平瀬ユウト
2024年7月に香港とマカオに行った際の出来事をまとめたマガジンです。 いくつかの写真と短歌がアクセントとなり旅情をかき立てる作品です。
アルバイトとして編集の世界に足を踏み入れてしまった社会に馴染めない子と、使えない人間を絶対に許さない人達を描くヒューマンドラマ。
これを読めばあなたも台湾に行きたくなる! 歌人である作者が台湾で見聞きしたことを綴った旅行記です。台北、台中、台南と台湾を巡る1週間で得た愛と情熱の記録をとくとご覧あれ。
2022年に書いたエッセイです
事実を基にしたエッセイをもとに「飛ぶ」ことを考察していきます。 ストレスフルな現代人に向けた斬新な啓発指南書です。
香港は死んだのか 香港やマカオほど不思議な場所はないと思っていた。植民地支配のもとで自由と経済発展を極めた時代が終わったあとに、社会主義体制の国家に組み込まれるも特殊な地位を与えられる___。 そんなStrangeな空間に僕は興味を持ち、アイデンティティを自ら問い続けねばならない点に、ある種の共感を抱かずにはいられなかったのだと思う。 ニュースで見聞きする香港はいつだって恐ろしいものだった。 産経新聞は2020年、一面トップに「香港は死んだ」というセンセーショナルな見出
さらば重慶大厦 重慶大厦をチェックアウトする日がやってきた。 4泊は長いようであっという間で、最初は不安でしょうがなかったものの最後には自宅並みに安心感を得ていたのだから、慣れって恐ろしい。 思えば色々なことがあった。 日中、美術館等を歩き回って疲れたので部屋に戻って休憩していると突然ドアノブがガチャガチと鳴るのだ。本来であれば開けない方が良いのだろうが、自宅並みにくつろぐ僕の脳内にそこまでの警戒心はなかった。 ドキドキしながらもドアを開けてみると、そこにはチェックイン
全てはフェリーのために 香港と同じく中国の特別行政区であるマカオは香港からフェリーで1時間ほどだ。当時、観光客に対し「マカオ行きフェリー片道無料キャンペーン」なるものがあったので、マカオに行かない選択肢は僕にはなかった。 朝、雨が降り頻る中、香港のインドとも言える重慶大厦を出てフェリー乗り場へ向かう。雨の香港から晴天のマカオへ行くなんて我ながら最高の段取りだとほくそ笑みながら、これから職場へ向かうであろう人々の間を縫って浮かれていた。 フェリー乗り場に到着しチケットを買
香港名物 香港を歩いていると冷たい水がよく頭に落ちてくる。 空は快晴だが路上には一直線に連なった水溜まりさえあることに気付き、頭上を見上げると、ビルの壁面に取り付けられた大量の室外機からとめどなく水滴が垂れ落ちてくるではないか。それも尋常ではない量で。 これを香港の夏の風物詩と言わずしてなんと言おうか。 つむじを直撃した際、何とも不愉快な感覚に陥るがこれも香港ならではの味として楽しんでいただきたい。 人々が折り重なって生きていて 夏の冷たい雨が気持ちいい M+ 〜GU
目に映るすべてのものはメッセージ 重慶大厦1泊目は、疲れていたのもあり失神の如くよく眠れた。 気持ちよく起きた朝、ふと視界に赤いものが入ったので確認すると何やら血文字のようなものが備え付けの棚の側面に記されているではないか。 普通にゾッとした。アルファベットの大文字で「NAIA(N) KG」と記された文字列は人名だろうか。 ホテルというものは不思議なもので、僕と同じようにこの部屋を使うバックパッカーらが時間軸に沿って何百人も並んでいる。決して交じることのない我々だが、皆同
プロローグ 僕が旅行に出かけたくなる瞬間は2パターンある。 楽しい気分に浮かれて溢れる好奇心を、どこか見知らぬ土地に求めるとき。 息苦しさを感じて遠い所に逃避行を図りたくなるとき。 そして、今回の香港旅行は後者だった。 数ヶ月前、とある会社でバイトをしていた僕は心底日本から脱出したいと毎日考えていた。「君ちょっとおかしいよ」と何度も上司に言われていたし、彼らの言う“おかしいこと”を週3回のペースで惜しみなく披露していた。 すると、2ヶ月ほどであっけなくクビを宣告され、最
社会と会社はどうしてこうも似ているのだろうと思うことがある。 漢字をひっくり返しただけで成立するこれらの熟語は、互いにほぼ同義なのだ。 ほとんどの人にとって「社会に出ること」は即ち「会社に入ること」だし、社会の一員として信頼されるには、会社の一員になることが最も手取り早い。 僕はこの社会(会社)に馴染むべくある程度の努力はしてきたつもりだったし、周囲の人々と同様に生きてゆける一抹の希望を抱えていた。 しかし、その希望は痛快とも言えるほどに打ち砕かれ続けてきた。 これは、
