとて、視聴者は納得できませんよ。

警察の捜査じゃないんですから、僕たちはあくまで探偵役に「論理の魔法」を求めているんです。確率とかとは違う、論理の夢を見る余地がある部分。伝わるかな?


キャラクターのモノローグが殆どない上に、「小市民」なんていう現実じゃまず用いない用語を会話で頻用する感じも好きじゃありません。

そういうキーワードを繰り返すのって、やはりあくまで小説のマナーな気がするんですよ。アニメにおけるマナーとは作法が異なる。

それを映画・アニメでやられてしまうとリアリティの基準が下がってしまって、割と冷めるんですよね……


『おねがい☆ツインズ』というアニメではメインキャラが家族のことを一々「肉親」と呼ぶんですけど、それに近い気持ち悪さがあります。

言葉遣い・行動理念の一つをとっても余りにも作り物の人物像すぎて、感情移入する隙間がない。


「作り物」という話題で言うと、細かい展開も事件を起こすために世界から用意されているかの如き不自然さでした。

1話からしてそうなんですよ。
小山内さんがあんなに楽しみにしていたケーキを、外に駐めた自転車のかごに野晒しで置きっぱなしにするなんて、ありえる!?!?

自転車を盗まれてケーキをぐちゃぐちゃにされた……という事件を起こすためだけに、スイーツ好きな女の子の感情が無視されているようにしか見えない。展開を作るのが雑すぎる。


他にも挙げだしたらキリがないんですよ。とにかく本作は何に付けても納得感が薄くて、映像用シナリオへの翻案を失敗しているとしか思えません。

仲丸十希子さん(cv.宮本侑芽)、可愛すぎるぜ!
こちらはキャスティングに成功しているとしか思えません!


こうした不満は回を増す毎にひたすら積もるばかり!ただ映像がなまじっか美しいばかりに、いつの間にか「解決した感」を作品が出してくるんですよ。


最終回で小鳩くん&小山内さんが「傲慢なだけの高校生が残る」なんて台詞を吐いていましたけど、僕からしたらそんなのとっくのとうに知ってることでしたから。

そんなこと言われずとも、君たち(と作品)の語りは最初から徹頭徹尾、「傲慢」そのものですよ。とりあえず2期に期待。




SHY(2期)


まさかの2期!筋金入りの深夜アニメ好きは全員観ていましたけど、逆にそれ以外のオタクにはビックリするくらい知られていない印象だったので嬉しい誤算でしたね。

ものすごく美少女の描き方が上手いことで知られる本作。
ですがオタクが急に興奮なんてしてしまったら見苦しいですから、美少女の話は敢えて抑えめにしたいと思います。

もし『SHY』の感想を書きながら美少女に興奮してしまったら、即座にこの記事上で腹を切ってお詫びしますね。まぁそんなこと起きる訳がないんですけど!


では早速、演出面の話を。

本作の監督である安藤正臣が得意とするカットイン処理が冴え渡りつつ、ポップにまとめる手腕が光っていた印象です。

14話では画面の色調でシリアスな雰囲気を作りつつ、その空間自体をフリにしてギャグを叩き込む演出がよかった!

フレームづかい、文字づかい、色づかい……
全てがポップかつクール!

しかし古賀葵って本当、おバカな娘やらせたら敵無しですね……


15話でも敵の親玉が持つ骨だけの不気味な雨傘と東京タワーをマッチカットして彼らの陰謀を示唆するなど、明快ながら非常におしゃれな演出が目白押し!

東京を襲ったテロ事件の最中であろうと、息抜きがてらに萌え萌えな展開を差し込んでくれるのも最高ですね。

押し引きがここまで上手いと、決して絶品とは言えないシリアスパートの面白さがぐんぐん底上げされているのを感じます。


そして「○○なのかい?」という口調で片っ端から夜更かしオタクを落としにかかった傾国の美少女・小石川惟子さんの破壊力は相変わらずながら、新キャラとしてはんなり病弱ガールの天王寺曖さんが登場!!!!!

黒髪おねーさんあわわわわわわわわ


どことなく浮世離れしたその喋り方、理想のお嫁さんNo.1の座を独走せざるを得ない程の気遣い力、もうたまんないっっっっっスね。

小岩井ことりさんの艶っぽいヴォイス、素晴らしすぎ。

「テルさんも一緒に入る?……♡」とお風呂に呼び寄せるシーンとか、本当に素晴らしすぎて涙ぐみましたよ。

こういう深夜アニメがたまらなく観たくなる時って、確かにあるんだ。



うわーーー天王寺曖さんに突然一人暮らしのワンルーム(西武線の端っこ駅から徒歩6分・家賃6万円・16平米・バストイレ別)に部屋着のまま押しかけられて困惑しつつも、高まる鼓動とかすかな夜への期待を隠すために素っ気ない態度で部屋に迎え入れたすぎるんだけども!!!!!!!!!!!

曖さん………………

背中側にあるシャワールームから聞こえる微かな衣擦れの音にドギマギしながら、曖さんの事だしこんなこともあろうかと準備していた客人用の歯ブラシとか準備していたら、突然バタ……という音と共にシャワーの音が完全に扉越しではない音量になったのに気づいて、生唾を飲み込みたすぎるんだけれども!!!!!!!!!!!!!!

曖さん…………………………!

背中越しに感じる風呂場から流れ込む湯気に”扉が開いた”ことを確信しつつも心臓の鼓動を気取らせないようにそれとなく「どうしたの?」って聞いた俺に向かって、「なかのくんも一緒に入るか♡」って、いじわるな口調で囁いて欲しすぎるんだけれども!!!!!!!!!


期待を込めて「えっ……」とうわずる声で思わず振り返ったら、そこには手際よくタオルを巻いて肝心なところを全部隠した曖さんがくす……ってな感じで笑っていて、表情からガッカリ感を隠しきれない俺に「期待したんか?かわいい子やなぁ♡」と愛あるデコピンで一線を引いて欲しすぎるんだけども!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


う、うわーーーーーー=====------=====-------====--曖さーーん!!!!!!===---==-🗡️グッッッッッッッッッ----=-----=-!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




僕の妻は感情がない


今期で地味~~に好きだった枠&クールに1作はあってほしい枠。
圧倒的なクオリティの映像を持つというわけではないのですが、なんとも見心地の良いアニメでした。

本作の大まかなあらすじは以下の通り。

一人暮らし3年目の社畜サラリーマン「タクマ」は、家事ロボットの「ミーナ」を購入する。タクマは不器用で恋愛経験が少なく、ミーナも料理は出来るが人間についてはまだまだ勉強中。
人間とロボットという一見ちぐはぐな夫婦の二人は、一緒に過ごすことで互いを知っていく。そして、感情がないはずのミーナにもやがて――。

『僕の妻は感情がない』公式サイトより


まぁ平たく言えば、人間とロボットの異種間交流ドラマが魅力となる作品ですね。スーパーミーナ(cv.芹沢優)可愛すぎ!!

まず前提から話すんですが、僕はこういう「ロボットに感情はあるのか!?」みたいなSFに全く興味が無いんですよ。

そもそもテクノロジーに興味を持ったことが人生で一度もない。

世界観設定が面白さの肝となる作品は大体Nippsばりに知ったフリして観ています。


なので本作についても、割となぁなぁで観ていました。青山由能さん演じるオタクキャラは他と馬力が違うなぁ……とか思いつつね。
バレエの『コッペリア』みたいな、タクマさんがロボットに恋してしまうおかしみ……みたいなところが見所かなぁと。


ですが観進めていく内、本作が提示するロボットとの向き合い方の真摯さ(あるいはフェアネス?)の魅力に段々とハマっていったんですよね。

この作品はタイトル通り、ロボットに感情が”ある”という立場を取っていないんですよ。恐らく。

あくまでプログラムの起こした様々なイレギュラーによって生まれた行動が、周りの人間からすると感情があるように見えるだけ。


家事ロボットのミーナちゃんはどこまでいっても家事ロボットなんです。

ともすれば下品エロス


ご主人様が喜ぶからと様々な奉仕をしてくれるけれども、それは愛情ゆえではなくプログラミングゆえ。

ミーナちゃんに感情は、やっぱり無いんです。


極端に言えば「人の言葉を喋るワンちゃん」みたいな動画と構造は同じなんですよね。

アレって明らかに飼い主が鳴き声を恣意的に解釈して、犬が発している音をねじ曲げて受け取っているじゃないですか。「ワンワン!!!」「あらポチがママって言ってくれたわ~~♡」みたいなやつ。

残酷ですけど、タクマさんとミーナちゃんの関係も俯瞰してしまえば、それらと大して違いはないぞと思うんです。


タクマさんが持つ「ミーナちゃんが感情を持っていたら嬉しいな」という感情が、彼女のランダムな行動をまるで人間かのように感じさせる。

ハートフルな生活描写とコミカルなキャラクターで全体を包みながらも、本作はその事実から逃げることはありません。

でも観進めていくと、「これこそが良いな」と思わされるんです。
つまり、感情が徹頭徹尾”ない”のが良いなと。


人間×ロボットの異種間交流モノによくある「ロボットに感情はあるのか?」という問いって、なんかしっくりこないんですよね。それってあまりにも人間中心・感情中心主義なんじゃないかと思うんですよ。

自分も無意識に「感情があるロボットこそが先進的」というのを価値観の前提条件として、コレ系の作品を観ていたんですが、そんなことないよなと。


ロボットに感情が有ることを求める価値観って、結局のところロボットを人間の下位互換/代替品としてしか扱ってないことの証でもあるんじゃないかと思うんです。

その前提に則ってストーリーを展開している限り、結局のところロボットと対等な立場で真摯に向き合う事は出来ない。

ならばいっそ最初から「感情はない」と割り切ってしまえば、これまでとは違う形でロボットと向き合うことが出来るのではないか……?

本作の面白さは、この新鮮かつ柔軟な切り口にあると感じました。


とはいえTLで見た「奴隷に「私から奴隷でいる自由を奪わないで」と言わせる物語」という短評には、口をつぐまざるを得なかったかもしれません。

散々に僕は”公平さ”の話をしていたけれど、結局は美少女型アンドロイドを使役するマスターの成人男性側から語られる話に過ぎないのかも。


でも本作は、浅学な自分に「権力勾配のある人間関係」「人間とロボットの交流」についてここまで考えさせた。

こうした思考を促す力を持ったフィクションに対して、まずは一定の評価をしたいなぁと考えてしまうのは「逃げ」なんですかね。

うーん………どうなんだろう。




おわりに


アニメの感想を書くという行為は、あんがい面白い。

尊敬している人間の筆致や意見からの影響がもろに出るし、自分の「作品観」「倫理観」「美少女観」みたいなものが頻繁に試される。

こうして「2024夏クール」という共通点を持つのみのアニメ作品を一気に語っていくというフォーマットは、テーマ性が雑多である故にそういったオタクの「魂」みたいな部分がよく見えるなと改めて感じた。


自分は全然インターネットで記事越しに慣れ合いたいと思っているし、オタクが書いたアニメ感想はいくらでも読みたい。ちょうどいい距離感を保ちながらでも「魂」に接続できるのが、ネットの良いとこでしょ?

だからこれを読んだオタクが次のクールとか…或いは好きな作品についてとか、何かしらの記事を書いてくれたら、これ以上に嬉しいことはない。



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