自宅から徒歩圏内にあるファミ中(ファミレス然とした中華料理屋)へ面接を受けに行った。 開店前の中華料理店は厨房からの物音がするだけで妙な静けさをたたえている。ぎこちなく店内に侵入する僕を「你好」と店長が話しかけて面接が始まったのだが、彼女は僕の素性をすでに知っているようだった。 そう、僕はその1週間前にファミ中の中国人スタッフ(ファミニキ)とLINEを交換し、ほぼ毎日チャットに勤しんでいたので彼女の耳にも僕の情報が入っていたのだ。あなたの中国語はマジですごいなどと煽てられ
イケてるガチ中華、通称(イケ中)の面接のために1時間かけて新宿までやってきた僕だったが、イケ中のあまりの本場感に圧倒されていた。 ビルのワンフロア丸ごと利用したスケール感と、行き交う客・店員共に中国人であることが期待と不安を増幅させ、さながら身ひとつで中国にやってきたようである。我がリスニング力も虚しく、店員間での会話で唯一聞き取れたのが「面试!(面接だって!)」だった。 高級感のある個室に通され責任者を待つよう言われたのだが10分経ってもそれらしき人物はやって来ないので
現地の味に忠実に遵守した中華料理を提供する店をガチ中華という。 店のオーナーをはじめ従業員が中国人で、客も同様に中国人が多いため中国語が行き交う空間を有するケースが多い。 中国語をガチで勉強している僕は、そんなガチ中華の店でバイトをしたいなァと数ヶ月前から思い続けていた。 友人とガチ中華に行く際は必ず店員さんにバイトの募集の有無を尋ね、ネットにあるガチ中華求人にセコセコとメールを送り続けてもいた。 しかし、ガチ中華のほとんどは人手が足りているようで、いきなり「働きたいです
明日5/19(日)の文学フリマに台湾旅行記、『好好台灣旅游』と 新刊『東京新歌枕』と『失恋(ショート)ソング』を出展します! ブースは東京流通センター第二展示場2階 💥しー15💥です! それぞれ趣向は違いますが、いずれの本も短歌が散りばめられています。 東京新歌枕はSNSの詩的な投稿と、それらをインスピレーションにして生まれた短歌によって東京を語るという新感覚都市論です🗼 失恋(ショート)ソングは失恋をテーマに、短歌とシルクスクリーンのビジュアルをまとめた作品です💔
人は誰しもコンプレックスの1つや2つを抱えているが、僕の場合は誇張なしで70個ほどある。そのせいで基本的に自分に自信が持てないのだが、普段からコンプレックスに対して真正面から悩んで生きているわけではないので、自信がないながらも朗らかに生きている。(happy) そう。コンプレックスというのは、自覚する瞬間が問題なのであって、自覚させられる場面に晒されるまで、人は大抵コンプレックスのことなど忘れて平穏に過ごすことができる。 たとえば顔面の造形にコンプレックスを抱えている人も
このたび、書き溜めていた台灣旅行記や短歌、撮り溜めた写真などを詰め込んだZINE,『好好台灣旅遊』が販売されます!(都内2ヶ所で!) 1ヶ所目は、中目黒の書店『SUT』様にZINEを置かせていただきます。(2/23~3/10) 2ヶ所目は、荒川区の書店『OGU MAG』様で行われるZINE展『無意味な運命』で置かせていただきます。(3/7~3/10) 短歌のミニzineがおまけで付いて、 1冊 1,200円(税込)で販売しております。 既存の旅行記をリライトし、書き下
タブー(禁忌)はねじ伏せるためにあり台北最後の日、僕たちは九份へ向かった。台湾では電車内での飲食が固く禁じられている。日本でも電車内でムシャついてたら白い目をされるだろうが、台湾はそんなノリではない。車内でペットボトルの水でも飲もうものなら警察にしょっ引かれるレベルで禁じられているそうだ。(諸説あり) 少なくとも周囲の乗客から叱責されそうだと、ネットの情報を得て僕らは戦々恐々としていた。つい日本にいる時のノリで飲み物とか飲んでしまったらどうしよう、と…。 目を疑う光景に遭
謎まん(敗北味)台北に一泊し、翌朝僕たちは台湾おにぎりを食べた。飯糰(ファントァン)というローカルフードらしい。注文を受けるとおばさんがせっせと黒い米で揚げパンやたくあんなどを詰め込んでくれて、非常に美味しかった。 肉が食いたい衝動に引かれた僕達一行は隣の饅頭屋で肉まんを3人分注文しようとした。しかし、朝の忙しいタイミングが災いしたのか店員のオジ(と言っても40もいってないくらい)に僕の拙い中国語が全然通じずに苛立たれた。 周囲の客がオジと僕を交互に見返す。___怖い…。僕
好人好事ホステルを出て、朝ごはんにお粥でも食べに行こうと台南駅前を歩くと、おばさんがピンク色の紙を通行人に配っているのが見えた。よくわからないが旅の記念にと、1枚受け取って通り過ぎようとすると腕を掴まれる。 ハッと驚く僕に、おばさんは紙を指差した。そこには「聾唖」と「五十圓」の文字が。続けて彼女はポケットから、障害者手帳のようなものを取り出し僕の目の前に掲げた。 言葉を用いらず、全てを了解した僕は財布から50台湾ニュードルを探す。これで数千円だったら、ちょっとした事件だっ